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June 03, 2010

月に行くのは、より道・遠回り・行き止まり

E210私は、バリバリの有人宇宙飛行推進派だ。より遠く、より広く、誰でも行ける宇宙旅行を目指す。
いずれは人類の宇宙進出するのが究極の夢だ。
だが、その私でも月に行くのは賛成できない。それが、より道・遠回りとしか思えないからだ。いや、それどころか袋小路の行き止まりとさえ思えている。

月に行くメリットはない
人類の宇宙進出が目的の場合、火星とか小惑星、ガニメデ・エウロパのような資源を持つ可能性のある場所に行かないと意味がない。この場合、資源とは水など人間の生存に必要な物質の事だ。
当然の事ながら、宇宙ステーションなどのある地球周回軌道には何の資源も無い。だから、定期的に地球から補給物資を送らなければならない。これが、ある程度以上の発展を阻んでいる。
月も物資は無い。正確に言えば、あるのは岩と砂だけだ。水は科学的な研究対象で分析できる程度の量しか無いだろう。人間が生きていくのに必要な量は無い。
人間が月に行っても、地球から物資の補給を続けなければならないなら、宇宙ステーションと同じく発展性が阻害される。いや地球から遠い分、宇宙ステーションより分が悪くなる。

月の科学的な価値を否定するつもりはない。しかし、それは純粋に惑星組成や内部構造・岩石分析の分野に限る。少なくとも、月に天文台を置く意味はない。望遠鏡が重力で歪んでしまう。せっかく宇宙に出たのにメリットが半減だ。月に天文台を置くくらいなら、太陽地球系のL2ポイントに宇宙天文台を置いた方がずっと良い。

月に行くのは難しい
地球からの補給なしに、言い換えれば自給自足で生きていくために必要な資源のある場所が小惑星や火星以遠なら、そこへ行くための技術レベルも高いし、往復の旅行期間も長い。だから、「最も近い月に行って、その練習にするのは良いじゃないか」と言われることが良くある。「月に着陸するだって難しい技術が必要になるし、月面での長期滞在は、火星や小惑星へ行くのに良い練習になる」というのだ。

いや、ちょっと待ってくれ。月に行く困難さは方向性が違いすぎて練習にならないのだ。
月は特殊な天体だ。意外なほど大きく重力が強いわりに空気が無く、自転周期が長い。月面の6分の1の重力は弱いと思われるかも知れないが、地球程度の惑星の衛星にしては異常に大きい。
重力が大きい上に空気が無いので、着陸は強力なロケットエンジンを断続的に使って逆噴射を続けなければならない。もし火星のように空気があれば、パラシュートによる制動が使えるし、逆に小惑星のように重力が少なければ、ごくごく小さなロケットエンジンだけで着陸できる。月への着陸方法は難しい割には、他に応用が効かない特殊技術だ。
とは言え、月への軟着陸技術は、まだマシだ。多少とは言え、火星やガニメデ・エウロパへの着陸に応用できるかもしれない。

問題は、越夜技術だ。越夜は聞きなれない言葉だと思う。「越冬」が冬を越すことなら、「越夜」は夜を越すことだ。
月の太陽に対する自転は29日間。昼は地球時間の14日間も連続で太陽光が当たり温度が上昇する。まだ、昼は良い。太陽光を受けて発電し、その電力で冷房することだって可能だ。問題は、夜だ。今度は14日間も光が当たらない。保温材としても断熱材としても優れる空気がないから、昼は温度が非常に上がり、夜は非常に下がる。夜はエネルギー源としての太陽光がないから、ヒーターを使う事もできない。
月以外の天体の夜は、せいぜいが数時間から半日程度だ。その程度の時間なら昼間の間に充電しておいた電池でヒーターを使って温まる事ができる。ところが、月の場合は、14日間も夜が続くから、普通のバッテリーではとても持たない。極めて特殊なバッテリーが必要となる。
この様に越夜は、特殊で実現困難な技術が必要だ。ところが、この越夜技術、ほとんど月以外に応用できない。月のように長い夜を持つ天体は、水星くらいしか無い。また、木星以遠の星なら、太陽からの光が弱く、ある意味、月の越夜よりも長い夜を越さなければならないが、そもそも昼自体が無いのだから、その意味が全く異なるだろう。

このように月軟着陸技術も越夜技術も、開発が困難な割には他に応用できない「袋小路」の技術なのだ。

月に行くのは遠回り
じゃあ、月に基地を作って、そこで、宇宙船を組み立てるとどうなるか?
ほとんど役に立たないどころか、逆に無駄になる方が大きい。
「基地」と言うのは、そこで物資の補給をしないと意味が無い。ところが月には燃料も水も、とにかく補給すべき物資は何もない。物資は全て地球から送るしかないのだ。
地球から全て物資を送るなら、月の重力に逆らって着陸して離陸するのは無駄以外の何者でも無い。
例えば、地球から火星へ行くこととして、ホーマン軌道への投入を考えた場合、直接地球から直接火星に行くのと、一度月に着陸するのとでは、理想的な計算をしてΔVで 4200 m/s の差が出る。仮に液酸/液水を使ったとしてもツォルコフスキーの式で計算すると質量比は 2.6倍となる。つまり、地球からのダイレクトに火星に行く場合、仮に1万トンのロケットが必要だとすると、月に一回着陸すると2万6000トンのロケットが必要になるということ。なお、これらの計算は純粋に理想的な最小限の値を求めただけなので、実際にはロケットの構造質量比とかを考慮に入れると、更に差は開く。3~4倍程度が現実的な値だろう。

ここまでは、火星へ行くときだけの話。帰ってくる時を考慮にすると、驚くほど差が開く。
火星からの帰還時、地球と月が往路と同じ条件なら、最初の打ち上げ時の差は、3~4倍の自乗で、9~16倍で済む。ところが、行きと違って、地球には奥の手がある。地球に直接帰ってくるなら、地球大気を使った制動(ブレーキ)が使えるからだ。
だから、帰還時も考慮すると20~40倍は違ってくる。先の例だと40万トンのロケットが必要になる。

もう一度整理すると、最初の打ち上げ時の質量は、
・地球からダイレクトに火星を往復を「1」とすると
・月経由で火星に行って、帰りはダイレクトに地球の場合「3~4倍」
・行きも帰りも月経由で火星に往復の場合「20~40倍」


最初の打ち上げ規模が、3~4倍とか20~40倍になったからと言って、リニアにコストも3~4倍とか20~40倍になるわけではない。だが、非常に割高になることは誰の目にも明らかだ。ちなみに、ここまでの計算には月基地建設の分は入っていない。月基地建設の分を入れると、さらに、その差は開く。

と言う訳で、月によるのは無駄だ。いや無駄というにはあまりにも大きすぎる無駄だ。

月に行くことで、苦労して得る技術は、その後の役にも立たない。燃料は無駄になり、莫大なコストは露と消える。疲弊し切った宇宙開発は、そこで行き詰まってしまうだろう。袋小路だ。

預言者のように未来を見てきたような事を言っているが、これは未来を予言して言っているのではない。まさに40年前に、アメリカがアポロを月に送った後、宇宙開発が迷走している姿は、この「予言」そのものなのである。

なぜ、月に行きたがるのか?
冷静な理性的判断で月に行くことにメリットが無いどころか、デメリットだらけであることは明らかだ。これは私の意見だけではない。多くの専門家が同じ意見を持つ。

にも関わらず、月が主流派を占めるのは何故か?
ブッシュ前大統領が月に行くと声明していた時は、日本もアメリカについていくだけと思っていた。

ところが、オバマ大統領が月行きを否定したにも関わらず、相変わらず日本が月に行くと行っているのは、どうしたことなんだ。(ちなみにオバマ大統領は月は止めて、次は火星か小惑星と言っているんだよ。たぶん、私と同じ事を言った人がNASAかなんかに居たんだと思う)

これは、もう理性で判ることじゃない。
超自然的な力が働いている・・・なんて、オカルト的なことじゃなくて、心理的なもの。子供の頃に刷り込まれた憧れとか、そう言うものが潜在意識的な欲求として働いているとしか思えない。
つまり、アポロの月着陸を子供や若い時代に体験して、それが刷り込まれてしまったというわけ。実際、理性的ではなく月へ行く事を無条件に肯定するのは、現状50歳から60歳以上の世代に多い。この世代は、月に行く事を肯定すると言うより、あの時代のアメリカ、ベトナム戦争以前の強いアメリカへの憧れを月着陸に投影している。としか思えない。
それより下の世代には、月への憧れも、むしろ強いアメリカへの憧れなんてないから、月へ何故行きたがっているか、全く理解できない。

最大の問題は、月および強いアメリカへの憧れ世代が、政治にしろ色々な組織・省庁でのトップに今居ると言うこと。彼らが、「月に行く」と言い出したら、誰も止められない。
でも、今、決まったら、実行するのは、もっと若い世代。月と強いアメリカへの憧れなんて無い世代。
やりたくない上、理性的に考えればムダ以外の何者でも無いものをやる世代の身にもなってもらいたい。

繰り返しになるけど、もう一度言う。
私にとって、宇宙に人類が出て行くのが、宇宙開発の究極の夢だ。
月に行くのは、その夢にとって、遠回りになるどころか、袋小路の行き詰まりをまねきかねない厄介ものだ。

月なんか放っといて、とっとと深宇宙へ飛びだそうぜ!

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Comments

こんばんは
スカイラブ、サリュートレベルで、停滞している有人活動には、全く興味の無い私ですが、月がそんなに性質の悪い目標とは知りませんでした。
ただ、一般の人には『目で見える目標に行く』というのは、説明が簡単なので、マイナーな目標に行くのを納得させるのは難しいかも知れません。
はやぶさの帰還で、小惑星探査が盛り上がる事を期待します。
個人的には、早く天王星か海王星に周回機を送り込んで、ガス惑星の衛星系と氷惑星の衛星系がどう違うか、似ているのかを調べて欲しい。

Posted by: bbsawa | June 03, 2010 at 11:24 PM

北極に氷が見つかっているのも知らない人のコメントを読んでどうしろと……。

Posted by: | June 04, 2010 at 05:50 AM

月探査には「予算投入を国民に納得させるための判りやすい目標になる」
という立派な意義があります。
確かに、その予算で獲得された技術のかなりの部分は応用範囲が極端に狭い
袋小路の技術かもしれませんが、大型ロケットや有人飛行といった基盤的な
技術の獲得が期待できます。「解決した課題数」といった観点で見れば、
確かに袋小路技術が過半を占めるかもしれませんが、費用ベースで見れば、
過半は共通基盤的な技術の開発に使われるはずです。
「予算を2倍取れば、4割どぶに捨てても実質開発費増じゃん!」という発想かと。
「宇宙開発推進」自体に国民的合意が無い中で、
「宇宙開発先細り→既存気技術の維持すら困難」という危機的な将来の見通しへの
対応策としてはありでしょう。
もちろん、将来的な応用範囲の広い、有人ステーションや小惑星探査中心に
適切な予算をつけて粛々と開発を進められる状況なら、月専用技術の開発なんて
無駄使いはしないにこしたことはないんですが・・・

「有人月探査推進」を打ち出したことに対する私の感想は、
「禁じ手のはずの切り札を切らざるを得ないほど、日本の宇宙開発は追い詰められていたのか・・・」
です。このままでは現状の不足する予算がさらに削られていく、という中で、
なんとか宇宙開発の灯をを絶やさないための、苦衷の選択の施策
なんだと思います。


Posted by: | June 04, 2010 at 07:52 AM


え!! 月に水って、それなりにあると思ってた。。。

http://www.jaxa.jp/article/interview/vol54/index_j.html

宇宙兄弟の連載を止めさせて、あさりさんの漫画を代わりにモーニングに連載して、啓蒙活動しないと。
でも、宇宙兄弟大好き!!

Posted by: NARUSE | June 04, 2010 at 11:44 AM

水は極地に少量あるだけだから、飲料水程度ならともかく、
酸素供給源にならないのが厳しいっすね。

核融合が実用化されれば、ヘリウム3が地球より多いから価値は出てくる
かもしれませんが、
水やら鉄やら豊富な資源があって重力のくびきも最小の小惑星/近傍彗星に
比べると、経済的価値・拠点としての価値はすごく期待しにくいですね。

Posted by: | June 04, 2010 at 12:40 PM

私は月でやって欲しいことが1つあります。
電磁加速カタパルトの実験。 空気が無くて、反動を受け止めるだけの質量があるところって、近場では月しかない。(小規模なら真空チャンバーの中でできるが) できてしまえば、月の物質は持ち出し放題。(どんな物質があるか知らないが。カタパルトの素材もないか) 火星へのホーマン軌道への投入もカタパルトで。 ゆくゆくは、資源のある小惑星の軌道を落とすときに、小惑星の質量を刻んでカタパルトで飛ばして減速する。(迷惑なだけかも) さらには、降下させた小惑星を月にぶつけて止める。(冗談です。ほとんど消耗品扱い。月に興味のない人でも、これには反対するだろう。月の石がデブリになるだろうし)

越夜の対策としては、砕石形蓄熱槽が有効だと思います。(石は月のものを使う) 石から熱を出し入れするには、流体で満たして流れを作る必要があるため、蓄熱槽の気密性が問題となり、保温性から真空断熱を使うとすると、耐熱ステンレス製の容器を月に投入しなくてはなりませんが、高いエネルギー密度(0.3cal/cm^3・Kとすると、有効温度差500Kで1m^3当たり630MJ)と低温側が絶対零度に近いことによる熱気機関(ここはフリーピストン・スターリングでいいです)の熱効率の高さは魅力的です。(実験としてだけど。ローテクでもあるし) 投入部材1tでGJ単位のエネルギーを蓄えられるなら、かなり良いのではないかと思います。(一番重いのは、放熱板と反射板付きの吸熱器かな?)

Posted by: 美村蔵親 | June 04, 2010 at 07:33 PM

JAXAのみならず、文科省の担当官だって、宇宙開発の目標としての月
がスジ悪なのは判ってるはず。彼らはアマチュアじゃありませんから。
そして、偉い人の「憧れ」を利用する程度でどうにかなるほど予算折衝の
舞台裏は甘いもんじゃないです。プロの打ち出した方針には必ずそれなりの
戦略があると見るべきかと。その「戦略」なるものは「予算獲得の方便」
程度のものかもしれませんが、プロが基本的な事実誤認を犯して「月いいよね!」
程度のノリで踊っている、と考えるのは官僚の能力をなめすぎだと思います。
技術的な正論とは別のロジックに基づく戦略があると考えるのが自然でしょう。

Posted by: | June 05, 2010 at 01:32 AM

皆さん、どうもコメント有難うございます。
月の水に関しては、見つかった/見つからないの情報が多々あり混乱の元になっていますね。
でも、概ね「月に水は無いわけではない。が、ごく少量で、水資源として使えるほどの量はない」と言うのが現状のようです。もちろん、情報が更新されるのが速いので、最新情報をウォッチするのも重要です。

月が「予算を獲得する上で有効だ」のご意見、合意します。
ただ、「JAXAのみならず、文科省の担当官だって、宇宙開発の目標としての月がスジ悪なのは判ってるはず。」の部分は、どうも・・・・。

問題は、月は国民に「説明しやすいから、予算獲得のネタに」と言うのは、裏を返せば、「説明が面倒だから、説明せずに、とにかく予算だけ取るだけ取っちゃえ」と言うスタンスですよね。
この姿勢が宇宙開発だけじゃなく、日本の多くの公共事業などの行き詰まりを招いていると思っているんですよ。
だから、難しいと思っても「正しい事を説明をする」ことをやらねばならないと思います。

「説明責任」と言う言葉を「判りやすい説明をする責任がある」から、「説明が簡単なものだけにする」にすりかえちゃっていますよね、今の政治。

Posted by: 野田篤司 | June 05, 2010 at 07:19 AM

テーマから脱線気味の上に長文で申し訳ないのですが・・・

>だから、難しいと思っても「正しい事を説明をする」ことをやらねばならないと思います。
政治の王道としては、おっしゃるとおり。ただし、政治において政治家サイドが
>「判りやすい説明をする責任がある」から、「説明が簡単なものだけにする」にすりかえちゃって
いる現実がある以上、行政サイドとしては「政治家・国民をだまくらかす」方向にシフトするのは責められない、
と思います。国民の負託の範囲内で最善を尽くすのが行政の責務です。明らかな正論でも通らないことがはっきり
しているなら、正論を通して玉砕するより欠陥があっても次善の策を通すのが実務を担う官僚の責務ということ
です。理想を追うようになっては(政治家ならまだしも)行政機構としては失格です。

ついでに政治家サイドの弁護もしますと、こちらにも一応同情の余地はあると思います。
例えば、こちらのエントリーに書かれたような月開発に関する事情(あるいは小惑星開発の重要性)を国民に
周知することが本当に可能でしょうか?
日本国民の教育程度は高いですから、このような情報を示されれば(賛否はともあれ)大半の国民は理解できる
でしょう。ただし、現実の政治においては、このような課題が数万並んでるわけで、いくらそれらの全てに
「正しい」説明を開示・広報したところで、フルタイムの政治家ではない一般国民にはその「正しい説明」に
アクセスする時間が全く足りません。結局各政策課題について基礎情報抜きに常識レベルで判断することに
なります。こと政治においては課題が刻々移り変わるものも多いため、徐々に理解を求める手法も大きな効果は
期待できません。このような状況では「正しいと信じる政策を掲げてきちんと説明責任を果たす」よりも
「必ずしもいい解じゃなくても簡単に説明できる政策を掲げる」方が国民には「正しい説明をされている気分」
を与えやすく、選挙に勝ちやすい、ということになります。
「各政策課題について、国民の大半は当然アマチュアであり、政治に多大な時間を割く余裕はない」という
変えようのない現実を認識している政治家ならば、選挙対策としては、
1.判りにくい課題はなるべく国民に伏せておいて、プロの目から見て正しい政策をこっそり推進する
2.多少スジ悪でも次善、三善の、専門知識抜きの常識で正解っぽく見える政策を掲げる。
のどちらかしか選択の余地がないのでしょう。
もちろん、全ての政治家が「プロの目から見た政策の良否より、素人受けを優先しよう」という「抜け駆け」
なんぞをしない、プロの矜持と実力を持っていれば、選挙対策のような邪念を政治に持ち込む必要はないわけ
ですから、政治を責めるべき、とすればこの政治家の「抜け駆け体質」の部分だと思います。
誰でも立候補できる以上、根本的に悪貨が良貨を駆逐するシステムなのは防ぎようがないと思われますが・・・。

私も日本の公共の行き詰まりは認めますが、その主原因を「正しい政策を掲げて、それに対する説明をして
こなかった」ことに帰するのはちょっと違うのではないか、と思います。これまでも日本の政治は民主国家
としてそれなりレベルの情報開示と説明をしていると思います。特に中央各官庁は充分に政策判断の材料と
なる情報を公開・刊行しています。ただ白書を始めとするそれら資料の全てに目を通して政策を考えるには、
国民はもちろん、フルタイムの政治家ですら時間が足りないのです。
主原因を求めるなら「基礎知識が足りないという国民の当然の事情」を選挙対策のような邪道に利用した
多くの政治家と「自分はアマチュアなのだから政治に対して正確な判断ができないという自覚」が足りない
国民の意識-自覚がないために矜持の無い政治家を見抜けない&常識レベルでしかない自分の判断をプロの
判断より優先する-の両者が戦犯ということになるのではないでしょうか。

>「説明責任」と言う言葉を「判りやすい説明をする責任がある」から、「説明が簡単なものだけにする」にすりかえちゃっていますよね、今の政治。
という現実認識には、私も賛成しますが、その解決策を
>だから、難しいと思っても「正しい事を説明をする」ことをやらねばならないと思います。
とするのは的外れだと思います。これまでの日本の政治が必ずしも「嘘とだんまり」だけで塗り固められて
いたわけではなく、「正しい事を説明する」動きも充分行われていた(少なくとも政策判断の前提となる情報に
ついては充分でしょう)にも関わらず、その動きは政策決定に決定的影響力を持ち得なかったし、今後とも
できないはずだ、というのが私の認識です。
極言すれば「正しい政策を掲げ、それに対する十分な説明をしていれば、その政策が実現しなくとも
(実現が遅れようとも)よし」とする態度は単なる理想論で無責任、特に行政においては最悪の態度の一つだ、
ということです。

Posted by: June 05, 2010 at 01:32 AMの人 | June 05, 2010 at 10:34 AM

最初、ちょっと反論しようかと思ったのですが、考えてみれば、政治としては・・・って、話ですよね。
私としては、科学者や技術者の立場としては、少なくとも正しい事を伝える努力を怠ってはいかんと思っています。

本当は、正しい事を伝えて、なおかつ実現するようにすべきですよね、政治だって。まあ、理想論と言われれば、それまでですが。

Posted by: 野田篤司 | June 06, 2010 at 06:02 AM

長文コメ読んで頂きありがとうございます。
>考えてみれば、政治としては・・・って、話ですよね。
はい、それだけの話です。各業界には各業界独特の常識っていうものがあって、
それが世間一般の常識や倫理とちょっとずれていても、それはその業界の独自の
事情に基づくものであって、たいてい合理的な理由があるもんだ、ということです。
「行政も理想を追求せよ」ってのは「設計完璧なら予備系いらないんじゃねえの?」
レベルの政治業界常識的には「素人乙www」な突っ込みだと思います。

「業界には業界の事情に基づく論理がある」ということ自体は「常識」的な結論
だと思うのですが、こと「政治」という業界においては、業界外からの注目を
浴びる上、なぜか他の業界相手では常識であろう「素人考えで言うんだけどさあ・・・」
という業界外部の人が口を出す際の遠慮と自省がないんですよね・・・
例えば、OS開発する時にユーザーの意見を聞くのは当然ですが、仕様書を公開
してユーザーに添削を求めるのはおかしいと思うんですが、何故か政治には
それが求められる上、「俺ならもっとコード上手くかけるぜ!」とか言う人まで
いる始末・・・これって本当に「常識的に」考えれば変じゃないかな、と。


ちなみに私は官僚ではなく民間の技術者なんで、「ポジショントークじゃないよ!」
ということは一応付記しておきますw

Posted by: Shin | June 06, 2010 at 07:59 AM

はじめまして……かな、たぶん。
若輩者のファンです。小惑星開発のトピックに惹かれて立ち寄り、「宇宙暮らしのススメ」も拝読させていただきました。

個人的な見解としてですが、月を目指す理由は、「そこに月があるから」で十分であると考えます。
そも宇宙開発そのものが、少なくとも現時点では、よほど超長期的な視野を持たない限り、ロマンの先立つ事業なのですから。
人類が昔から憧れまた馴染んできた、あの神秘的な衛星に立つことをまず目標にすえても、構わないのではないでしょうか。

正直ですね、現代の若い子どもたちってまず、宇宙にあまり憧れを持ってないように感じられるのです。
だからこそ、目先の達成可能でかつ分かりやすい目標を示し、興味を沸き立たせることに価値があるのでないかなと。
より先を目指せることを知っている、専門家の視点からは歯がゆいのでしょうけれど。

Posted by: kanata | June 23, 2010 at 10:09 PM

月がわかり易い目標であることは確かなんですが、
その後のことを考えると・・・
ジレンマですね。

Posted by: 野田篤司 | June 26, 2010 at 08:31 AM

数ヶ月前の話題で今更ですが。

月に限らず、惑星・衛星は重力井戸の底なので、
宇宙開発には確かにネガティブな要素です。

しかし長期滞在という点からみると、それは
有用な部分でもあります。
地球上の生物は無重力下で長期生存出来るよう
になってはいません。
心筋の衰弱のような致命的な影響がある以上、
やはり宇宙におけるベースは天体上に作るしか
ありません。

また現在のISS以上の高度では、宇宙線の遮蔽が
必要になりますが、そのためには多大な遮蔽質量
が必要になります。

月の地下基地はこの2つを同時に満たす事が
出来ます。
確かに物資の問題はありますが、水に関しては
両極の永久影の下に凍土層が存在するようです。

そして越夜の際のエネルギー源ですが、半月夜が
続くという事は反対の半球では昼が続いていると
いう事でもあります。
逆の半球側に太陽光発電所を置き、送電ラインを
引く事が出来れば、常時電力を得る事が可能に
なります。
また発電衛星という形でも電力を確保することは
十分に考えられるのではないでしょうか。

確かに、「火星に行く為には」月に立ち寄る意味
は低いでしょう。
それは木星に行くのに火星に寄るとロスになる、
と言うのと同じで、1つの目的に特化すべきで
しょう。

しかし近未来にまず成立するであろう宇宙圏は、
距離やエネルギー源からしても、月-地球系に
なるハズです。
その意味で月を目指す事はムダではありませんし
他惑星探査とは切り離して考えるべきです。

月が特異な衛星である事は確かですが、もし月が
存在していなければ、地球近傍の開発はより困難
になってしまうのではないかと思います。

あと蛇足ながら月への着陸ですが…電磁誘導で
宇宙機の運動エネルギーを電力に変換する…と
いう仕掛けを作りだせると随分楽になるのでは?
と愚考致します…

Posted by: fani | November 06, 2010 at 11:14 PM

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Tracked on August 04, 2010 at 12:13 AM

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