December 21, 2014

腕時計

E299<<12月26日 誤記修正>>
腕時計を買った。シチズンのソーラー電波時計の CB1070-56E である。(シチズンの場合、太陽電池で充電するタイプを「エコ・ドライブ」と呼ぶのだが、他社と横並びにするため、以降「ソーラー」と呼ばせてもらう)

それまで10年以上、機械式腕時計を使っていたのだが、だいぶ精度が悪くなってきた。オーバーホールをすると国産腕時計が軽く買えるほど高くつく(実際、今回購入した腕時計なら2つ分近い)し、どんなに良くなってもクォーツ時計より精度が良くなることは無い。
正しい時刻が知りたいなら、自動的に時刻を合わせる携帯電話やスマホを見れば良いと言われそうだし、実際、そうしていた(高級腕時計を付けているのに、携帯電話で時刻を確認する矛盾・・)
しかし、色々な作業をしていると、両手がふさがった状態で正しい時刻を見る必要があり、携帯電話では時刻を確認できない。また、作業で時計に傷が付いたり、水や油で汚れたり、強力な磁力を受ける可能性もある。

そこで、常に正しい時刻に合わせて、電池の交換の必要もないソーラー電波腕時計を買った。汚れても傷ついても気にならないように、と安いデジタル式の物を買ったのが、写真の左の時計だ。マルマンの MJW0009-RD1 と言うもので、税込み 3066円と言う格安品だ。マルマンと言う日本のブランドだが、調べてみると中身はドイツ、組み立ては中国らしい。
安物とは言え、取りあえず時間も正確だし、作業上の支障もない。しかし、デザインの評判が悪い。普段、そのまま職場に付けていったら、背広・ネクタイ姿に合わないと言うのだ。

そこで、背広・ネクタイにも合うソーラー電波腕時計を探した。
要件を整理すると、以下のようになる。
(1) ソーラー電波であること
(2) 国産であること
(3) モノつくりなどの作業時に使うのでドレッシーでないこと
(4) ある程度タフであること
(5) それでいて、背広・ネクタイ姿にも合うこと

ソーラー電波の理由は、GPS腕時計は実物を見て、まだまだ大きすぎ、技術が成熟しきっていないと思ったからだ。
2つ目の「国産であること」の理由だが、これは佐貫亦男著「道具の再発見」のP157に「若い時はIWCやオメガと言った海外ブランド腕時計を使ったが、やがて好んで国産時計を使うようになった」とあるのと同じ理由だ。この本を買って読んだ高校生だった当時、佐貫氏の気持ちが判らず、「海外ブランドの時計の方がいいじゃん」と思ったものだ。私も同じように30歳代で海外ブランドのクォーツ腕時計、40歳代で海外ブランドの機械式腕時計を使った結果、50歳を過ぎた頃から国産腕時計に戻りたくなった。

ここで、ブランドをセイコーとシチズンに絞った。
「国産ブランドなら、カシオもあるじゃないか?」と言われそうだが、今回はあえて外した。カシオと言えば、Gショックでデジタルだ。しかし、デジタルのGショックでは、背広・ネクタイに合わない。
Gショックがデザイン的に悪いと言っているわけではない。むしろ逆にGショックは機能をスタイルに具現化したカシオ・オリジナルの素晴らしいデザインだとさえ思っている。実際、海外ブランド時計を使っている間、最も最近買った国産時計はデジタルGショックで、作業用などに使っている。ただ、そのGショックはソーラーでも電波でも無いので時刻精度も高くなく、やはり背広・ネクタイには合わないので、普段は使っていない。
現在、カシオのGPS腕時計はアナログ式だが、やはりフル・デジタルのGショックのGPS腕時計を出して欲しい。GPSで測位したデータで、世界地図で現在位置を示した上で、その場所の時差に自動的に合わせるようになれば良いな。それで、Gショックのアイデンティティを保って、スマートなデザインになれば、次の時計は、それにしたい。
3番目の「ドレッシーではない」ことから、セイコーならクレドールやドルチェや、シチズンならエクシードやクロスシーと言ったラインナップは外れる。

さて、以上の要件だと、セイコーでもシチズンでも数が絞り切れない。そこで、次の要件を追加した。

(6) ストップウォッチ機能は不要で、シンプルなデザイン
(7) ワールドタイム機能は必要
(8) ケース・バンドはチタン製
(9) サファイアガラス

(8)と(9)は「ある程度タフであること」をブレークダウンしたものだ。
(6)だが、小さな針が沢山付いたストップウォッチは恰好良いかもしれないが、実際には使わない機能だ。今まで、アナログ式のストップウォッチ機能付き腕時計は2つ、デジタル式なら3つ所有したが、ストップウォッチ機能は、ほとんど使わない。使ってもカップラーメンのお湯を入れてからの時間を測るくらいだ。もし、本当にストップウォッチらしい使い方が必要なら、100円均一ショップでストップウォッチを買った方が良いと言う結論に達したので、シンプルなデザインを優先した。
(その他、ストップウォッチ機能の付いたクロノグラフ腕時計の考察については、前のコンテンツの「スチームパンクと工業デザイン」を参照のこと)

(7)のワールドタイム機能とは、海外旅行する時に、時計自体の計時を止めることなく時差を合わせる機能である。機械式腕時計の場合、ローレックスのGMTやエクスプローラー2が有名だ。しかし、私は、この機能を持った腕時計を所有したことがない。ソーラー電波腕時計の場合、日本以外の標準電波も受信できる腕時計には、この機能が付いている場合が多い。

さて、(1)~(9)の要件から、次の2つに絞り込まれた。
・セイコー スピリット SBTM205/207/209 (番号違いは色違い)
・シチズン アテッサ CB1070-56/A/E/L (最後のアルファベットは色違い)

最初のスピリットはカタログなどでワールドタイム機能はうたっていないものの、中身のキャリバー 7B24 は、日本・中国・アメリカの標準電波も受信でき、時差を入力すると、それに合わせて時刻を表示するので、ワールドタイム機能と同等と判断した。
セイコーの場合は、同じ 7B24 キャリバーを使っているブライツ SAGZ075/077(番号違いは色違い)も候補に残ったのだが、むしろ低価格モデルのスピリットの方がデザインがシンプルで好きなのでスピリットを候補とした。

シチズンは、キャリバー H149 は日本・中国・アメリカ・ドイツの標準電波の受信でき、ワールドタイム機能を持ち、ストップウォッチ機能などを持たない、シンプルなものだ。実は、腕時計を探し始めた10月~11月頃、H149 キャリバーを使った腕時計は、エクシードやクロスシーと言ったドレッシーなラインナップにしかなかった。このため、セイコーのスピリットに決まりかなと思っていたのだが、12月1日にスポーティモデルのアテッサに H149 を使った CB1070-56/A/E/L が追加されたため、急に候補にあがった。

さて、セイコー スピリットは定価6万円 実売45,360円、シチズン アテッサは定価5万円 実売37,800円だ。最終的にシチズン アテッサを選んだ決め手になったのは価格ではない。最近のセイコーとシチズンでは、デザイン的にシチズンの方が全体的に好きで、スピリットとアテッサも実物を見た上で、デザインの好みでアテッサを選んだ。色は文字盤が黒で、針が白と言う最もコントラストがはっきりして読みやすいものを選んだ。
これが写真の右の時計だ。

結果的に12月1日に発売されたばかりのモデルを、僅か半月で購入することになった。最初は、2倍くらいの価格を考えていたのだが、意外と安くてすんだ。
今まで使っていた機械式腕時計の10分の1くらいの価格だもんなあ。それでも格安のソーラー電波デジタル腕時計の10倍の価格。

私のような「腕時好き」の人間が選んだ割に、趣味性が少なく、機能一辺倒のつまらない時計に思えるかも知れない。しかし、確かに機能最優先ではあるが、それなりにこだわって選んだ時計であることは、以上の事から判ってもらえると思う。
まだ、使い始めて一週間も経っていないので、全てが判ったわけではない。が、今のところ文句は無い。電波の受信感度も良いようで、格安のデジタル式ソーラー電波腕時計では受信できない場所でも受信ミスが無い。

ところで余談。
今回、購入したモデルの発売前の10月~11月頃、キャリバー H149 の入った腕時計がエクシードやクロスシー等ドレッシーモデルに限られていたので、ツイッターに「H149 の入ったカジュアル・スポーティなモデルが欲しい。無いならクロスシーを改造してやろうか」と書き込んでいた。
そうしたら、12月1日に今回購入したモデルが発売。シチズンが私のツイッターの書き込みを見て、このモデルを作ったのかと思っちゃった・・・
でも、実際に購入したヨドバシに行って理由が判った。
時計売り場は、アジア系の外国から来た観光客だらけだ。私には、その人達が何処の国の人かの区別は付かないのだが、その中には中国人も当然多いだろう。中国から来た観光客なら中国の標準電波も受信できるモデルが欲しいはずだ。もちろん、ドレッシーなモデルが欲しいならエクシードやクロスシーで良いだろうが、ストップウォッチなど余計な機能の無いシンプルかつスポーティモデルを欲しいと言う中国観光客も多かった筈だ。
そのような人達をターゲットにアテッサ CB1070-56/A/E/L が作られたんだろうなあ・・・と納得した。

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December 13, 2014

スチームパンクと工業デザイン

E298図書館からスチームパンクの本など借りてきて読んでいたりする。私のような技術屋にとって、機能を伴わない装飾に過ぎないスチームパンクは、本来相容れないものである。しかし、一方ではスチームパンク的装飾を面白いと思う自分も居るのも無視できない。そこで、スチームパンクを論理的に分析して見よう。
スチームパンクはサブカルチャーの一種で、19世紀の英国をモチーフにしたデザインを多用する。衣服のファッションならメイド服などのゴスロリが当てはまる。衣服のファッションのみならず、アクセサリーや機械・建築物、漫画やアニメ・映画などにも取り入れられており、ジブリ作品では「天空の城ラピュタ」や「ハウルの動く城」が、これにあたる。スチームパンクはサブカルチャーとは言え、決してマイナーとは言い切れない勢力を持つ。冒頭のイラストはラピュタの飛行服っぽく描いてみた。
既に述べたように、スチームパンクは19世紀の英国つまりシャーロックホームズが活躍していた時代をモチーフにしているが、21世紀の現代、なぜそんな古い時代のデザインを真似るのだろう。ちなみに19世紀の英国の建築様式はゴシックで、そのためメイド服などもゴシックと呼ばれていると思ったら大間違い。本来、ゴシック様式とは更に古い12世紀にフランスで流行したものだ。19世紀の英国では外観だけをゴシック様式に似せて内部は近代的な鉄骨トラス構造を持つ建築様式が流行した。これは本来のゴシックと区別するためにゴシックリバイバルと呼ぶのが正しい。スチームパンクは19世紀の英国を真似ているが、その19世紀の英国では更に古い12世紀を真似るのが流行していたとはややっこしいことこの上ない。
さて、本題に戻るが、スチームパンクでは、革や真鍮を多用し、歯車や鋲など本来は機能部品であったものを装飾として使うことが多い。なお、イラストにも描いたが、その中には飛行機用ゴーグルや真空管なども含まれる。実はこれらは20世紀になってからのもので時代考証が間違っているのだが、スチームパンクでは細かいことは気にしない。また、同じくイラストに描いたように蒸気機関を使ったロボットも実際には動くはずもなく、単なるアクセサリーの一種だ。こう言うのは、動くところを想像することで補うらしい。
まあ、ここまで書いて判ると思うけど、スチームパンクは一見機能しそうだけど機能しない歯車とか蒸気機関とか真空管などの部品を装飾品とするファッションとかデザインである。そして、その機能しそうな部品が本当に機能していたのは、19世紀の昔、つまり旧技術のものと言うわけだ。
E2982機能するかしないか、それを飾りとして見せるか隠すか、その技術が新しいのか旧いものか、3次元に分類したものを、2つ目のイラストに示した。なお、このイラストは技術的側面でのみ分類しており、例えば「花柄模様」と言った純粋な装飾は考慮に入れていない。
スチームパンクは「機能しない、旧技術、隠さない」ので「B1」の分類になる。
最新テクノロジーの流行は、iPhoneを代表とするように「機能する、新技術、機能部品を隠す」の「A4」の分類になる。「A4」の分類には、iPhoneの他には、プリウスなどのハイブリッドカーがある。iPhoneの場合は意図的に誰でも簡単に分かるようにと言う配慮から機能部品を隠しているが、ハイブリッドカーは、空気抵抗を減らし、燃費を良くするためにカバーが付いていると言う違いはあるが、結果的には最新テクノロジーは「隠す」方向にある。
スチームパンクと同じような旧い技術でも実際に機能する「B2」の分類もある。代表的なものは機械式腕時計で、特にギア部分やテンプ(調速機と脱進機)を見えるようにしているものもある。最も顕著な例はトゥールビヨンで、これが付いている腕時計は1千万以上の高価なものも珍しくない。しかし、どんなに良い機械式時計でも精度は、ずっと低価格なクォーツ時計よりも悪く、ましてや電波時計やGPS時計には及ぶべくもない。精度が悪い、性能が低いからと言って、魅力がないわけでは無いことは、ここ10年以上に渡り機械式腕時計を使っている私自身も判っている。同じ「B2」の分類には真空管式アンプや、保存鉄道の蒸気機関車などがある。一般的にはレトロとか懐古趣味とかノスタルジックとか呼ばれるものだ。
その他の分類で、機能しないものを隠しているA3やB3、旧い技術を隠しているB4は意味がないので、ここでは触れない。
機能しない最新技術風のものを見せる「A1」の分類は、今は余り存在しないが、かつてはたくさんあった。例えば、1930年代の流線形をした蒸気機関車とか、1960年代のエリアルール形状をしたスポーツカー、1980年代のリトラクタブルライトなどあり、いずれも当時の先端技術である航空機、特に戦闘機の形状を真似たものである。もちろん、航空機とは比べ物になら無いくらいの速度では、空気抵抗を軽減する機能は役に立たず、装飾以上の意味はあまり持たなかった。最近、あまり「A1」の分類に相当するものが無いのは、実は元ネタになる「A2」の分類自体が少数であるからかもしれない。
問題は、「最新技術で機能する部品を見せる」の「A2」の分類だが、これは最近ほとんどない。強いて言えば「ダイソンの掃除機」なのだが、この場合、見せているのは機能部品じゃなくてゴミだろう・・と言う話もある。
さて、色々分類していると、イラストのような分類に適合しないものもあることに気付いた。最新型のGPS腕時計だ。中身の技術は最新だし当然機能もする。しかし、それを見ることはできない。一方、外観は小さい文字盤が幾つも付いたクロノグラフ風だ。このクロノグラフは、1960年代の超音速戦闘機の操縦席の計器を思わせるデザイン。しかし、現在の実際の戦闘機はスクリーンになって居てアナログな計器ではなくなっている。すなわち、このGPS腕時計は、内部機構は「A4」の分類、外観は「B2]の分類と、2つの分類の複合になってしまっている。同じよな物に最新のデジタル一眼レフカメラでありながら、30年程前のマニュアルカメラの外観をまとったニコンDFなどがある。

話が横に逸れてしまったが、本題の「A2」の分類が何故少ないかと言う問題に話題を戻そう。この「A2」の分類は、今でこそ少数派だが、かつては多数派だった。「A1」の分類よりも多かったと言っても過言では無かろう。
かつての「A2」の分類の典型は蒸気機関車だろう。最近のイベント列車で細々と走る蒸気機関車の事では無い。19世紀半ばから20世紀前半の蒸気機関車こそが時代の先端だった頃の話だ。蒸気機関車はピストンこそ直接は見えないが、コンロッドやクランクが外部から見え、その動きから仕組みを推測することができた。また、もくもくと上がる煙や水蒸気が力の源だと判る。家庭の中でも、時計があった。昔の柱時計は振子型が主流で、同様に動きが見え、そこから仕組みを推測することができた。置時計や腕時計はテンプ(調速機と脱進機)式が主流で、外部からは見えないが、カチカチと音がして想像をかきたてる。蒸気機関車に対する時計の最大のアドバンテージは一般の人でも触ることができることだ。柱時計でも置時計でも毎日のようにゼンマイを巻かないといけない。その上、分解して中の仕組みを探る事ができる。中年以上であれば、子供の頃に壊れた時計を分解して、中から沢山の歯車が出てきて吃驚し、元に戻せなかった経験を持つ人も多いだろう。

では、何故かつては多数派だった「A2」が姿を消したのか?
考えてみると幾つかの理由がある。
一つ目の理由は電子化である。かつては歯車が機能実現の技術だったものが、多くは電子部品に置き換わっている。時計が最も良い例だ。電子は目に見えず、その動きを見て、仕組みを推測することもできない。だから、見せる意味もない。真空管は例外的にヒーターの光が見えるが、これは真空管の機能とは本来関係ないもので、また、真空管そのものが既に旧い技術に属する。
二つ目の理由は空気抵抗だ。既出のプリウスなどのハイブリッドカーがあたる。ただし、ハイブリッドカーは中身が半分電子機器になっているので、一つ目の理由も入っている。二つの理由があると考察には向かないので、この先はハイブリッドカーではなく、オートバイを例に分析させてもらう。オートバイは未だハイブリッドや電動化は少数で、大多数が旧来からのガソリンエンジンだ。もちろん、キャブレターが電子制御に置き換わる等の電子化も行われているが、肝心要のエンジンは昔ながらのピストン式のガソリンエンジンだ。30年程前まで、この最大の機能部品であるエンジンをむき出しにするのが、オートバイのデザインだった。エンジンを隠していたのは、スクーターだけで、スーパーカブですらエンジンはむき出しだ。それが、スピードを出すための空気抵抗対策として、カウルを付けるようになった。それでも最初の頃はエンジンが外から見えていた。空冷だった事もあるかもしれない。しかし、時が経つと、水冷化と共に外部からエンジンが見えないデザインが主流になってきた。今やオートバイだと言うのにスクーターのようなデザインのバイクもある。驚くべきことに、最新のオートバイは、カウルの無いネイキッドと言う種類にも関わらず、エンジンが外部から良く見えないデザインのものも多い。むしろ、エンジンが外部から良く見えるのは、ハーレーのような懐古趣味のバイクか、基本設計の古い物だけになってきている。
ガソリン・エンジンのオートバイ、それも空気抵抗を重視していないネイキッド・バイクですら、最大の機能要素であるエンジンを余り目立たないデザインにしているのは、前述の一つ目の理由でも二つ目の理由も当てはまらない。別の理由があるはずだ。

三つ目の「A2」が姿を消した理由は、デザイン思想だ。「良い技術は表に出ず、縁の下の力持ちに徹する」と言う思想だ。「複雑な機構が見えるような工業製品は、メカが苦手の女子供や老人に受け入れられず、普及せず、売れない」と言いかえることもできる。30年以上前の学生時代に、このように教えられたし、現在の大半の技術者も同じような教育を受けたはずだ。この思想の最も典型的な例が iPhone であり、エンジンを隠したオートバイも、この思想から生まれたものだ。
しかし、長いこと信じていた思想に疑問が湧いてきた。この思想、事実だろうか?
先ほどは、さらりと書いたが、「メカが苦手の女子供や老人」の部分には、差別的な表現が含まれている。私の直接知っている女性や子供・高齢者でメカが得意な人も多々いる。もちろん、女性や子供・高齢者でメカが苦手な人も居るが、その割合は若い男性と比べて有意な差があるほどではない。
そもそも「複雑な機構が見えるような工業製品は、売れない」は真実なのか?
本当にそうなら、スチームパンクのような分類「B1」や懐古主義の分類「B2」は成立しないことになる。「B1」や「B2」がある一定の需要がある以上、「複雑な機構が見えるような工業製品」も売れるのである。
「複雑な機構が見えるような工業製品が売れるのは、マニアに限られ、多数に売れることは無い」と反論されそうだ。だが、決定的な反証を示そう。それなら、何故、「A2」分類に属するダイソンの掃除機がヒットを続けていられるのか?
ダイソン以前の国産の掃除機は皆「A4」つまり内部の仕組みを隠すデザインだった。しかし、ダイソンが中身を見える掃除機を出したら、大ヒット。つまり、中身の見える工業製品はマニアだけでは無く、一般の人にも売れるのである。同じことが、ロボット掃除機ルンバにも言える。
これは掃除機だけでは無く、きっと洗濯機、冷蔵庫、炊飯器など、他の家庭用電化製品も中の仕組みが見えるようなデザインで売れるようなものがあるに違いない。もし、掃除機だけが特別で、ほかの電化製品にはそんなデザインは無いと言うなら想像力が貧困と言うしかない。
では、「複雑な機構が見えるような工業製品は、売れない」が真実でないとしたら、なぜ信じられるようになったのだろう。当の技術者にとって、このデザイン思想を信じることに何のメリットも無い。自分の技術力を誇示する欲求を抑えつけられるだけでなく、技術の良さを理解されなくなり、結果、技術者全体の地位の低下に繋がっている。実際、最近の理系離れやモノ作り力の低下は、この技術者の地位低下が原因の一つだと思う。
「複雑な機構が見えるような工業製品は、売れない」が信じられる事で得をするのは、技術に理解の無い経営者、商品企画部門、広報部門と営業である。こう言う人たちに踊らされて技術者は自分の欲求を抑制し、自分の地位を落とすことになったのかも知れない。
このように仮定すると、一つ疑問の起きる。iPhoneを作ったジョブズは「理解の無い経営者」だったのだろうか? ジョブズに関する限り「理解の無い経営者」とは思えない。もしかしたらジョブズは全て判った上で、iPhoneをデザインしたのかもしれない。「複雑な機構が見えるような工業製品は、売れない」が真実でないとしても「複雑な機構が見えない工業製品は、売れない」ではない。要は「複雑な機構が見えるか見えないかは、売れるか売れないか」とは相関関係が無いだけだ。ジョブズはiPhoneの性格付けをする時に「複雑な機構が見えない」デザインを選択し、それを徹底しただけかもしれない。
こう考えると、経営不振の日本企業が技術畑の経営者をおいても、つまらない製品を作り続け、経営再建できない理由にも繋がる。企業のトップに技術に理解のある経営者を置いても、その人が「複雑な機構が見えるような工業製品は、売れない」と言う思想を信じているなら、経営者が非技術畑出身と同じく「複雑な機構が見えない」製品を作り続けることだろうからだ。

世の技術者たちを抑制を取り払い、技術を主張しよう。
技術への回帰を意味して、「テクノロジー・ルネサンス」と名付けよう(この名称、今、考えた)
どんなデザインが「テクノロジー・ルネサンス」なのか、具体的に示すのは難しい。しかし、勘違いする人も居るかと思うので、以下に「テクノロジー・ルネサンス」では無いと言う例を示そう。

「テクノロジー・ルネサンスでは無い例」
その1)他の分野の形状だけ真似たもの
 分類「A1」に属する。昔の流線形蒸気機関車など。
 宇宙ステーションに翼の飾りを付けるような類。
 機能しないものを見せるのは単なる飾りだ。記号・シンボルとも言う。
その2)より高性能のものの機能は形だけ入れたもの
 これも分類「A1」に属する。
 昔の車のリトラクタブルライト。
その3)機能はしても、旧技術に属するもの
 これは分類「B2」。機械式時計や真空管アンプ。
 ちゃんと技術的に成立して機能しても、新技術でないとテクノロジー・ルネサンスでは無い
その4)最新技術なのに、旧技術の外観を借りている。
 先のGPS腕時計やニコンDF、ミラーレス一眼デジカメなのにペンタプリズムが付いているもの全般。

洗濯機、冷蔵庫、炊飯器などの家電にも「テクノロジー・ルネサンス」を当てはめるられると書いたが、たぶん簡単なことではない。真に技術・機能を見たし、それを見せて受け入れられるのは、簡単な技術センスだけではだめで、アーティストであるインダストリアルデザイナーとの協力が必要に違いない。
もう一度言う。世の技術者たちを抑制を取り払い、技術を主張しよう。
「テクノロジー・ルネサンス」

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September 22, 2014

レンタルバイクに乗った

E2969月12日は夏休みの消化も兼ねて、レンタルバイクを借りて、一日走り回っていた。
若い時、独身時代には全部で都合5台もバイクを所有していたのだが、27年も乗っていなかった。
今回借りたバイクはホンダVTR。250ccのバイクで、1998年発売からマイナーチェンジを繰り返すも、基本的に同一設計で16年も生産が続け垂れているロングセラーバイクだ。街で見かけるバイク便の多くが、このVTRだ。正確な統計結果は見たことないが、私が見る限りバイク便の7割以上はVTRだ。十分なパワーを持ちながら、小柄・スリムで取り回しが良いので、バイク便のようにビジネスの世界で使われている。スーパーカブに次いでビジネスユースが多いバイクじゃないかな。ロングセラーの上、ビジネスユースが多いので、信頼性も実績がある。私は小柄なので、250ccで取り回しの良いVTRが良いと考えたわけ。

27年ぶりのバイク、上手く運転できるのか?
最近四輪車ですらAT車しか運転していないので、バイクのクラッチ・ギアチェンジが上手くできるかが特に不安だった。
しかし、乗ってしまえば、あら不思議。身体が覚えているようで、27年ぶりなのに左手(クラッチ)と左足(ギア)は無意識のうちにギアチェンジしてくれる。むしろ大変だったのは止まった状態や微速でのバイクの取り回しだった。これは完全に体力が低下したから。筋力も瞬発力も柔軟性も持久性も27年前から大幅に落ちている。

12日は秋晴れの好天で、その中、郊外の空いた道を走るのは気持ちが良い。しかし、夕方になって、バイクを返しにレンタルバイク屋に戻るときの街中は夕方の渋滞が始まっていて、その上何の事件があったのかパトカーが十台くらい道に止まっていたので、止まったり動いたりのノロノロ状態で、クラッチを握る左手が痛くなるほどだった。

で、この日は一般道ばかりを91㎞走った。91㎞と言うと普段バイクに乗り慣れている人なら大したことない距離だが、27年ぶりの50歳過ぎのオジサンには体力的にきつかった。
しかし、今回借りたVTRは乗りやすかった。V型二気筒エンジンのバイクに乗るのは初めてなのだが、排気音が不均等爆(だよね?)なので少しドクッドクッと言うだけで、振動は僅かで、むしろ心地良いくらいだ。昔乗っていた単気筒のバイクの振動とは大違い。
また、チェンジミスで、ギアを高すぎたり低すぎたりしても、変にエンジンブレーキがかかったり、ノッキングしたりストールしたりしない。突風に吹かれても、道路が荒れていても、不整地(道路工事で舗装を剥がしている箇所があった)でも、走りが乱れたりはしない。
もちろん、今回は一般道しか走っていないので、高速道路での高速走行は試してはいない。それでも、突風に吹かれたり、道路が荒れてれば、昔のバイクだと、バイク全体が跳ねたり、タイヤが滑ったりしたもんだが。
やっぱり最近のバイクは良くできている。16年前の設計とは言え、マイナーチェンジを繰り返しているので、最新のバイクと呼んでよいだろう。私の言う「昔のバイク」は30年前のバイクなので、最近のバイクは良くなっている。

バイクを乗り終えて、怪我も事故もなかったのに、身体中筋肉痛だらけ。一番痛いのは左手(クラッチ)なのだが、右手(前ブレーキ)、両上腕(ハンドル持つのに力が入っている?)等など。今でも週に2回か3回はジムに通っているのだが、左手の握力とかのトレーニングしていなかったからなあ。
次の日以降、腰(背筋)や肩などの筋肉痛に。左足の向こうずねの筋肉痛には笑った。これって、シフトアップに使う筋肉だが、この筋肉って、バイクのシフトアップ以外に使いようがないもんなあ。

さて、筋肉痛は残っているものの、バイク走行自体は楽しかった。

ところで、ブログを更新したのは、久しぶり。
実は、メインPCを、タブレットPCに変えたため、お絵かきソフトに気に入ったものがなかったのが、原因。以前は、富士通のLOOX U/C30と言うノートパソコンにUbuntuを入れ、GIMPで絵を描いていた。このノートパソコンはタッチパネル入力があった。古いパソコンなので静電式でもなければマルチタッチでもない。そのため、指では無くてスタイラスと言うペンを使わなければ入力できない形式だった。しかし、逆にスタイラス入力のおかげで絵を描くのには向いていた。
現在は、Miix 2 8 と言う Windows8.1のタブレットPC。静電式のマルチタッチ対応のタッチ入力なのだが、これは逆にお絵かきには向いていない。Fresh Paint と言うタッチ入力対応のペイントソフトも試したが、上手く行かない。
結局、大昔に戻って、Windows用のGIMPを使う。これに、やはり大昔に買った WACOM のWACOM intuos2と言う古いタブレットをWindows8.1のタブレットPCに接続した。スマホやタブレットPC用のスタイラスも使ってみたけど、満族できなかったので、本当のタブレットにしたと言う訳。このタブレット、古い機種なので、Win8は、サポート外なのだが、Windows7用のドライバをインストール。無理かと思ったが、今のところ、問題無く動いている。細かいことを言うとタブレットのペンを一カ所にちょっと長い時間止めておくと、右クリックと誤認識することくらいだが、これは慣れれば回避できる。
GIMPとタブレットと言う大昔のコンビを復活させたら、絵は簡単に描けた。これからは、もう少し頻繁にブログを更新しよう。

さて、27年ぶりにバイクを乗ったのだが、意外なことに満足しきれていない。別にバイクに乗ることが面白くなかった訳ではない。
当たり前だが、27年前まで、私は日常的にバイクに乗っていたわけで、今回、久しぶりに乗っても懐かしいと思うところはあっても、未知の経験をしたわけではない。もちろん、体力が落ちたとか、反射神経が鈍くなったというのはあるけど、そう言う発見は面白くないし。
だから、今度は、全く経験したことが無いことをやりたい。

次はヨットに乗りたいな。初めての人にも教えてくれて、ヨットをレンタルしてくれるところって無いかなあ・・・?

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July 14, 2013

ファイナルオーディオデザインのHeaven IVを買った

E281先週末、秋葉原に行って、イヤホンを買った。
今までは、SONY MDR-EX310SL を使っていた。これはこれで、実売5000円以下のイヤホンとしては申し分ない性能なのだが、自作のオーディオプレーヤーが熟成してきたため、完全に力不足になったのだ。
そこで、ひとクラス(ふたクラス?)上の1万〜2万円台のイヤホンを買うことにした。まずは、ヨドバシカメラで片っ端から試聴する。私の作ったオーディオプレーヤーは、どうもマルチドライブのバランスドアーマチュア(BA)型とは相性が悪いのか、高音と低音の繋ぎ目で音が乱れる。また、SHUREのBAは、シングルドライブであっても相性が悪いようで、早々にSHUREが候補から外れる。

最後まで候補に残ったのは、ゼンハイザーのIE60とファイナルオーディオデザインのHeaven IV。
IE60は、今まで使っていたEX310SLと同じくダイナミック型。低音が得意なダイナミック型だけあって低音が効くし、それだけでなく、中音以上もシャキッとしている。
対して、Heaven IVは、本来低音が苦手なシングルドライブのBAと言う形式だが、その割には低音が効く。ただし、低音が効くと言っても、あくまでもBAシングルの割には、と言う断り書きが付いていての話であり、聞き比べると、IE60どころかEX310SLよりも低音が効かない。その代わり、中音から高音が綺麗に出る。
価格はIE60の方が3000円高い。
考えに考えた挙句、Heaven IVを買うことにした。理由は、IE60は今まで使っていたEX310SLと同じダイナミック型であり、方向性として、その延長線上にあり、今までと変化が少ない。
一方、Heaven IVはBAと言う全く違う形式で、音の性質もダイナミック型とは全く違った方向性を持っている。また、私の自作オーディオプレーヤーは、今まで使っていたイヤホンに合わせたためか、ダイナミック型イヤホンは上手く鳴らすことができるが、BA型イヤホンが苦手な傾向にあり、それを直すためにも、BA型を購入することにした。
実は、Heaven IVも試聴の段階で、高音領域に割れたような音が入る傾向にあった。帰宅後、ヘッドホンアンプの出力部に22Ωの抵抗を入れたところ、見違えるように改善した。インピーダンスのアンマッチングにより、イヤホンからアンプへ変な反射があり、アンプで異常な帰還がかかっていた可能性が高い。さらに超高音領域が出すぎているように思えるので、LPFの特性を変更した。これも効果があった。
まだ、エージングが十分に済んでいないが、中高音域の伸びは流石はBAだ。ハイレゾ音源で聞き比べると、今までEX310SLで聞いていてサビの女性ボーカルはソロだと思っていたのが、Heaven IVで聞くと前半ソロの後そっとコーラスが加わるのが判った。低音はEX310SLには及ばないものの満足できないほどではない。

ところで、私がファイナルオーディオデザインのイヤホンを買ったと言うと、首をかしげる人も居るかも知れない。ファイナルオーディオデザインと言う日本のマイナーメーカーの存在自体知らない人が大多数だろうが、存在を知っている人なら私のキャラと合わないと思うに違いない。
実は、最初、私自身ファイナルオーディオデザインの存在自体知らなった。何の予備知識もないまま、ヨドバシカメラで試聴した時に、ゼンハイザーのIE80/IE60とファイナルオーディオデザインのHeaven IVがベストと思った。まあ、この時点ではゼンハイザーやSHUREも知らなかった。つまり、何の先入観もない状態で聞き比べたわけだ。
帰宅後、ファイナルオーディオデザインをネットで調べて驚いた。真空管アンプや異様な材質を使った変なデザインのイヤホンなどを作っているマニア向けのマイナーメーカーだった。私はオカルト的なオーディオマニアが嫌いで、スピーカーケーブル等に材質に凝るような事には疑問視している。つまり、ファイナルオーディオデザインは、私の嫌っているオカルト的なオーディオマニアを対象としているメーカーのようなのだ。実際、ファイナルオーディオデザインのホームページの製品ラインナップを見ても、私が欲しいと思うものは一つもなかった、Heaven IVを除いては。
ファイナルオーディオデザインのWeb上での調査後、再び、ヨドバシカメラでHeaven IVの試聴をしてみた。こんな変なメーカーのイヤホンを良いと思うなど、耳が曇っているじゃないかと疑ったからだ。しかし、何度となく、試聴を繰り返しても結論は同じ。Heaven IVは、この価格領域ではIE60と並んで、音が良い。先入観のない状態で、耳だけで選んだのだから、純粋に音は一番良いんだろう。逆に予備知識のある状態で試聴したら、ファイナルオーディオデザインの製品は選ばなかったのかも知れない。
Heaven IVは非常に素直な設計で、ファイナルオーディオデザインの製品の中では特異な存在であり、ファイナルオーディオデザインの製品とは思えないほどだ。同じHeavenシリーズでも Heaven Vは、ファイナルオーディオデザインの製品らしく材質が真鍮と耳を疑うような素材を使っている。Heaven Vも試聴してみたが、明らかに音が劣化している。Heaven IVの高剛性ステンレス構体を剛性の弱い真鍮に変えているから当たり前だ。これで、Heaven IVよりも1万円も高いのだから、正気を疑いたくなる。冗談ではなく、本当に、Heaven IVはファイナルオーディオデザインの製品ではないと思っている。他メーカーのOEMなのではないだろうか?

とにかく、Heaven IVは、異端のファイナルオーディオデザインの中では、異端の存在だ。異端の異端だから、逆に中央に戻ってきているのだが・・
結局、考えに考えた挙句、自分の耳を信じる事にした。確かに変なメーカーの製品かも知れないが、Heaven IVは確かに偏見なく良い音に聞こえたのだから。

もう一つ、読んでいる方々が首をかしげることがあるかも知れない。私の事を「良い音で音楽が聞きたいのか、それとも良い音を出したいだけなのか?」と言う疑問だ。既に述べたようにHeaven IV購入後、アンプ出力のインピーダンスの調整を行ったり、LPFの特性を変更している。しかし、ゼンハイザーのIE60ならば、そんな調整をしなくても、最初から良い音が出ている。音楽を楽しむだけなら、余計な苦労をせずに、ゼンハイザーのIE60を買ったほうが早い。
確かに私は音楽を聴くより、BA型と言う新しいタイプのイヤホンで良い音を出す事に夢中になって、本来の音楽を楽しむことが疎かになっている。そもそも、ハイレゾ音源で聞きたい曲もないのに、ハイレゾに対応するようなイヤホンを買う事自体、目的と手段を混同した間違いだ。まあ、これがマニアがマニアたる所以であり、ファイナルオーディオデザインの事を云々言える立場ではない。

と言うわけで、マニア的な視点から言うと、当面の目標は、シングルBAのHeaven IVで良い音を出し切ること、そして、その次は、SHUREを代表とするマルチドライブBA型イヤホンで良い音が出るように挑戦することだ。また、その先にもゼンハイザーのHD800のようなインピーダンスの高いヘッドホンのドライブなどなど、課題は山積みである。

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March 29, 2013

3Dプリンタで作りたいもの

E2761Twitterでも呟いたが、チタンなどの金属対応の3Dプリンターがあるらしい。チタンの微細な粒子を溶融することで3D形状を作ると言うものだ。鍛造並みの強度があるとのふれこみだが、本当に鍛造並みかは判らないが、それなりに強度があるなら、実用的なものも作れそうだ。
3Dプリンタが使えるなら、従来の加工法だと作れなかったものを作りたい。そう思ったのが、『ハイパーハニカム』と私が勝手に呼んでいる三次元に拡張したハニカム構造だ。
『ハイパーハニカム』は、ずいぶん昔のブログでも紹介したボロノイ・セルと言う菱形十二面体を重ねあわせた構造だ。一般的なハニカム構造は蜂の巣のように六角形が二次元的に広がっているが、ハイパーハニカムは六角形が三次元に三方向ならぬ四方向に広がった構造だ(広がる方向が4つなのは、方向が直行しておらず、正四面体の4つの面と並行な方向に広がっていると思ってくだされ)

E2762で、ハイパーハニカムを画像にしたのが、冒頭の赤い画像。OpenGLを使っているんだが、いまいち、判りにくいね。2枚目はボロノイ・セルを一つだけ取り出したもの。各面に穴が開いているのは、3Dプリンタの場合、加工後、あまった金属粒子を取り除く必要があるからだ。
このハイパーハニカム構造の特徴は次の通り。
・ボロノイ・セルは球の最密充填と同じ配置
・頂点はダイヤモンド結晶の炭素と同じ配置
なんか、これを聞くと構造的には強そうと思えるね。
もう一つ考えたのが青い画像。これは、最密充填と同じにジョイント部を置いてトラス構造を作ったもの。これを勝手に『ハイパートラス』と呼ぼう。次の画像がジョイント部を4つ組み合わせて正四面体にした部分を取り出したもの。よく見てもらうと判るかも知れないが、ジョイント部はボロノイ・セルになっている。

E2763ハイパートラスの特徴は言うまでもなく、
・頂点は球の最密充填と同じ配置
である。

ハイパーハニカム、ハイパートラスともに従来工法では作りにくい。だから、3Dプリンタで作りたいのだ(厳密に言うと、ハイパートラスは従来工法でも制作できる。ハイパーハニカムも無理すれば従来工法で作れないことはないが、とっても面倒)

さて、ハイパーハニカムとハイパートラスの最大の違いは、強度を面でとっているか、ビームの圧縮・張力だけで取っているかの違いだ。
赤いハイパーハニカムの場合、各頂点をボールジョイントにしてビームで結合する形式にすると簡単に潰れてしまう。格納展開と言う使い方も考えられるが、構造体として使うには、面が強度を持つというパネル構造にする必要がある。
一方、青いハイパートラスは各ビームの圧縮・張力だけで構造強度を保てる。形状的には少し変わっているが、実は従来の立方格子に斜めのビームを入れた構造とトポロジー的には等価である。

E2764もう一つの違いは、赤いハイパーハニカムは、どの構造メンバーもあらゆる方向に一直線上に並んでいないと言うことだ。これに対し、青いハイパートラスは6方向(正四面体の各辺方向)にジョイントとビームが一直線上に並ぶ。
仮に、極めて弾性率が高く圧縮力に対して縮まない理想的な構造材料でハイパートラスを作った場合。ジョイントとビームが一直線上に並んだ両端の各1点に力を加えた場合、その一直線に並んだ構造に力が集中し、他の構造体に力が分散することはない。
現実には、全く縮まない材質など存在しないので、縮んだ事により力は分散される。が、これは裏を返せば、力の分散は材料の弾性に依存すると言うことだ。
これに対し、ハイパーハニカムは弾性によらず力が分散する。
この力の分散は、どちらが良いか良く判らない。

とにかく、今まで作りたくても作れなかったハイパーハニカムのような構造を作ってみて、特性を調べてみたいものである。

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August 26, 2012

ペットボトルロケットを飛ばした

E2641昨日、ロケットを打ち上げてきた。と言ってもペットボトルロケット。
近くの比較的大きな公園に行くと、あてにしていた大広場が除染作業で立ち入り禁止に・・・仕方なく同じ公園内の小さめの広場で打上げ。
奇しくも数年前に浅利さんとペットボトルロケットを打ち上げたのと全く同じ場所での打上げとなった。

E2643燃料充填しようと水道を探すが、元々あてにしていたトイレは除染で立入禁止区域の中。
仕方が無いので、飲むために持って行っていた水を入れて、発射準備。
以前打ち上げた時は、段ボール箱の発射台と単なるゴム栓だったが、今回は市販の発射台なので、レバーを引いて打上げタイミングを取れる。
 
 

E26461人でカウントダウンして、デジカメのシャッターボタンと共にレバーを引く。
当たり前だが、発射台の後方に居ると水をかぶる。カメラ的にはベストポジションなのだが。
まあ、真夏だから水かぶっても気にならないけど。
ロケットは予定通り(?)不安定な飛行。
 
 

E2647左の写真は、コンデジの連写モードで撮った時の上の写真の次のコマ。
向こうの方に小さくロケットが真っ逆さまに落ちているのが一応撮れては居る。が、肝心の上昇タイミングを逃している。コンデジの1秒1.2枚の連写では難しい。
最初ワンショットモードだったので、この時は完全にタイミングを逃した。2回目・3回目は連写モードで撮ったのだが、この2枚の写真がやっと。浅利さんのD3Sの1秒11枚連写が羨ましい。

E2645再度打上げたいので、公園内を探すと水飲み場を発見。
しかし、垂直に水が噴射されるタイプの水飲み場なので、ペットボトルに水を入れるのに、9割方が無駄になり、時間がかかった。
3回目の打上げの時は、もう一度公園内を探して普通の水道タイプの手洗い場を見つけて、そこで燃料充填した。

E2642今回のペットボトルロケットは、わざと非対称的に尾翼を配置したのだが、非対称にするだけで何でこんなに見た目不安定になるのかな?
見た目だけじゃなくて飛行も不安定だったのは、目で見て尾翼を調整したからもあるのだが、むしろ重心が後ろ過ぎたためだが。
 
 

E2644結局、今日は3回の打上げ。
まあ、今日の打上げは、打ち上げ場所が適当で人に危険や迷惑がないか、とか燃料充填用の水道があるか、とか駐車場や近くの公共交通機関からの道順確認が目的だったので、予定通りで成功と言えよう。まあ、飛行経路が安定してないのは今後の課題と言うことで・・・・

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December 11, 2011

皆既月食をコンデジで撮った

E253これは、昨日の皆既月食を撮ったもの。
ブレているし、ピントも甘いけど、コンデジで撮った上、手持ちなのだから、これだけ撮れれば十分。逆に、これだけ撮れて驚いたくらいだ。
時間的には、ほとんど、皆既月食になった瞬間くらいだ。
いい月夜であった。

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November 27, 2011

手を動かしながら、ものを作る

E249先週、今週と色々な人と接する機会があった。
特に、創造性のある人たちと話をしていて、同じような「新しい物を創造する」プロセス一つとっても、業種によって千差万別だなあ・・と感じた。

私の場合、つまり宇宙開発においては、システムズ・エンジニアリングと言う名前の元に、まず、用途から考えて、トップダウン的に分割していくと言う方式が使われる。

しかし、アートの世界では、まず、色々作って、こねくり回して、新しい面を出すって言うやり方もあるようだ。
幾つかのアート的作品を見せてもらったが、確かに、それらは実際に作って、こねくり回さないと生まれないようなものだった。いくら、頭の中で考えても、そう言った形状や動きは、想像できない類のものだったからだ。

システムズ・エンジニアリングとかトップダウンとか格好を付けて言うけど、所詮、頭の中で考えるだけのこと。
多少は、コンピュータによるシミュレーションも入るが、ほとんどが、頭の中で想像できる範疇に収まってしまう。
しかし、人間は、複雑な三次元構造を頭の中で想像することができない。ましてや、複雑な三次元的な動き等、想像できるわけがない。
人工衛星が単なる直方体になるのは、それが原因じゃないかな? 直方体は2次元の形状の組み合わせで、頭の中でも容易に想像できるからね。同じ理由で衛星の動きが単純な運動に限られるのも複雑な三次元的な動きが頭の中で想像できないためだと思う。

試作品を作るとか言うと「コストがかかる」とか言って、省略する一方だけど、やはり実際に「手を動かして、物を作っていく」作業も必要なんだよなあ。
「システムズ・エンジニアリング」の中に、ちゃんと「手を動かして、物を作っていく」プロセスを入れ込むべきだと思うけど、これら2つは水と油なんだよなあ・・・

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November 08, 2011

コンデジを買った

E246コンパクト・デジタル・カメラ Nikon Coolpix S6200 を買った。
これまで使っていた OLYMPUS のコンデジ(FE-360)が余りにも反応が遅くて、ブレ防止機能もなく、ろくな写真が撮れないので我慢の限界に達したのだ。

今回買った S6200 は、一年以上前に前々作の S6000 をカメラ屋店頭で触った時から、欲しいと思っていた。S6000 と上位機種の S8000 はスイッチONから写真撮影までの時間が最短と言う高速レスポンスを売りにしていた(ネットで調べたら、S6000 S8000 の高速起動は操作上の制約があり、あまり役に立たなかったらしい)。
操作速度に目を付けるとは流石Nikonと思っていたのだが、この一年の間に、他社のコンデジも速くなったようで、現在の起動速度ナンバーワンは CASIO EXILIM EX-ZR15である。S6200 は、今年の9月に出たばかりの新作で、EX-ZR15よりは遅いんだろうが、実用上全く問題が無いくらい操作レスポンスが速い。
しかし、最近、コンデジの操作性が見違えるように良くなった。Nikon の S6000 S8000の良い影響だろうか。高級・高性能指向だと、一眼レフとかミラーレス一眼に目が行くのだが、私は、今、高速レスポンスのコンデジが一番面白いと思うよ。

どうやら、コンデジには 4クラスあるようだ。(独断と偏見)
・1万円(±5000円)以下の安物コンデジ
・2万円(±5000円)の中の下コンデジ
・3万円(±5000円)の中の上コンデジ
・4万円(±5000円)か、それ以上の高級コンデジ
この中で、安物コンデジは買ってはいけない。ブレ防止機能が無かったり、あっても役に立たない低性能のものしか付いてない。
また、高級コンデジも買うべきではない。この種のカメラは、さすがに良くできているが、大きく重く値段も高いので、ここまで金を出すなら、一眼レフかミラーレス一眼デジカメを買うべきだ。

問題は、中の下コンデジと中の上コンデジのどちらにするか悩むところだ。
中の上コンデジは各社良いカメラを投入していて、Nikon S8200やFUJIFILM FinePix F600EXR、CASIO EX-ZR15など、カメラ屋店頭で試したけど、レスポンスは速いし、カメラとしての操作性も良い。

悩んだ挙句、結局、一万円の価格差と小型軽量携帯性で、中の下コンデジの S6200 を買ったと言う訳。中の下と言っても、前のOLYMPUS FE-360 よりは、ずっと良いもんね。

前のOLYMPUS FE-360 は約3年前に買ったのだが、買って直ぐに嫌になるほどで、使っていて不快感しか無いカメラだった。先の分類で言えば、「安物コンデジ」クラスのカメラだったので、そのせいもあるかも知れない。でも最近のOLYMPUSのカメラには不満だらけだ。ブログでも繰り返し言っているが、私は初代ペンEEやペンFからのファンで、それ以降もOM-2やXA2など多くのOLYMPUSカメラを使ったのだが、最近のOLYMPUSに対する文句は山ほどある。が、このブログをアップする前に、OLYMPUSの経営がメチャクチャで内外から袋叩きになっているので、これ以上はやめておこう。

FE-360 の前は、Panasonic DMC FZ-1 と言うカメラだった。このカメラは、8年ほど前に買ったのだが、値段的に言うと、先の分類だと「高級コンデジ」にあたるものだ。当時は、ミラーレス一眼が無かったので、コンデジと一眼レフの間隙を埋める位置づけのカメラだった。8年も前のカメラだから、画素数は200万しかないし、操作レスポンスも遅く、現在のレベルから見ると見劣りがする。しかし、当時としては珍しく、ブレ防止機能があり、光学12倍ズームなど、それなりに気に入っていた。このカメラに対する文句はほとんど無かったのだが、唯一の欠点が大きく重く携帯性が悪いことだった。そのため、5年ほど使って FZ-1 のバッテリーが劣化して使えなくなった時に、携帯性だけを重視して、FE-360 に買い換えちゃったのが、大失敗だったわけ。

今回の S6200 が成功だったか失敗だったかは、まだ買ったばかりなので判らない。でも、今のところは、操作レスポンスが速いことや手持ちでもブレなく撮れるので満足している。

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October 09, 2011

ゴム動力の模型飛行機に超小型のビデオカメラ

E245ゴム動力の模型飛行機に超小型のビデオカメラ(秋葉原で売っているキーホルダー形状の いわゆる盗撮用って奴)を付けて、飛ばしてみた。翼幅45センチの小さい飛行機だから、カメラ18gでも飛ばないかなって思ったけど、ダメ元で試した。
結論から言うと、ゴムが弱すぎて上昇できなかった。何度か試したけど、やっぱり、もっと強いゴムが要る。それで、邪道だけど、高いところから滑空させてみた。普段は河川敷で飛ばしているのだが、その川にかかっている橋の上から手投げした。カメラで重くなったせいか、滑空速度が速く、ピッチング傾向だった。
滑空性能自体、調整さえすれば、多少速度が速いけど許容範囲内だと思った。繊細な滑空性能を求めなければ、ゴム動力で空撮もできそうな気がして来た。折りペラなど凝ったもの使わずに、固定ペラにして、ゴム多めにすれば、滞空時間は稼げなくても面白い動画が撮れるようになるかもしれない。
もちろん、翼幅を60〜70センチにすれば、もう少し余裕が出てくるんだけど、大きくすると飛ばすのが手軽じゃなくなっちゃうし。しかし、ビデオの音声聞くと、意外と動力飛行中のゴム動力って、うるさいんだなあ。外からじゃ、ほとんど音はしないけど。
あと、せっかく撮った画像を見ると、ちょっと迫力が無い。どうやら、レンズのせいか、画角が狭いのが原因だと。魚眼まではいかなくても、もう少し広角が欲しいなあ。撮影した画像から、画角を計算してみると、35mm判換算で、焦点距離約62ミリだなあ。せめて、35mmできれば24〜28mmの広角は欲しい。
同じようなことを考えている人はたくさん居るようで、ネット検索したら、ラジコン戦車やらヘリコプターに、同じカメラに携帯電話用のワイドコンバーターを付ける改造方法のコンテンツが幾つもヒットした。これやってみようかなあ。

もう少し、人様に見せられるような動画が撮れるようになったら、Youtube かニコ動にアップしようかと思う。まあ、その暇があったらの話なんだが。

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