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September 14, 2010

小惑星同士って、どのくらい離れているの?

E220良く、「小惑星帯では、小惑星同士が密集していて、通り抜けるのも大変なんでしょう?」と聞かれる。
確かに宇宙戦艦ヤマトにしろ、その他のSF映画にしろ、小惑星がゴロゴロと密集している小惑星帯を、苦労して避けて通るシーンが出ていたりする。
「宇宙は広いから、そんなこと無いよ。小惑星同士って、何千キロとか何万キロとか離れているよ」と言いつつ、本当のところ、良く知らない。小惑星が少なくとも50万個位あるのは知っているし、大体火星と木星の間にあることも知っているけど、それぞれの小惑星が、どのくらいの距離にあるか、良く判らない。
一直線とか円周上に並んでいるなら計算は簡単だが、小惑星は、立体的に分布しているので、そう簡単ではない。立体でも、きちんと格子状に並んでいれば、それなりに計算できるけど、実際はてんでバラバラになっているはずだ。

わからないなら計算すれば良い。
例によって、JPL Solar System DynamicsEphemeridesにある情報で計算してみた。
JPL のAsteroidsSmall-Body Orbital Elements のページにある
ELEMENTS.NUMBR (圧縮版はELEMENTS.NUMBR.gz)と
ELEMENTS.UNNUM(圧縮版はELEMENTS.UNNUM.gz)が小惑星の軌道データだ。

小惑星の位置の計算プログラムは、asteroidInterval.rbasteroidInterval2.rbasteroidInterval.plt だ。

上記でゲットした ELEMENTS.NUMBR と ELEMENTS.UNNUM のあるディレクトリで以下のように、コマンドすると、冒頭のグラフが得られる。(下記は、LINUX式のコマンドだが、ruby と gnuplot がインストされて居れば、Windowsでも動くはずだ)
$ ./asteroidInterval.rb >data.dat
$ ./asteroidInterval2.rb data.dat >asteroidInterval.dat
$ gnuplot asteroidInterval.plt

最初、全て総当たりで、最短間隔を求めようと思ったが、それだと、1つの小惑星あたり2分程度、50万個以上の小惑星全てを求めると、2年くらいかかる計算になる。そこで、アルゴリズムを工夫し、X座標の順にソートして、X座標が、それまでに求めた最短距離を超えたら打ち切るようにした。それでも半日かかる。

ちなみに、グラフは、それぞれの小惑星について、それ以外の最も近い小惑星までの距離と個数の関係を描いている。例えば、グラフのピークは、最も近いそれ以外の小惑星までの距離が 241.0 万km から 242.0 万kmの小惑星は 1610個あるということだ。

計算では、ある時間(この場合、エポックタイムを使っている)での固定した状態だが、最短距離が3 万kmだった。これは、全ての小惑星が、少なくとも3万キロ以上、他の小惑星から離れている事を意味する。3 万kmは、地球2個より大きい。
つまり、「小惑星帯では、小惑星同士が密集していて、通り抜けるのも大変」なんて事はあるわけない。
そんなに小惑星はガラガラなんだ。

小惑星同士の最短距離の平均距離 483万km、最長距離 57億4478万kmだ。どうやら、データの中には小惑星帯どころか、冥王星軌道くらい遠い小惑星も含まれているようだね。
小惑星の99.9%は、最も近い小惑星までの距離は 23万kmから4億7038万kmだ。99%は、距離 51万kmから 3223万kmの間だ。
もちろん、時間が経つと小惑星同士の距離も変化する。長い年月の間には衝突する小惑星もあるかもしれない。
しかし、グラフは、ちょっと非対称に歪んだ正規分布を示しているので、統計的にはそんなに変わらないだろう。

また、実際に今回計算したのは、あくまでも地球から現在観測できるものに限られる。
もっとたくさん小惑星があれば、小惑星同士の距離も短くなるに違いない。
とは言え、現在見つかってる数の1000倍の小惑星があっても、小惑星同士の距離は、1/10 になるだけだろう。

つまり、小惑星の99.9%は、最も近い他の小惑星まで数万キロ以上離れているし、ほとんどは、数十万キロ以上離れていると考えて良い訳だ。

う~~ん、小惑星帯は、ガラガラだとは思っていたけど、思っていたより、ずっとガラガラだったんだねえ。

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Comments

結果を興味深く読ませていただきました。
私の専門のスペースデブリ問題も、同じような分布になるのだろうと思います。

Posted by: 平山寛 | September 15, 2010 at 08:57 AM

非常に面白く読ませて頂きました。
分布の形状は対数正規分布に近いようですね。

Posted by: | September 15, 2010 at 11:41 PM

となるとヤマトのアンドロメダを振り切った
島の名操艦は…。
ちょっと残念。

Posted by: kouchan | September 16, 2010 at 09:33 AM

以前にデータを探してみるものの、結局見つからなかったので、今回非常に興味深く読ませていただきました。

ところで、小惑星帯を真っ直ぐ突っ切る宇宙船はどのくらいの確率で、小惑星と衝突してしまうのかと疑問がわきました。いわゆる「平均自由行程」です。この衝突確率が大きくないと、追っ手を振り切るのに使えないですね。

Posted by: ACBI | September 17, 2010 at 04:16 PM

さすが師匠、とてもおもしろい結果です。
数十万kmも離れているなら、仮に光速に近いスピードで飛ぶ漫画の宇宙船でも余裕で回避できそうですね。

Posted by: 中村 | September 22, 2010 at 07:07 PM

はやぶさ講演会で出た質問の回答、「はやぶさはイトカワと往復する間に他の小惑星と出会いませんでした」というのを思い出しました。

イトカワはいわゆるアステロイドベルトから外れていますが、木星以遠に飛んでいった探査機もいくつかしか小惑星の写真を捉えていないので、実
際かなりスカスカなんでしょうね。

Posted by: みーや★ | September 30, 2010 at 07:01 PM

いろいろ、コメント有難うございます。
やはり、宇宙船が小惑星帯を通り抜ける時に、どれだけ小惑星に近付くかの興味が多かったようなので、新たなコンテンツを起こしました。
よろしくお願いします。

Posted by: 野田篤司 | October 20, 2010 at 09:20 PM

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