May 25, 2008

【人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から】 目次

【人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から】のシリーズを読みに来てくれる人も多いようだ。
だが、どうしてもブログは古い情報が読みにくい。
そこで、このページにシリーズの目次をまとめて読みやすくすることにした。また、このページは常に最新情報に更新するつもりだ。
また、野田篤司ホームページで保存版を見ることもできる。

人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から
 第1章『イントロ 〜言い訳〜』
 第2章『宇宙へ飛び出す』なんて『レトロ・フューチャー』じゃないの? 
 第3章『宇宙に行って、暮らせるの? 幸せなの?』
 第4章『小惑星開拓計画』
 第5章『小惑星開拓宇宙船は 19世紀のテクノロジー』(1/2)
 第5章『小惑星開拓宇宙船は 19世紀のテクノロジー』(2/2)
 第6章『これから、やるべきこと』
 補足:放射線の情報

| | Comments (0) | TrackBack (0)

May 24, 2008

【人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から】 補足:放射線の情報

小惑星へ行くなど、惑星間航行のときに問題となる放射線について、情報を色々いただいたので、以下にまとめる。

Managing Lunar and Mars Mission Radiation Risks Part I: Cancer Risks, Uncertainties, and Shielding Effectiveness
 題名の通り、月と火星ミッションの放射線被曝の危険性の NASAの論文。
 NASA Technical Reports Serverでサーチすると他にも放射線被曝関係のレポートが沢山ある。

・日経サイエンス2006年6月号、P60-70 「星間旅行者を宇宙線から守る」
 一般的な記事なんで読みやすい。図書館でみつけるか、古本屋で見付けるか
 日経サイエンス バックナンバー 星間旅行者を宇宙線から守るでオンライン販売もある。

Managing Space Radiation Risk in the New Era of Space Exploration
 著者であるCommittee on the Evaluation of Radiation Shielding for Space Explorationがどういう団体なのか、実は知らない・・

要は、深宇宙の放射線の人体への影響は大きく、防ぐのは、重いシールド以外に有効な方法はないらしい。磁気や静電気による防御、薬を作るなどのアイデアもあるが、実現性と効果のほどは疑問だようで・・

小惑星探査に限らず、月・火星などの有人飛行には、放射線対策は必須だ。

| | Comments (5) | TrackBack (0)

May 04, 2008

【人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から】 第5章『小惑星開拓宇宙船は 19世紀のテクノロジー』(2/2)

第5章『小惑星開拓宇宙船は 19世紀のテクノロジー』(2/2)
Asteroidb0502(前回からの続き)
さて、話を小惑星開拓宇宙船に戻すが、少なくとも推進システムに関しては、問題点は、ハイテクのエンジンを作ることでは無いことが判ったと思う。問題は、どうやって、小惑星で、ブリキや真鍮の板、銅パイプなどの材料と金鋏や半田ゴテと言った道具を手に入れるかである。これら、ホームセンターで簡単に手に入るような一般的な材料や道具を小惑星の資源から作るかが最大の問題になる。

同じことは、小惑星開拓宇宙船の船体自体にも言える。多くの人は、宇宙船は、飛行機やロケット・人工衛星などのハイテクの素材より、さらにハイテクな材料で作らなければならないと思っているだろう。実際、スペースシャトルなどは、ハイテク構造材料で作った船殻を更にハイテクな断熱材で覆っている。

一般的に構造材料の進歩は、より軽く、より強くと言う方向に向かった。金属材料に限定しても、青銅から鉄、アルミ、マグネシウム、チタンと言う流れは、そのまま、軽く強くの方向性を示す。石材、木材、樹脂、複合材などの非金属の材料も同様だ。
ハイテク構造材料は、特に軽く強くに特化したものだ。これはスペースシャトルなど、地上から打上げられる宇宙船は、打上げ重量に制約があり、その上、急加速・急減速と言った荷重に耐えなければならないためである。

だが、小惑星開拓用宇宙船は、ほとんど重力の無い宇宙でだけ使われる。つまり、打上げによる重量制約も無ければ、急加速・減速の荷重も無い。構造材料が受ける最大の荷重は、内部の気圧に耐えることだろう。
内部に人が乗る以上、内部は大気圧にする必要がある。この内部圧で、破裂しない強度を保つのが、船殻の最大の荷重条件にある。とは言え、スペースシャトルのように打上げ時の重量制約は無いから、強度の低い材料でも、分厚く覆って重量が増えても問題ない。

小惑星開拓用宇宙船が、ローテクの構造材料、例えば、青銅や石材で分厚い船殻を作り、重くなるのは、不様だと思われるかもしれない。

分厚くて重い船殻は無様どころか、放射線を防ぐのに必要不可欠だ。小惑星軌道に限らず、地球から離れた宇宙には放射線が多い。地球の表面から1000キロ以内の高度なら、地球の磁気に守られ、比較的放射線が少ない。国際宇宙ステーションは、この範囲にいるので、比較的薄いハイテク船殻でも、放射線の問題が少なく、半年とか一年の長期滞在が可能だ。

だが、それより高度が高くなると、バンアレン帯が広がり、その外側は、太陽や銀河を起源とする放射線に満ちている。静止軌道だろうが、月だろうが、火星だろうが、小惑星だろうが、放射線に満ちていることには変わりは無い。

この領域の放射線を防ぐには有効な手段は質量しか無い。船殻1平方メートルあたり10トンの質量があれば、地上と同じレベルまで放射線が減ると言われる。

仮に、小惑星開拓用宇宙船を軽いハイテク構造体で作っても、その船殻の外に分厚く重い放射線防御材で包まなければならない。そんな無駄な事をするくらいなら、最初からローテクの構造材料で分厚い船殻を作った方が速い。もちろん、大気圏再突入はあり得ないから、ハイテクな断熱材の必要も無い。

このように、推進システムも船殻もローテク素材で作れることが判った。それも鉄器どころか青銅や石材でも造れるかもしれないとすると、19世紀どころか紀元前の技術レベルだ。

とは言え、燃焼エネルギーが使えず、有効な熱源が太陽光だけとすると、青銅や鉄・銅を、どうやって作り出すかの問題は残る。

ところで、小惑星軌道の温度環境を考えると、船殻の構造材料で「氷」が有望だと思えて来た。太陽光を凹面鏡で集めて、小惑星の凍った水分を融かし、濾過した後、再び凍らすことで船殻を造る。
強度上の不安があれば、ガラス繊維で強化する。ガラス繊維は岩の酸化珪素を融かし、糸状に伸す事で作れる。このガラス繊維で、船殻の形状を編み物のように作る。その後、ガラス繊維の隙間に水を流し込み、凍結させれば良い。つまりFRP=ガラス繊維強化プラスチックならぬガラス繊維強化氷だ。
こうすれば、内部の大気圧にも十分耐えられるだろう。

でも、氷で船殻を作った場合、中は寒そうだ。断熱材は、外側ではなく、中側に必要だね。

小惑星開拓用宇宙船で、他に重要なのは生命維持と電子機器だ。
生命維持に関しては、小惑星には、人類の生存に必要な元素はあると思う(もっとも誰も確認して居ないから調査が必要だ)。
だが、元素があっても、使える状態にあるかどうかは別問題だ。結局、植物を育て、酸素などの呼吸可能な空気と食べ物を得る必要がある。太陽光は少ないとは言え、太陽から届くので、これを使うしかない。
人間が食べ呼吸した後排出された物質を植物を使い、再利用するサイクルを作れれば良いのだが、如何にも大変だ。小惑星上で宇宙船建造と並行して、航海の間に必要な空気と食料をまとめて作る方が良いかもしれない。

もう一つの電子機器は大問題で、こればかりは19世紀以前の技術レベルで作ることは困難だ。LSI等の半導体は小さく軽いものなので、地球で大量生産し、無人機で送った方が良いかもしれない。
もしくは、真空管だ。宇宙空間だから、回りは真空だ。剥き出しのプレート、グリッド、カソード、ヒーターがあれば、真空管になる。ヒーターは電気を使うことは無い。裏側から太陽光を集めて熱すれば良い。
いくら、真空管が作り易くても、真空管でコンピューターを作ると ENIAC 並に大規模になってしまう。やはり、真空管は繋ぎで、本命は半導体だろうか? 最初のうちは地球から送り、いずれは小惑星の一つに大規模なシリコンウエファ・半導体工場を作って、小惑星帯全体に配った方が良いかも。

小惑星開拓用宇宙船の電源だが、小惑星帯に半導体工場ができるまでは、太陽電池ではなく、スターリングエンジンを使った方が、作り易いだろう。

とまあ、小惑星開拓用宇宙船の設計は、ここまでだ。
「えぇっ、これだけ?」とか「面倒臭いから手を抜いたな」とか言われそうだ。
だが、事実は逆である。
私は、こう言った未来的な機械のコンセプト設計が大好きで、生業にもなっているくらいだ。この小惑星開拓用宇宙船の設計も、やり始めたら止らないほど楽しい。詳細を考え出したら、時間を忘れる事もある。

しかし、前回も述べたが、ここで無闇に詳細検討し、時間を潰すことは、むしろマイナスだと判断した。
だから、今回は、最低限のイメージを伝えるアウトラインだけで止めた。このアウトラインだけでも、夢を膨らませる事もできるだろう。

さて、「自己増殖型宇宙船」と大見え切ったが、蓋を開けて見れば、「手先の器用な人が乗って居れば、何とか手作りできるくらいの低い技術レベルの宇宙船」だと言うだけだ。
じゃあ、どの位、手先の器用な人が必要かと言うと、ジャニーズのTOKIOのメンバー位の人かなあって思って居る。
鉄腕DASH観てると、鉄瓶でもガラスでも磁器でも何でも原材料から手作りしてるよねえ。

実際、DASH村を観ながら思い付いたんだよねえ、この小惑星開拓用宇宙船のアイデア。

| | Comments (5) | TrackBack (0)

May 03, 2008

【人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から】 第5章『小惑星開拓宇宙船は 19世紀のテクノロジー』(1/2)

第5章『小惑星開拓宇宙船は 19世紀のテクノロジー』(1/2)
Asteroidb0501いよいよ、お待ちかねの宇宙船の設計だ。
小惑星の開拓するのだから、「惑星間航行宇宙船」だし、もちろん、人が乗るのだから「有人宇宙船」、その上「自己増殖」できるのだから、一体全体どうなっているのだろう・・・って、皆さん期待していらっしゃるかと思う。
だけど、悪いが、期待は裏切らせてもらう。
小惑星の開拓に使う宇宙船は、見るも無残な「ローテク宇宙船」なのである。

「自己増殖」と聞くと、SFならナノマシンとかの怪しげな名前のオーバーテクノロジーで「実現」するのが常套手段だ。だが、難しい技術を、より難しい技術で「実現」するのは、「実現」じゃなくて「誤魔化し」に過ぎない。
本当に実現させたいなら「難しい技術」を「簡単な技術の組合せ」にしないといけない。

そもそも、小惑星開拓宇宙船は有人で搭乗員が乗って居るのだから、無人で完全自動の自己増殖を考える必要は無い。搭乗員に新たな宇宙船を作ってもらえば良いのだ。

簡単に「搭乗員に新たな宇宙船を作ってもらう」と言っても、「『小惑星開拓宇宙船』って『惑星間宇宙船』だろう? そんなもの簡単に作れるのか!?」って思われるだろう。
それは、『惑星間宇宙船』のイメージがそう思わせて居るのではないか?

『惑星間宇宙船』と言うと、映画『2001年宇宙の旅』のディスカバリー号が有名だ。その他にも『惑星間』ではないが、宇宙船のイメージはスターウォーズの巨大宇宙戦艦だったり、スタートレックのエンタープライズだったり、、宇宙戦艦ヤマトだったり、とにかく、巨大でハイテクで真っ白で恐ろしく清潔だってイメージがある。

『ディスカバリー号みたいな惑星間宇宙船』を、搭乗員にだけで作る・・なんて、想像できないよね?
まあ、搭乗員だけじゃなくっても、地球の工業力を使ったって、ディスカバリー号自体を、どうやって作るか見当も付かないが・・・

だいたい、『惑星間宇宙船』と言えば、高性能な推進系、例えば液体酸素・液体水素のロケットエンジンだとかイオンエンジンとか、最低でも2液式のヒドラジン系推進系を使わなきゃならない。かのディスカバリー号に至っては、推進のエネルギー源は原子力だ。
今あげた推進系なりエネルギー源なりは、どれ一つ取っても、搭乗員が簡単に作れるような品物ではない。だから、どう考えても『惑星間宇宙船』を搭乗員がゼロから作るって事は在り得ない。

と、誰もが思う訳だ。
だが、本当にそうだろうか?
本当に『惑星間宇宙船』には「ハイテク」が必須なんだろうか?

ここで、私は大胆にも『小惑星開拓宇宙船は 19世紀のテクノロジー』で作ると言ったら、どうだろう。
少なくとも推進システムは『19世紀のテクノロジー』だと言ったら。

「本当に『19世紀のテクノロジー』で、惑星間航行用の宇宙船なんか作れるの???」と言われそうだ。

だが、逆に問いたい。
「じゃあ、小惑星開拓宇宙船を造るテクノロジーとは一体どの位のレベルなのか?」
言い換えれば「小惑星開拓宇宙船に必要なのは何?」

実は、前回のコンテンツで、軌道シミュレーションの話題を振ったのは、「小惑星帯に人類が広がるための小惑星開拓宇宙船に最低限必要な機能・性能を計算する」ためだったのだ。

前回のコンテンツで書いたように、詳細なシミュレーション検討が済んでないので概算だけだが、「ΔVが 200m/s で、地球重力の 1/100 程度の小惑星から離陸できる小惑星開拓宇宙船が、ホーマン軌道を使うとし航行期間を 4年とすると、480年で小惑星帯全体に人類は広がる」と計算できた。
もちろん、これは最悪の最大値で、これらの数値は、詳細なシミュレーション検討を行うと下方修正される可能性が高い。

とは言え、現時点で言える「小惑星開拓宇宙船に必要な機能・性能の要求諸元」は
・ΔVが最大 200m/s
・最大で地球重力の 1/100 程度の小惑星から離陸
・航行期間が最大4年
である。

この中で、「ΔVが最大 200m/s」と「最大で地球重力の 1/100 程度の小惑星から離陸」が、宇宙船の推進システムが必要な性能を決める。当然の事ながら、この二つの数値が大きい程、推進システムは高性能を要求される。では、先の「200m/s」と「1/100G」が大きいのか、小さいのかで言うと、宇宙の常識から言えば、とっても小さい値なのである。

普通、地球から宇宙に出るだけで、少なくとも 7900m/s のΔVが必要で、惑星間飛行するためには、目的地により異なるが、更に数千から数万m/s のΔVが必要になる。このように大きなΔVが必要な場合、搭載すべき燃料を減らすために、液体酸素・液体水素ロケットエンジンだとかイオンエンジンだとか原子力エネルギーと言った「噴射ガス速度の速い∝比推力の大きい」ハイテク推進が必要になる。

また、離床するときの推進力も、地球からなら、当然の地球の重力に逆らって上昇するだけの力が必要だし、火星からなら地球重力の半分、月からなら6分の1の重力に逆らう推進力が必要だ。

つまり、小惑星開拓に必要な推進システムは、地球から出発する場合に比べて、1桁から2桁小さいΔVに見合った「噴射ガス速度∝比推力」と、同じく1桁から2桁小さい重力に見合った「推力」しか必要ないのである。

これほど、小さい「噴射ガス速度∝比推力」と「推力」への要求だと、推進システムの性能を思い切り下げることができる。

ここで思い付いたのが、19世紀のテクノロジー「蒸気機関」である。

小惑星にある水分をボイラーで熱し、沸騰してできた蒸気の圧力を、噴射して推力を得る。これが、小惑星開拓ロケットの推進システム「蒸気ロケット」だ。
エネルギー源は太陽光だ。大きな凹面鏡で太陽光を集める。

蒸気ロケットのアイデアは、古く、19世紀からある。宇宙での応用もSF小説ラリー・ニーヴン著「インテグラル・ツリー」に出てくるし、その他にも色々な作品で使われて居る。ちょっと違うのは、真空中で使うことと熱源に太陽光を使うことくらいだ。

ざっと計算してみると、1気圧で摂氏200度まで蒸気を温めると、蒸気ロケットの性能は、噴射ガスの速度が 934m/sすなわち比推力 98.3s になる。空気中と違い、圧力を高くしても性能は余り向上せず、むしろ温度を高くした方が性能向上に寄与する傾向にある。まあ、無理に性能向上を目指すより、1気圧で摂氏200度で十分だろう。

この性能だと、ΔV=200m/s を出すのに必要な推薬量は、宇宙船の初期質量の 20パーセントだ。つまり、最初の段階で、宇宙船の総質量が100トンなら、20トンの推薬つまり水が必要だということだ。推薬が、初期質量の 20パーセントと言うとかなり多いような気もするが、そうでもない。一般的な打上げロケットは、初期質量の90パーセント以上が推薬である。

「1気圧で摂氏200度」と言うのは、難しい技術レベルだろうか?
蒸気機関車を作った事のある人なら判ると思うが(蒸気機関車を作った人が、そうそう居るわけないと思われるかもしれないが、少なくとも私には知り合いが居る。人の乗る本格的な蒸気機関車の場合、蒸気圧は10気圧以上、模型のライブスチームでも 3.5 気圧程度だ)、1気圧というのは大した事ない。自動車のタイヤ圧が2気圧以上、ペットボトルの耐圧が7気圧であることを考えると、小惑星開拓宇宙船の推進システム用蒸気ロケットのボイラーの強度は、自動車のタイヤの半分、ペットボトルの耐圧の 1/7 になれば良い。

また、温度の 200度と言えば、テンプラ油の温度より、ちょいと高い程度だ。

スペースシャトルの液体水素・液体酸素ロケットエンジンの燃焼室内の 200気圧、3000度と比べたら、笑っちゃうほど簡単だ。

ホームセンターで、ブリキか真鍮の板を買い、金鋏で切って半田すれば、200度 1気圧に耐えられるボイラーを作るのは簡単だ。これに銅パイプとバルブを介して真鍮などで作ったノズルを付ければ、推進系の完成である。

簡単に作れるように書いたが、くれぐれも本当に作らないこと。理由は二つあって、一つは耐圧検査の方法を知らなかったり安全弁を付けないと危険だし、もう一つは大気圧下では蒸気ロケットはロクな性能が得られないからだ。大気圧と蒸気圧の差圧を1気圧として、蒸気圧を2気圧とすれば同じと思われるだろうが、そうではない。ロケットの性能は、内圧と外圧の差ではなく、比を使っている部分が大きい。真空中での200度 1気圧の蒸気ロケットと同じ性能を大気圧下で出そうと思うと、200度 20気圧が必要となり、これは大変危険な数値となる。
(この章、長くなってので、以下、次回に続く)

| | Comments (2) | TrackBack (0)

May 01, 2008

【人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から】第4章『小惑星開拓計画』

第4章『小惑星開拓計画』
Asteroidb0401さて、いよいよ、どうやって小惑星に人類が生存圏を広げるかと言う話をする訳だが、たぶん2つの事で皆さんが想像する「小惑星開拓プラン」のイメージに対して期待を裏切ることになると思う。まあ、「期待を裏切る事」自体が「パラダイムシフト」を意味しているのだと理解していただきたい。

期待を裏切る一つ目は「小惑星の開拓は地球を中心に行われる訳ではない事」で、二つ目は「開拓用の宇宙船はハイテクではない事」だ。

小惑星を開拓し、その資源を有効に使うとすれば、地球でハイテクの豪華な宇宙船を打ち上げ、その船で小惑星の資源を掘り、持ち帰ることを想像するだろう。

もし、地球から宇宙船を打上ると、小惑星に着くのは、打ち上げ質量の数パーセントにも満たない。宇宙ステーションのような地球周回軌道上で、宇宙船を組み立てたとしても、小惑星に着くのは20〜40パーセント程度だろう。軌道上で組立る方が効率が良さそうに聞こえるが、組立てに必要な物資を地上から打上るのであれば、元々の打上げ時での質量からの効率に変化はない。

小惑星に到着し、資源を採取して地球に送り返すと、地球に送ることのできる量は、小惑星に到着した時の質量よりも少ない。もし、小惑星で燃料を補給できれば、改善されるが、それでも到着時の質量よりも多のなることは無いだろう。

小惑星から地球へ持って帰る物資の量は、地球から打上げ時の質量よりも、ずっと少ない。
もちろん、ロケットを改良し、高効率の燃料やエンジンを使ったり、大型化したり、イオンエンジン等を使ったり、色々と改善の余地はあるだろうし、改良毎に効率は良くなるかも知れない。だが、どんなに改良しても、小惑星から持って帰る物資の量が打上げ時の質量より多くなることは無いだろう。

どんなに効率が幾ら良くなっても、打上げ時の質量を越えなければ同じである。効率が0.01パーセントであろうと、10パーセントであろうと、極端に言えば、99.99パーセントであろうと、全て同じ結論だ。

最初の打上げから物資が減り続けるなら、いずれは先細りで行き詰まりだ。発展性は全く無い。

小惑星開拓を大航海時代の帆船と同じアナロジーで語れないのは、ここにある。帆船なら本国で建造し、風を受けて何度も航海し、物資を輸送すれば、いずれ、その船以上の物資を、もたらすことができる。
ロケットの場合、地球から打上げて小惑星に送る時に大量の燃料が必要なため、最初の投資以上のリターンが得られないのだ。「ロケットを再利用型にすれば」という意見が聞こえてきそうだが、それも駄目だ。仮に、ロケット自体が何度も使えても、燃料が大量に必要なので、結局は初期投資を越えることは無い。

根本から、考え方を改める必要がある。「地球で組立てて、地球から打上げ、地球に帰る」と言う地球中心的な開拓プラン自体が間違っているのだ。

要は、地球に帰らなければ良い。
小惑星開拓用宇宙船は、小惑星帯で建造され、航行し、小惑星から小惑星へ移り住み、新たな小惑星で、次の世代の小惑星開拓用宇宙船を建造すれば良い。

つまり、「自己増殖型宇宙船」である。

「この話、何処かで聞いたことがある」と思った人も居るだろう。そう、これはノイマン・マシンに、そっくりだ。
コンピュータの始祖とか言われて居るフォン・ノイマンが、火星などの惑星を開拓するなら、単純に開拓用の無人ロボットを送り込むより、自己複製・増殖型のロボットを送り込み、惑星の資源を使って、ロボットが増殖した後、開拓作業を行った方が、結局効率的だと提唱したのが、ノイマン・マシンだ。

私の言う「自己増殖型宇宙船」は、ノイマン・マシンの一つのバリエーションだ。ただ、私は無人の自動機械でノイマン・マシンが作れると思うほど楽観視していない。予想もできないことが起こるかもしれない宇宙で、自分自身を複製するためには、人間の手助けは不可欠であり、従って「自己増殖型宇宙船」は乗組員の居る有人宇宙船だ。

さて、「自己増殖型宇宙船」が、どのような仕組み・構成になっているか、皆さんも知りたいと思うかもしれない。が、それは次回の楽しみに取っておいて、今回は、「自己増殖型宇宙船」が、どのように小惑星全に広がり、人類の生存圏を広げて行くかについて説明しよう。

小惑星にも色々な大きさがあるが、最大の小惑星でも表面での重力は地球の 1/100 程度であり、もっと小さな小惑星なら、重力は更に小さい。
また、自己増殖型宇宙船の軌道マヌーバー能力が、ΔVが 200m/s もあれば、太陽からの軌道半径が6億キロ程度の小惑星帯の中では、1500万キロも軌道半径をは変化させることができる。
小惑星から小惑星に移るまで、ホーマン軌道を取るなら、8年の公転周期の半分である4年が必要だ。新しい小惑星に到着後20年で、次の世代の宇宙船を製造できるなら、24年で2倍になる。このままのペースで増え続けると 240年で1024倍、480年後には 100万倍となり、小惑星の総数を越える。
つまり、小惑星帯全域に宇宙船が広がったことになる。もちろん、全ての小惑星に宇宙船が広がった事が、小惑星帯に人類が広がった事にはならないかもしれないが、それは時間だけの問題になりそうだ。

小惑星全体に行き渡るのに 480 年と言うのは、時間がかかり過ぎると思われるだろうか?
それとも意外と短いと思われるだろうか?

いずれにしろ、480年は、ざっと計算した概算であり、最悪値と考えて良いだろう。実際は、ホーマン軌道よりも時間のかからない軌道を選ぶことも可能だし、小惑星から小惑星への航海一回毎に一隻作るよりも二隻も作る方が効率が良いかもしれない。

何万もある小惑星を、どんな順番で辿って行き、更に一カ所で何隻作るのが最適なのか? それは簡単には分からない。コンピュータでシミュレーションしてみれば、どう言ったやり方が良いのか分るかもしれない。

現状判って居るだけの小惑星の軌道データをコンピュータにインプットしておき、開拓用宇宙船の持つΔV能力をパラメータとして設定し、さらに次の世代の宇宙船を製造するのに必要な期間を想定すれば、小惑星帯全体に広がる最適な経路と期間が計算できる。

最適な経路を求めると簡単に書いたが、実は、そんなに簡単ではない。「巡回セールスマン問題」などを考えた人なら判ると思うが、地球上のように街と街の位置関係が変化しない場合でも、街の数が増えるに従って、経路の組合せは指数関数的に増える。小惑星の場合、太陽の回りを公転して居るので、時々刻々位置関係が変化する。だから、最適解を求めるのは、より難しくなる。数万を越える小惑星を最も短い期間で開拓する経路の厳密な最適解を求めることは不可能で、現実的には、「まあ、これなら妥協できるなあ」位の「準最適解」を求めるしかない。「準最適解」を求めるなら、コンピューターシミュレーションが役に立つ。

航海用の軌道計算のシミュレーションプログラムを作ることは、そんなには難しくない。何処かの天文台で公開されて居るであろう小惑星の軌道データを入手する。現時点では全ての小惑星の軌道データが正確に判って居る訳ではないから、足りない部分はランダムに生成しても良いかも知れない。

これらの小惑星の内の2つを選び出し、ランベルト法などを用いて、それらの小惑星間を航行するのに必要なΔVと航行期間を求める。
こうやって求めて経路を組合せて、「準最適解」を見つければ良い。

シミュレーションプログラムが、そんなに簡単に作れるのなら、さっさと自分で作れば良い。そう言われそうだ。だが、軌道計算のシミュレーションのプログラミング自体は2〜3週間でできるだろうが、その後がとてつもなく時間がかかるのだ。

実際、私は「準最適経路」を求めるコンピューターシミュレーションを作ろうとしていた。そのために、わざわざデュアルコアのパソコンを購入したほどだ。
だが、プログラムの準備をして居るうちに、満足できる解が得られるには2〜3週間どころか、半年・1年以上の時間がかかる事に気が付いた。それは「経路の組合せ」が余にも複雑だからだ。

囲碁や将棋を思い浮かべて欲しい。
碁盤や将棋盤の升目の数や石・駒の数は、小惑星に比べて遥かに少ない。だが、その組合せは事実上無数にあり、両方とも千年を越える歴史を持ちながら、完全解を求めるには、その糸口をすら、見つかって居ない。
では、囲碁や将棋が千年以上の歴史で進歩しなかったかと言うと、そうではない。勝つための方法とか戦略が作られた。つまり「定石」と言うやつである。

先に述べた2〜3週間で作れる軌道計算のシミュレーションとは、囲碁や将棋で言えば、石や駒が何処におけるか、どう動かせるかを判定する言わば碁盤や将棋盤である。

だが、「定石」を見つけるのは、そんな短期間で済むとは思えない。どんなに短くても数カ月から半年、下手をすれば、数年以上かかってしまうかも知れない。
『人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から』シリーズの第一回目でも言ったように、このように長期間時間がかかると予想される解析は、まだ行っていない。

シミュレーションプログラムを作り、定石を探す解析を行っていないのは、単に時間がかかり、これの完了を待っていると「小惑星ネタ」のコンテンツが何時迄経ってもアップできないことが理由であり、決してシミュレーションプログラム作りや解析作業が面倒だからではない。
逆に、私の性格から言って、このようなプログラム作りや解析を一度始めてしまうと、面白くて没頭してしまい、それこそ寝食惜しんで時間の経つのも忘れかねない。

既に述べたように、小惑星の位置関係は、時々刻々と変り続ける。どのタイミングで小惑星から小惑星への航海を始めるのか、どう言ったアルゴリズムを用いることで、効果的に拡大していくか・・と言うだけでも面白い。その上、未知の小惑星が発見された時に効果的に対応できるアルゴリズムも面白い。

前回のコンテンツでは、あたかも太陽系の小惑星は全て同じような成分比率でできているように書いたが、実際は、いろいろな種類の小惑星がある。太陽に近い小惑星が程、水分が少なく、遠いほど水分が多いのは原則的には正しいのだが、長い年月の間に木星などの巨大惑星の引力で混ぜられているため、太陽に近いところに水分の多い小惑星が来たり、遠いところに乾いた小惑星が行ったりする場合もある。

また、遠い昔、より大きな惑星に形成される途中まで成長した小惑星もある。このような小惑星は、一度ぶつかり合って、高温で溶け、地球の核のように中心に重い金属などが集まり、周辺部に軽い元素が取り残される。形成途中の惑星が、再び大きな小惑星などと衝突して、バラバラになった時、中心部分だった場所は、金属が多い小惑星になる。

このように小惑星の種類が多いことを考慮すると、一度に次世代の宇宙船を造るよりも、金属の多い小惑星で船体を造り、水の多い小惑星で燃料や食料を載せるなど、分割した方が良いかもしれない。

全く逆に、幾つかの小惑星に造船所を集中し、宇宙船を大量生産した方が効率的かも知れない。

緊急事態には、どう対処するか?
ある程度の応急治療は、各宇宙船でできるようにするのは当然だが、大きな手術のできる大病院を小惑星帯に、どう配置し、どのように搬送するのが効果的か?

課題はいっぱいある。これらは一朝一夕で答えが得られるほど簡単な問題では無いし、検討するにはコンピュータの助け無しには考えられない。

それこそ、シムシティならぬシムアステロイドでもなりそうな位、楽しそうだ。

「楽しそう」だからこそ、今回は手を付けなかった。
「小惑星全体に広がるのは最大で480年後」と言う概算にとどめた。この「480年後」とは、囲碁の勝敗が決まるのは、升目の交点の数である「361」にマージンをプラスして「おおよそ400手以内だろう」と言っているのに等しい。囲碁を知っている人なら判るだろうが、普通囲碁の勝敗が決まるのは、200手強だ。

同じように、ちゃんとアルゴリズムが見つかれば、480年より大幅に短くなるだろう。それが、半分なのか3分の1なのか、はたまた、ずっと少ないかは、まだ誰も知らないが。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

April 29, 2008

【人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から】 第3章『宇宙に行って、暮らせるの? 幸せなの?』

第3章『宇宙に行って、暮らせるの? 幸せなの?』じゃないの?
Asteroidb0301『宇宙は広大だ』
この言葉は、常に言われ続けられて居るが、その本当の意味まで理解して居る人は、むしろ少数かも知れない。
宇宙は、一言で広大だと言ってしまう程度の広大さではない。地球の直径は 1万3千キロ位だが、太陽系の直径は海王星の軌道まででも90億キロ位になる。

銀河系の大きさは、約10万光年、太陽系の一億倍だ。
銀河系には、太陽と同じように自分で光る恒星が 5000億 個くらいあって、さらに我々が観測できる範囲には、銀河系と同じような島宇宙が 4000億もあるそうだ。我々が観測できる範囲の外側、つまり「宇宙の果て」の向こう側にも宇宙が広がって居るらしい。さすがに宇宙の果ての向こう側に、どのくらい宇宙が広がって居るのか、はたまた無限に宇宙が広がって居るのかは、色々と意見が分かれて居るらしいが、とにかく、判って居る範囲だけでも、とてつもないくらい宇宙が広がって居るのだ。(「宇宙の果て」と言うけど、その先に、さらに宇宙が広がって居るなら「宇宙の果て」じゃないだろう・・・って私も思う)

宇宙全体は、とてつもなく広く、その中にある星の中には地球よりも住み易い星があっても、ちっともおかしくはない。

だが、宇宙全体だと、余りにも遠く、流石の私にも、どうやって行ったら判らないので、もう少し近場で太陽系内に限って、話題を進めよう。

太陽系の中で、地球以外の惑星は、人が住めるような環境ではない。特に私が薦めている小惑星など、水も空気も食べ物になりそうも無い岩だらけだと思われているかもしれない。

ところが、必ずしも、そうでも無いようだ。

私は良く知らないのだが、太陽系全体は、一つの超新星が爆発した破片からできているらしいそうだ。
つまり、太陽自体も、惑星・小惑星・衛星・彗星と言ったものは、元々同じような組成で構成されていたようだ。
最初の段階で、どんな惑星も小惑星も、地球と同じような物質の組成でできていた。
現在、色々な惑星があるのは、その後の変化によるものだ。

太陽に近い星は、太陽の光に炙られて、水など揮発性の物質が蒸発する。蒸発したガスが、太陽風などに飛ばされると、その星から水分などが無くなってしまう。
地球のように大きく引力が強い星なら、水分が飛ぶ前に引き留めることができるが、月のように引力が弱いと引き留めて置くことができない。何十億年か前に、地球と月ができた時、月にも地球と同じ割合で水があったはずだが、その後、月の水は太陽の光で炙られて、蒸発し、水蒸気が光や太陽風で飛ばされ、無くなってしまった。それに対して、地球は引力が強く、水が残った。地球と月の差は、大きさで決まった訳である。

火星も同じで、引力が少なく、水が無くなってしまった。(最近では、火星にも意外に水が残っていると言う学説もある。まあ、水が残っていたにしても、表面に見えて居る訳ではないから、地球ほどに大量の水が残って居る訳ではないのだろう。)

太陽から遠い星になると、太陽からの光が弱く、そもそも水が蒸発しない。だから、星の大きさによらず、全ての星に水が残っていると思われる。地球から太陽まで1億5千万キロなのだが、その4倍の太陽からの6億キロより離れた場所、火星と木星の中間より、かなり木星寄りより遠い場所にある星には、水が残って居る。
例えば、木星の衛星のガニメデやエウロパは、表面が厚い氷に覆われるほど、水が多いし、彗星の核にも水が大量に含まれて居ることも良く知られて居る。小惑星も例外ではなく、その場所にある小惑星には水が多く残って居る。

例外は存在するもので、木星の衛星で最も木星に近いイオには水は残って居ないそうだ。その理由は、木星の出す熱だか、放射線だが、潮汐力の影響だかで水分が蒸発しきってしまったようだ。

イオは別としても、太陽からの遠い場所では、それ以外の衛星や小惑星には水がある。水だけではなく、炭素や、その他の元素も十分にある。
逆に大きな惑星、木星や土星は、大きすぎ、重力が強すぎ、せっかくの資源を使うことができない。もちろん、強力な重力、それに高い気圧に耐えられる強力なロケットを作ることができれば、資源を使うことができる。だが、そんな面倒な事をしなくても、より重力の少ないところから始めた方が速い。

宇宙の資源を楽に使うには、大きくて重力の強い惑星よりむしろ重力の小さい小惑星の方が有利だ。
例えば、月の表面積は南極大陸程度で、火星の表面積は、地球の全陸地面積を合せた面積に等しい。
これに対し、小惑星では、大きなものでも表面積は九州程度しかないし、全ての小惑星の総質量を合せたところで、月の37分の1しかない。
だが、小惑星は重力が小さいから、穴を掘っても落盤の危険が少なく、中までミッチリ使うことが可能だ。

地球の場合、地表から数メートルから数十メートルしか有効に使って居ないだろう。もちろん、地下街などで地下深くまで掘って居るものもあるし、さらに炭鉱などでは千メートルよりも深く掘って居る所もあるかもしれない。だが、それらは極めて例外的で、ほとんどの場所では植物の根のはる範囲しか資源を使って居ないであろう。だから、地球全体の平均なら、地表から数メートルから数十メートルと言うところが資源を有効利用している事になりそうだ。(陸地はともかく、海洋での資源利用を、どう評価するか、良く判らない。これは今後の課題と思って居る)

小惑星の総質量は少ないが、それでも地球の陸地に積むと、高さ 4千メートル程度になる。これが、資源として全て有効に使えるなら、現在の地球の何十倍、何百倍の量が使える事になる。とは言え、小惑星の物質の百パーセントが使える訳ではないだろう。仮に10パーセントが使えるだけでも、地球の資源の数倍から数十倍の資源があることになる。

小惑星に、資源が十分にあることは示したが、それはあくまで元素の量としての話で、その元素が使える状態にあるか、どうかは別問題だ。地球は、小惑星には比べ、大きい、空気や水があり循環して居る、生物が居ると言う違いがある。

地球のように大きな惑星の場合、惑星形成時に一度高温で溶けた時、重い物質が中心部に集まる。地球の場合、ウランなどの重金属が中心部に核を作り、その回りに鉄などの金属が集まると言うような構造ができる。これに対して、小惑星では、均一なままになって居る場合が多い(と言い切って良いのか、極めて自信が無い)

また、地球は海の水が蒸発し、雨になり、川を流れ、海に流れ込むという循環を繰り返す。この時、金属などの濃度を圧縮し鉱床を作る。小惑星では鉱床は形成されず、金属濃度が高くなることは無い。つまり、鉄鉱石などのように金属が使いやすい状態で得られない。

当然の事だが、小惑星には呼吸可能な大気も無いし、食べるものも無い。意外な事かも知れないが、呼吸可能な大気のための酸素成分は生物が作って居るのである。もちろん、食べ物になる有機物も生物が作って居ることは言うまでもない。

小惑星には、金属などの物質は、元素としては存在してはいるが、地球のように使いやすい高い濃度で得られない。薄い状態で散在している元素を人工的に集めて濃縮しないと使い物にならない。酸素も食べ物も、そのままでは無いので、植物等を育てて得るしか無い。元素として存在しない訳ではないから、エネルギーと時間をかければ不可能な話では無いが、簡単ではない。

エネルギーについてだが、宇宙では太陽光が使える。宇宙空間では、地球上と違い、太陽光が大気で減衰したり、雲や雨で遮られたり、夜の間は使えなかったりはしない。
水分の残って居るような小惑星の場所では、太陽から遠い分、太陽光が弱くなって居るが、それでも、人一人が生きて行くのに必要なエネルギーは24メートル四方の太陽電池で供給できる(人一人に必要なエネルギーを 10kW とし、太陽電池の効率 20 パーセントとした。なお、地上の都市での電力消費量は一人当たり 1kW 程度である)

太陽光以外のエネルギーでは、核分裂・核融合が考えられる。前述したように水の循環による鉱床の形成が無いので、小惑星では濃度の高いウランを得ることは難しい。薄いウランを集めて原子炉を作ることに意味があるかは判らない。
水分がある以上、水素や重水素を使った核融合炉も考えられる。宇宙には核融合に便利なヘリウム3が多いそうだが、そんな都合の良い話があるのか、ちょっと怪しいとも思える。
核分裂・核融合とも、将来的な技術で、少なくとも最初の段階では、太陽光エネルギーから考えた方が良さそうだ。

太陽系の小惑星中に人類が広がった状態を想像してみよう。
人々は、小惑星の中に穴を掘って住んで居る(宇宙には放射線が多く、それを防ぐためには、5メートルくらいの穴を掘って住むのが一番)

エネルギーは、大きく広げた太陽電池もしくは反射鏡で集めた熱をスターリングエンジンなどでエネルギーに変えて使って居る。
シアノバクテリアのような微生物を培養して、呼吸のための酸素を得る。食べ物は微生物を食べるか、穀物や家畜を育てる事で得る。
実は、水を得るのが一番簡単かも知れない。水分を濾過・蒸留するだけで良い。
小惑星は小さいから、一番大きな小惑星でも地球の重力の百分の1位しかない。でも、遠心力を使って人工的に重力を作ることは可能だ。映画やアニメの宇宙ステーションやスペースコロニーは、全体を回転させるが、小惑星の場合、小惑星全体を回転させるより、むしろ、居住区を穴の中に置いて、その部分だけ回転させた方が合理的だろう。

小惑星を形成する物質だけで、21世紀初頭の地球より数倍から数十倍の豊かな文明を築くことができる。
小惑星全体に人類が広がるには、数百年以上かかるだろう。だが、いずれは、人類は小惑星全体に広がり、それに飽き足らなくなり、木星や土星の衛星や彗星にまで広がる。
太陽系全体に広がった後、つまり、現在の数百倍以上の豊かさを得た後、次は、恒星間の世界へ乗り出す。
銀河を征服するのに何百万年かかるが、想像もできないが、いずれは、それすらも飽き足らなくなり、他の銀河へ乗り出すに違いない。

小惑星での暮らしは、物質的にはむしろ現在よりも豊かなものになるかもしれない。だが、いくら物質的に豊かになっても、大自然の無い生活が楽しいのか、幸せなのかは別問題だ。幸せかかどうかは、物質的なものではなく、精神的なものだからだ。

小惑星での暮らしが楽しいかどうかについては、私は楽観視している。住めば都というが、開拓された土地、例えば、新大陸ならニューヨークやロサンゼルス、国内なら札幌と言う都市に暮らす人は楽しいだろう。札幌などは自然豊かな都市だが、自然の少ないニューヨーク等の大都市でも暮らしは楽しい。極端な話、砂漠で何も無いラスベガスでも、世界中の人々のあこがれの的になる。
しかし、必ずしも「楽しい」ことと「幸せ」であることは同一ではないだろう。前者は娯楽で解決できるが、後者はそうではない。幸せとは、その人の生きる意義とか、そういうものに繋がる。あまりに哲学的になるので、これ以上深入りしないが、少なくとも私は「幸せ」を見つけられると思って居る。

さて、小惑星には資源があり、そこで豊かな生活ができる可能性と、その先の宇宙へ広がる足掛かりになることは話した。
だが、いくら素晴らしい将来像でも実現性が無ければ、絵に描いた餅である。
次回から、「どうやって、人類が小惑星に広がるか」の話をしよう。

| | Comments (6) | TrackBack (0)

April 28, 2008

人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から 第2章『宇宙へ飛び出す』なんて『レトロ・フューチャー』じゃないの? 

第2章『宇宙へ飛び出す』なんて『レトロ・フューチャー』じゃないの?
Asteroidb0201このシリーズのコンテンツの主題は『人類は宇宙へ飛び出す』って話だけど、『そんなの前世紀(20世紀)の、できもしない夢なんじゃないの・・』って言う突っ込みが、聞こえて来そうだ。

確かに、『人類が宇宙に飛び出す』話は、SF小説、漫画、アニメ、映画に度々使われて来たテーマだ。その上、それも20年ほど前を最後に、最近では余り使われなくなった古いネタと思われて居るだろう。

実際には『人類が宇宙に飛び出す』話は、小説や映画・漫画等の娯楽作品だけではなく、ツォルコフスキーやオーベルト、ダイソン等、科学・技術的検討を元にした思想として、繰り返し提唱されているものである。中でもオニール氏によるスペースコロニーのコンセプトはアニメのガンダムに大きな影響を与えたことで有名だ。

こう言った『人類が宇宙に飛び出す』話が、『できもしない見果てぬ夢』と思われるような背景には、40年近く前に月着陸を成功させたにも拘わらず、その後、大きな発展を示して居ないことがあるだろう。

さて、『冒頭の人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から』は、次の三つの段階に別れる。
(1) 人類のために、広い宇宙に、広がるのは必然だ。
(2) 宇宙には、人類が広がるための空間と資源とエネルギーなどが十分にある。
(3) 宇宙に人類が広がる事は、決して不可能ではない。それには、小惑星から始めるのが最適。

上記の3つは、(1)が目的・目標もしくはモチベーション(動機)、(2)が理由、(3)がフィジビリティ(実現可能性)に当る。
(2)については次回(第3回目)のコンテンツ、(3)については、第4回目以降に述べる予定として、今回は(1)について説明する。

地球は、物質的には閉じた世界である。地球外から、何の補給も無く、逆に無くなる物質も無い。もちろん、隕石の落下や、人工衛星の打ち上げなどの例外はあるが、全体から見ると、ごく少量で、ほとんど無視しても良い。従って、物質は再利用しないと、いずれ枯渇する。質量保存則から物質自体の総量は減りはしないのだが、問題なのは、物質の再利用にはエネルギーが必要な事だ。
地球は、エネルギー的には開放系で、太陽から光エネルギーを受け、宇宙空間に熱エネルギーを放射している。エネルギー自体は保存則に乗って居るのだが、エントロピーが増加するため、実際に使えるエネルギーは再利用することはできない。
現在の人類の営みには、今現在の太陽光エネルギーをだけでは足りず、何億年にも渡って太陽から受けた光を化石燃料として貯め込んだエネルギーを浪費している。
この状態が続く限り、いずれ人類は、まずはエネルギーを、続いて資源を使い尽くし、繁栄を続けることはできなくなる。

だからこそ、空間的にも物質的にもエネルギー的にも、地球とは比べ物にならない宇宙へ人類は飛び出すべきだ。

もちろん、反論も多いだろう。
地球の中だけでも、資源のリサイクルや省エネルギーに努力することで、人類を存続する事は可能だ、とか、エネルギーを化石燃料だけに頼るのではなく、太陽光、風力・潮力エネルギーを使ったり、原子力や核融合エネルギーを使うことが重要だ、とか言ったものだろう。

既に前回説明したように、この辺の厳密な検討は行って居ない。地球の中だけでの人類の存続の可能性について検討するのは膨大な作業になる。また、批判的な事も書かざるを得ないのでネガティブになってしまう。書く方も読む方もうんざりするだろう。

ここでは、私自身が「限られた地球の資源とエネルギーだけでは、人類はいずれ行き詰まる。だから、宇宙に出て行く必要がある」と言う動機で行動して居ることだけ理解してもらえば良いと思う。

他にも、反論として「水も空気も無い宇宙で人類が生活して何が楽しいのか」とか「そんな夢みたいな話、できる訳無い。」とかが聞こえて来そうだ。これらについては、前者は次回(第3回目)、後者は第4回目以降に説明する。

モチベーションの話に戻ると、科学が進み、宇宙の事が理解できればできるほど、宇宙の広大さが判り、相対的に地球の小ささが判って来たこともある。ちっぽけな事を「砂粒のよう」とか言う事があるが、宇宙に比べると砂粒に失礼なほど、地球は小さな存在だ。
地球が余りに小さな存在だと判ると、その中に閉じこもって居ることに耐えられない。自分の世代に、広い世界に出ることは無理でも後世のために、宇宙へ出て行くための努力をしない事は、罪だとすら思う。
少なくとも私は、そう思って居る。

私の中には、もう一つモチベーションがあって、それは「宇宙開発が停滞して居るのは、目標を見失ったため。宇宙開発の活性化のためには、壮大な目標が必要」と言うものだ。
だが、良く考えてみると最後のモチベーションは「宇宙開発の保身と存続」を元にしている。言ってしまえば宇宙機エンジニアのエゴに過ぎない。実は、昨年秋から何度も書き直した下書きは、この「宇宙開発の活性化のために壮大な目標が必要」から始まって居た。何度も書き直して居るうちに、モチベーションは、先の2つ即ち「人類存続のため」と「広大な世界へ飛び出したい」の方が純粋で本質的だと気が付いた。エンジニアのエゴは、付け足しに過ぎない。

『宇宙へ飛び出す』のモチベーションの本質は、「人類存続のため」と「広大な世界へ飛び出したい」だ。

だが、これらを、前面に出すのは、恥ずかしいものだ。
「おまえ、正気で言って居るのか??」と言われそうだ。
だが、あえて前面に出そう。

「人類存続のため、宇宙へ飛び出そう!!」

以下、続く。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

April 27, 2008

人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から 第1章『イントロ 〜言い訳〜』

第1章『イントロ 〜言い訳〜』
Asteroidb0101昨年の秋から、ブログの更新回数が減って居る。(ここ数日に関しては、Ubuntu 系のコンテンツをアップしているが)
実は、コンテンツの内容がマンネリ化しているので、まとまって大きなネタをかけようと思って昨年秋から準備して居たのが原因だ。

どうも、私の場合、大きなネタをかけようとすると、それ以外のネタでも、ブログの更新が止ってしまう傾向にあるようだ。その上、肝心のネタも懲り過ぎ、冬が来て春が来たと言うのに準備が終わらず、これでは、いつになったら公開できるか判らない状態になってきた。

いつまで経っても公開のめどがたたないくらいなら、粗削りの段階であっても早めに公開した方が良いように思えて来た。

そこで、今回は検討が不完全でも、暫定版として公開することにした。

結論から、先に言ってしまうと
「人類は宇宙へ広がるべき。
 その最初の段階は小惑星から始めるのが良い。
  それは不可能な夢ではなく、実現可能だ。」と言うことだ。
これを、6回か7回程度に渡って説明したいと思う。

このネタ、ずっと昔にやった『僕の宇宙船』シリーズの『惑星間宇宙船』の続きとも言える。『僕の宇宙船』シリーズが中途半端な状態で中断したのが2005年夏だから、昨年秋からどころか、3年近く前から考え続けて居たんだよねえ。そんなに長い間考えていても、まとまらなかった訳だ。

すでに『言い訳』したように、今回のシリーズは、いまだ検討が足りてないところも多い不完全なコンテンツだ。
例えば、論理的な完全性は無い。「人類は宇宙へ広がるべき」と言う文には、言外に「地球に、とどまっているだけでは、人類の将来が無い」の意味が含まれる。これを論理的に完全に説明するためには「将来的に地球だけで人類が生き残る事が不可能」であることを示す必要がある。しかし、これはやり始めると簡単には終わるようなものではない。
同じように「最初の段階は小惑星から始めるのが良い」と言う文には、「月や火星から始めるよりも効率が良い」と言う意味があり、これも真っ正面から検討すると多大なものになってしまう。
このように論理の一貫性を確保することは大変で不可能に近く、仮りにできたとしてもネガティブな説明になってしまう。それを延々と述べるのはブログのコンテンツとして似つかわしくない内容になる。

他に検討が足りて居ないところとして、解析とか設計などが深く行われていない部分もある。これは、私個人としては解析作業や設計は楽しくって仕方が無く、やり始めると、すぐに時間が過ぎてしまう。
小惑星を幾つも開拓するための最適経路を求めるコンピュータシミュレーションプログラムなど、考えて居るだけでも楽しいが、ちゃんと結果が出るまで少なくとも半年はかかりそうだ。
また、小惑星の開発のための宇宙船の設計も楽しく、これもやり始めるときりが無い。詳細に嵌まり込んだら、それこそ一年でも二年でもかかってしまうだろう。
ディテールに凝るのは楽しいのだが、それにはまり込んで時間を無為に使うよりは、粗削りの段階公表した方が良い。ある程度の方向性さえ示すことができれば、私より、ずっと上手くシミュレーション・プログラムを作ったり、宇宙船のデザインができる人が居るに違いない。そう言った人達が協力して、手分けして作業ができれば、より早く良いプランを作ることができる。

専門的な情報の収集も不足して居る。私は宇宙機の設計や軌道計算は専門だが、小惑星の分布や組成などの専門的な知識は無い。生態系を維持する生物学や生化学の知識も無い。こう言ったプランを練るには小惑星や生物学・生化学に限らず、多岐多様な知識・情報を必要とするのだが、個人の持つ知識・情報等たかが知れて居る。本当に役に立つプランを作るには各分野の専門家を集めるしか無いと思うが、無闇に専門家を集めれば良いと言う訳ではない。
何のために、どう言った知識・情報が必要かを判った上で専門家を集めないと無駄になる。だから、専門家を集める前に、とりあえずの知識で、暫定的なプランをつくって置くことは、決して無駄ではない。


繰り返しになるが、このシリーズは未完成で、粗削りのものだ。
論理の完全性は無く、私の直観的な「仮説」が前提になっていたり、詳細な解析や設計も終わって居ない。また、専門的な知識・情報も不足して居る。

このシリーズは、読んだ人からのコメントを反映したり、詳細な解析や設計を進めたり、専門的な知識・情報を手に入れることで、補強され変化して行くものとなるだろう。
それは、「間違って居たから修正する」と言うわけではなく、「成長して行く過程」だと思って欲しい。

今回のコンテンツは「プランの卵」だと思って、暖かい目で見守って欲しい。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

April 29, 2007

最近の若い者は・・・

E089昨日、都内某所で、ちょっと講演をした。昔、世話になったことのある大先生に頼まれて断れきれなかったのだ。最近は、宇宙旅行とか火星や小惑星の命名権やらの土地の権利とかをネタにして、怪しげな事もあるらしいので警戒した。しかし、そう言ったものでは無く、心配は全くの杞憂であった。結果的には、色々な人に会えたし、面白かったので、講演して良かった。

このブログで事前に告知しなかったのは、会場になる会議室が満員になるくらい既に予約が入っていると言うことだったからだ。

で、会場に行くと、50人弱位の人が集まったのだが、普段の『客層』と全く違うので驚いた。普段は、専門の技術者や科学者が集まる学会やら、マニアの集まる SF 大会やロフトプラスワン、宇宙作家クラブのミーティングで喋っているのだが、この場合、聞いている人は、宇宙に関して、それなりに知識がある。
ところが、昨日は、全く宇宙とは関係の無い職業でマニアでも無い人達が、「宇宙に行きたい」と言うキーワードだけで集まって居た。若い人から年を取られた方、男性も女性も居た。もちろん、男性の方が比率的には多いが、普段では、まず居ない ごく普通のOL風の若い女性とか、普通の主婦とかが居たのには驚いた。男性でも、広告代理店とかIT関係の職業など、宇宙とは縁もゆかりも無く、また、マニアでも無い方が多く居た。

用意したプレゼンテーション資料は、ターゲットを見誤って、少し専門的な部分が多過ぎ、難しい部分は出さずに話したのだが、それでも終了後に色々な人に聞いたところ、専門用語などが難しかったようだ。ただ、皆さんが「面白かった」と言って下さったのが、せめてもの救いである。

講演終了後、懇親会に出たのだが、そこでも色々と話、面白かった。
ごく、普通の人にも「宇宙に行きたい」が、ストレートに判ってもらえるんだなあ。
ちょっと、カルチャーショックだった。反省しなければならない。

ところで、その懇親会で若い人と色々喋った。若いときから、海外で宇宙関係やシステムエンジニアリングの学校に留学したりして、自分が進みたい道のために努力している人が居る。宇宙関係でなくても、他の色々な分野で努力し、自分の仕事を着実に進めていて、なおかつ、大きな夢を追おうとしている人も居る。皆、若いのに、努力し、自分の道を、自分の力で進もうとしている。
だが、残念な事に、彼らを受け入れる場所が、この国には十分には無い。それが歯がゆい。

その時、感じたのが、最初のタイトルである。
普通なら「最近の若い者は」の後は「何を考えているのか判らない」と続くところだ。
しかし、私は、そうは思わない。

「最近の若い者は、なかなかのものだ。早く日本を彼らに任せたい」と思うのだ。

最近、今回の講演だけでなく、20代から30代前半の人と話す機会が多い。
マスコミでは、フリーターとかニートとかが問題になっている世代だ。
だが、私が話をする若者達は、皆、そんなに悪くない。
むしろ、我々や更にその上の世代よりもしっかりと生きているように見える。

そう言った「しっかりした」若者は、少数派だと思っていたのだが、だんだん、そう思えなくなってきた。
あまりに、しっかりした若者が多いからだ。

なぜ、若者をフリーターとかニートとかだけでとらえようとするのだろうか?
なぜ、逆に、しっかりとした若者を、マスコミは報道しないのだろうか?

どうも、年長者は、「若者=未熟者」とのレッテルを貼りたがっているようにしか思えない。
その根源にあるのは、年長者が、若者の追い求めている「夢」を理解できないからのように思える。

若者が求めている夢は、お金を稼ぐ事でも食べる事でも無い。もっと、壮大な夢だ。もっと、芸術的な夢だ。

しかし、そんな夢を「何を現実離れした事を言っているんだ。まじめに働け。働かないと食べられないぞ」と年長者は言うだろう。それは日本が貧しく、飢えて居た時代に、育った年長者の価値感だ。
今の若者は、飢えた事も無いし、お金に困った事も無い。

だから、彼らの仕事に対するモチベーションは、お金でも食べ物でもない。

だが、彼らも考えることは考える。彼らの仕事に対するモチベーションは、もっと大きく人類に対する貢献とか芸術とか、そう言ったものに変わって来ているのだろう。

「飢えた事も無いし、お金に困った事も無い」若者を「甘ちゃん」扱いしたいのは判る。

だが、彼らは逆に、「大人」なのだ。
日本と言う国が、少なくとも経済的・物質的に一人前になってから育った彼らは、次の精神的な価値を追える「大人の国」の住人だ。
年長者の方がむしろ、「日本が子供の時代」に育った「子供の国」の住人に思えてくる。
私は、わずか一年英国に住んだ事があるだけだが、英国人の価値観は、日本の年長者よりも、むしろ最近の若者に近い。少なくとも私には、そう思える。そして、英国はアメリカよりも何処よりも大人の国なのは万人が認めるところであろう。

今、現在、その移り変わりの時代なのだと思う。
日本という国が、経済的・物質的・精神的にも、子供から大人へ変わろうとしている時代では無いか。
上手く、大人へ脱皮することができたら・・と願う。

| | Comments (8) | TrackBack (1)

March 16, 2007

IPS (恒星間測位システム)

野尻抱介氏のSF小説「沈黙のフライバイ」に出てくる IPS (恒星間測位システム)について、説明する。

この作品、1998年に書かれたものだが、IPSについての当時の検討を何処にも発表も公開もしていないので、あらためてここに記する。

IPS の目的は、「鮭の卵」のような小さな恒星間探査機のナビゲーションのための位置決定である。
そのため、まず電波の往復時間を測って距離を求めることはできない。小説「沈黙のフライバイ」の設定のように10光年離れた場合、往復で20年もかかってはナビゲーションに使えないからだ。従って、GPS のように一方通行の電波のみを使って、位置を求める必要がある。
また、受信側は「鮭の卵」のようにリソースが限られる。従って、可能な限り受信側をシンプルに作れるような仕組みが必要だ。「鮭の卵」は恒星間探査船だが、エネルギー源は太陽電池のみで、目的地の恒星に近付いて始めて電源が入る。その間は電源が切れた状態なので、時計を動作させ続けることはできない。つまり、正確な時刻を知らない状態から、始めなければならない。

E0841図1
IPS は、図1のように、2つの惑星に、それぞれ2つ、合計4つの衛星から構成される。(図1は、小説「沈黙のフライバイ」の設定に合わせて、恒星レッド・ドワーフと惑星トーリンとドワーリンにしている。私の元々の設定は、太陽・地球・海王星だ)

図2に、惑星の公転軌道面への投影図を示す。図2には、レッド・ドワーフと惑星公転面に垂直な軌道を持つ2つの衛星は省略している。


図2左上のトーリンを回る衛星から「鮭の卵」に行く電波に注目して欲しい。「鮭の卵」で受ける電波の周波数は IPS の位置によって、ドップラーシフトが起きていることが判るだろう。衛星が近付いてくる時は周波数が高く、離れている時は周波数が低い。
ドップラーシフトの時間変動率に注目すると、周波数が中間の時(図2の赤い矢印で示した場所)が、最も激しい。

E0842図2

この最も激しくドップラーシフトが変化する時の IPS の位置が判れば、トーリンから、その方向の先に「鮭の卵」が居る。正確に言うなら、ドップラーシフトが変化する時の速度ベクトルに対して垂直な面内に「鮭の卵」が居ることになる。(小説の中では、ドップラーシフトが最大になる時の接線方向と書いてあるが、実際はドップラーシフトの変化率の方が正確に測定できるので、こちらを用いる)

実は、この方法は、「のぞみ」や「はやぶさ」などの惑星間探査機の位置決定の時に用いる方法の応用だ。惑星間探査機の場合、臼田のアンテナから出る電波が探査機を往復したドップラーシフトを用いる。臼田のアンテナは衛星軌道を周回してはいないから、地球の自転を利用している。現在の技術として、この方法で、百万分の1ラジアンと言う高い精度で、角度を測定できる。

「鮭の卵」は、トーリンとドワーリンからの角度が判るので、三角測量の応用で、距離が判る。また、惑星公転面と垂直な2つの IPS の角度情報と合わせて三次元的な位置を決定することができる。

実は、IPS は3つの衛星があれば、三次元的な位置の決定が可能である。だが、これは受信側すなわち「鮭の卵」が極めて安定性の高い時計を持って居た場合の話である。実際には、安定性の高い時計を持つことはできない。そこで、一つ多い4つ衛星の信号を用いることで、正確な時計が無くても、位置を計算することができる。

実際に、どの位の精度で衛星の位置を決定できるか、計算してみた。
レッド・ドワーフから太陽系までの距離を10光年(100兆キロメートル)、トーリンとドワーリンの距離が、海王星までの距離と同じ 30 AU つまり45億キロメートルとする。

角度精度が、百万分の1ラジアンとすると、距離方向の誤差が 2.2光年(22兆キロメートル)、横方向の誤差が1億キロメートル(0.67 AU)だ。

どうだろう?
良い精度だと思うだろうか?悪いと思うだろうか?
実は私は「意外と良いなあ」と思った。

とは言え、百万分の1ラジアンと言う角度精度は、現在の技術で可能なレベルであり、IPS が未来の技術と考えれば、2〜4桁位精度が向上しても、おかしくは無い。
例えば、角度精度が2桁向上すれば、距離方向の誤差が 0.022光年(2200億キロメートル)、横方向の誤差が100万キロメートルになる。
角度精度が、さらにもう2桁向上すれば、距離方向の誤差が 0.00022光年(22億キロメートル、15AU)、横方向の誤差が1万キロメートルになる。

もちろん、何処まで行っても誤差は残るので、目的地の恒星自体を使った天測による補正は必要だろう。

と、ここまでは、約十年前に考えた事である。
今考えてみると、ドップラーシフトだけではなく、IPS の位置情報も使う方が良いかもしれないとか、全然違うところにもう幾つか IPS 衛星を配置し、搬送波レベルまで同期させて、「逆VLBI」させた方が角度精度があがるだろうなとか、IPS のバリエーションも星の数ほどありそうな気がしてきた。少なくとも IPS 間の距離があるほど精度が良くなるから、もっと距離を離す工夫は必要だろう。

余談
「鮭の卵」は、後日談がある。
その後の検討の結果、光速の15%と言う超高速に加速するのに、レーザー光が使用できる可能性があることが判った。
笹本祐一氏のSF小説「星のパイロット4」『ブルー・プラネット』のラストシーンで、マリオとスウの二人がラグランジュ2で見送っているのが、レーザー光で加速するバージョンの「鮭の卵」である。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

March 03, 2007

ロケット設計 CGI

E083誰でも簡単にロケットの設計を Web 上で行える CGI を作った。

ロケット設計 CGI <= ここをクリックしてリンク

ロケットの設計と言うと、物凄く複雑で、とても素人が手を出せるような事では無いと思うだろう。実際、本当のロケットを作るためには、細かい解析や計算と言った設計は大変な作業となる。

しかし、本当にロケットを作るなら兎も角、大雑把なロケットの設計には、そんな複雑な計算をする必要はない。

例えば、「こんなロケット欲しいなあ」とか「こんな宇宙船を打ち上げるには、どんなロケットが要るんだろう?」と夢想したり、漫画やSF小説のネタに使う程度なら、電卓で計算できる程度のもので十分だ。(それすら禄に計算していない漫画やSF小説だらけだ。例外は、あさりさんや野尻さん位のものか?)

また、「何で液体酸素+液体水素の組合せと言われて居るんだろう?」とか「それなのに何で液体酸素+液体水素の一段目エンジンを持つロケットが、性能の低い筈の固体ロケット・ブースターを持って居るんだ?」とか「月へアポロを送ったサターンVは、何故2段目と3段目は液体酸素+液体水素なのに、1段目は液体酸素+ケロシンなの?」とか言った疑問を持ったら、ちょっとした計算してみると理解し易い。「何で何時までたっても、飛行機のように、各段を分離せずに、1段だけで宇宙に行くロケットはできないの?」なんて思って居る人も同じだ。

ロケットの設計に必要な基本的な計算方法は、昔、コ・ツと言う偉い人が定式化してくれた。これを使えば、本当に電卓ていどの簡単な計算でロケットの設計ができる。
普段、私は表計算ソフトなどを使って計算しているのだが、これを Web 上で使えたら面白いだろうな・・と思ったのが、今回公開した CGI である。ついでに設計したイメージを SVG 画像で見れるように工夫した(SVG の画像が見れるのは、Firefox だけ)

もちろん、高度な計算はしていないので、そのまま本物のロケット製造には使えないが、ちょっと遊んでロケットへの理解を深めてくれれば、幸いである。

| | Comments (3) | TrackBack (0)

November 25, 2005

「学生の人工衛星」と「2005年のロケットボーイズ」

ss009先月末から今月初めにかけて、学生たちの人工衛星のイベントが続いた。

10月30日の日曜日は、衛星設計コンテストの最終審査会が都立航空高専で行われた。
今回は、高校生部門があって面白い。
色々なアイデアがあったのだが、傑作だったのが、宇宙用洗濯機のアイデアであった。

月面恒久基地とか火星探査とか、長期間の宇宙滞在を考えた場合、洗濯物は大きな問題となる。
宇宙で生きて行くのに必要なものと言うと、酸素や飲料水は誰でも思い付くのだが、実際は、生命維持に必要な酸素・飲料水・食料の合計の何倍もの質量の衛生水(洗顔とかシャワー用の水)や着替えが必要になる。
この間、スペースシャトルが久々に宇宙ステーションにドッキングして帰って来たが、2トンのゴミを持って帰ったということだ。詳細は調べて居ないが、ゴミのうちの相当量が「洗濯物」じゃないかと思う。

洗濯機のアイデア、面白いなあと思って居たら、アイデア賞だった。

でも、この「衛星設計コンテスト」、実際に作って宇宙に飛ばすのでは無く、アイデアや設計を競うだけなので、ちょっと寂しい。

11月5日の土曜日は、次期大学衛星設計評価会が東京工業大学で開催された。
これは、一昨年や、つい先日打ち上げられた東大や東工大の学生が作った1キログラムの人工衛星「キューブサット」の、次の世代の設計を評価する会だ。
以前の「キューブサット」や「カンサット(空き缶型衛星)」の設計評価会で、色々コメントしたら、川島レイさんに本に書かれてしまった。今回は大人しくしてようかと会場を見渡すと川島さんは来て居ないようなので、ほっとする。

開催された場所は、東工大だが、東工大の学生衛星だけじゃ無くて、東大や日大の学生さんが作った衛星の設計や製作状況報告もあって面白かった。
東大の学生さんからは、10月27日に打ち上がったばかりのキューブサット XI-V の運用報告もあった。

この設計評価会は、衛星設計コンテストと違って、本気で作って打上るつもりなんで、学生さんたちの意気込みも違う。
あっちこっち、設計・製作上問題になりそうな点を指摘したら、評価会終了後、学生さんがやって来て、色々聞かれてしまった。


それにしても、「衛星設計コンテスト」にしても、「次期大学衛星設計評価会」にしても、参加している大人(宇宙開発のプロ)側のメンバーって、ほとんど同じ。「衛星設計コンテスト」の審査委員や実行委員が「次期大学衛星設計評価会」で評価して居るってわけ。
(私の場合、「衛星設計コンテスト」では審査員じゃ無くて実行委員なんだが)
結局、若い人の手伝いをすすんでやろうと言う人は、それだけ少ないってわけ。

つくづく思うんだが、学生さんたちの「新しいアイデア」を、我々みたいな人間が審査したり評価しちゃいけないと思う。
私にしたって、自分じゃ、まだ若いつもりだし、先入観や常識に捕らわれない斬新なアイデアを考えたり評価して居ると思ってる。
だけど、何だかんだで、20年も、この世界で食って居るわけだから、それなりに固まってしまったところもある。
だから、私が審査なり評価する場合、良い意味でも悪い意味でも、どうしても20年の経験が基準になってしまう。
(繰り返すが、私は「衛星設計コンテスト」では審査員じゃ無くて実行委員)

学生たちの設計の技術的な「見落とし」等を指摘し、改善方法を教えることで、少しでも成功のためになる事を言っているうちは良い。
だが、若い人の柔軟な想像力のアイデアを、古い先入観念で「奇想天外で、あり得ない」とか「そんなもの役に立たない」と言ってしまう事もあるかもしれない。

模型飛行機を飛ばそう」の記事にも書いたが、「斬新なアイ