SmartQ5 ファームウエア V5
SmartQ5 ファームウエアが V5 にバージョンアップした。
さっそく入れてみると、Ubuntu 9.10 ベースになっていることにビックリ。
冒頭の絵は、Ubuntu 9.10 のマスコットのコアラ (Karmic Koala)のつもりだ。
ちなにみ、Ubuntu はバージョン毎にマスコットがあり、SmartQ5 ファームウエア V4以前のマスコットはヒポグリフ(Hasty Hippogriff)と言う架空の動物だった。Hastyは、Ubuntu 8.04 鷺 (Hardy Heron) のARMに対応した非公式派生型だった。9.04 以降 Ubuntu も正式に ARM に対応したので、今回は SmartQ5 ファームウエアも Ubuntu 公式版がベースとなっている。で、鷺(8.04)から、ヤギ(8.10)やウサギ(9.04)をすっ飛ばして、コアラになったわけだ。ただ、9.10 は、x86 版も未だリリースしておらず、見切り発車となっているため、安定性などに不安が残る。
私は、メインマシンも Ubuntu を使っているのだが、9.10 は初めてだ。実は、x86 メインマシンでは、8.10も9.04も試した挙句、8.04 に戻した経緯がある。8.04 は LTS と言って長期サポートを前提とした2年毎のバージョンアップ版であり、8.10 や 9.04 のように半年毎にバージョンアップするものより安定性が違う。やはり、実用で使うとなると先進性よりも安定性が重要だ。
SmartQ5 ファームウエア V5 も安定性が課題だが、どうだろう。ネット上での評判も動作が鈍いなど、決して良くは無いようだ。だが、短期間しか使っていないが、ファームウエア V5 は、それほど悪くはないと思う。冒頭のコアラのイラストもファームウエア V5 上で rgbpaint で描いたものだが、実は、ファームウエア V4 で同じく rgbpaint を使って絵を描いた場合、ハングアップが多発して、絵を仕上げるまで耐えたことは一度も無かった。それに比べて、一発目で絵が描き上がったファームウエア V5 の方が遥にましと言えるだろう。
ファームウエア V5 はSmartQ Ver5 firmware Download からダウンロードしたファイルを使うだけで、V4 までと同じだ。
日本語化のコツとしては、
・ /etc/apt/sources.list の変更はない。
・ 「apt-get upgrade」してはいけない。
・ /etc/default/locale を以下のように設定する。
LANG="ja_JP.UTF-8"
LC_ALL="ja_JP.UTF-8"
LANGUAGE="ja_JP:ja"
# apt-get update
# apt-get --purge remove language-pack-zh-hans fcitx abiword
# apt-get install scim scim-anthy anthy
# apt-get install language-support-input-ja
# cat /usr/share/zoneinfo/Asia/Tokyo > /etc/localtime
とすると、本体の 1G フラッシュ領域に何とか日本語変換までインストできる。
これ以降のアプリケーションのインストは、SDカードに行うようにした方が良いだろう。
ファームウエア V5 の登場で、前回のコンテンツ「Ruby-GTK2 の野良ビルドに成功」が時代遅れになってしまった。ファームウエア V5 ならば、
# apt-get install ruby ruby-gnome2
で、ruby-gnome2 がインストできるからだ。
ところで、SmartQ5 と関係ないけど、Moblin V2 も一昨日リリースされた。しかし、相変わらず GMA500 は未サポートのままだ。インテルはやる気あるのかなあ??
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Comments
ご無沙汰しています。
Smart Q5の実用性が、かなり向上したみたいですね。おめでとうございます。
Yahoo!のオークションや、Amazonでも入手できるみたいなので、日経Linux誌が根気よく使い方を取り上げ続ければブームになるかもしれません。
でも、このような小さくて安価な機械で、本格的なUnix互換環境が動いてしまうなんて、すごい時代だと思います。
そのうち単三アルカリ乾電池2本で数時間動くUnixマシンなんてのが出てきそうですね。
Posted by: Technobose | September 27, 2009 10:23 PM
SmartQ5 も、Ubuntu だけではなく、Android の方も日本語版ファームウエアがダウンロードできるようになったらしいので、試してみたいと思います。
本当に、こう言う機器が単三電池とか単四電池で動くようになれば楽しいですね。
Posted by: 野田篤司 | October 04, 2009 11:58 AM
単三乾電池で動くWindowsマシンが発売されるみたいです。
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20091009_edubook/
なんか凡人の発想なんか、簡単に実現される時代ですね。
処理能力がどの程度のプロセッサかわからないのですが、1GHzで動くとなると案外実用的なマシンかもしれません。
値段も安いみたいなので、国内でも発売してほしいです。
Posted by: Technobose | October 10, 2009 09:01 PM
おお、ついに単三電池パソコンが発売ですか!?
日本で販売されるときは、1万円は無理でも、2万円未満なら、うれしいですね。
Posted by: 野田篤司 | October 11, 2009 07:03 AM
普段持ち歩く機械となると、突然の雨に降り込められたり、鞄を駅の階段から落としたりとアクシデントで損耗することを想定しないといけないのですが、1万円台くらいなら一晩落ち込むだけであきらめがつきそうですね。
x86系なので、PC用のソフトをそのまま使えるのはARM系に対しての強みだと思います。
ネットを調べてみると、このマシン、春頃に一度話題になっていたみたいです。さらに筐体内部にUSB端子が一つあって通信機器などを内蔵できるみたいです。
で、単三乾電池8本もあれば、普通のパソコンも動かせるだろうという反応が結構ありました。
確かに、その通りなんだけど・・。(^^;;
同じプロセッサを使って周辺回路を工夫すれば、もっと電池本数を減らしたりできそうですね。でも、電池駆動の機械では、電源の汎用性って重要だと思うんです。どんなによい機械でも電源がなければ動かないわけですし、電池の入手性が悪くて換えが手に入らず退役というのはもったいです。
ところで、こういう低消費電力のコンピュータ・システムって、人工衛星の開発などには影響があるものでしょうか。
Posted by: Technobose | October 12, 2009 12:06 AM
単三電池2本が理想的ですよね。せめて、4本!!
人工衛星の話ですが、
一般的に
(1)小さいほど(65nmルールよりも45nmの方が)
(2)信号電流が小さいほど
(3)動作電圧が低いほど
(4)省電力ほど ((2)と(3)から当然の結論ですが)
ほど、放射線に弱いと言われています。
ですから、ATOMや今回の単三パソコンに使われているようなCPUは、放射線に弱いと予想されます。
とは言え、バッテリーも含めて、ずっと小さく軽くなるなら、冗長系を使うと言うアイデアもあります。
例えば、放射線により1時間に一回のエラーが出るとしましょう。一回エラーが出たとき、復帰するのに1分かかるとします。
2台のコンピュータでエラーを起こしていない方が仕事をしていれば良いので、2台ともが同時にエラーを起こすのは、元の60分の1つまり、60時間に一回となります。
コンピュータが3台なら、3600時間=150日に一度、4台なら9000日=24.6年に一度になります。
すなわち、元々の宇宙用コンピュータに比べて、4分の1よりも小型軽量化できたコンピュータを4台載せれば十分って事ですね。
最初に仮定した「1時間に一回エラー」の「1時間」は長い方が有利ですし、「1分で復帰」の「1分」は短い方が有利です。
逆に「1分に一回エラー」で「復帰に1時間」じゃあ、全く役に立ちません。
要は、「エラーの起こる間隔」が「復帰に必要な時間」よりも十分に長ければ、個数を増やすことで冗長構成に意味がある組み合わせが見つかります。
が、「エラーの起こる間隔」の測定に時間と金と手間がかかるので、現実の人工衛星には、こう言った組み合わせのコンピュータが使われることはあまりありません。
でも、今後は、そう言った方向もありのような気もしますね。
Posted by: 野田篤司 | October 12, 2009 06:20 PM
こんばんは。
単三乾電池二本だったらいいですよね。
単三乾電池も数があると重くなりますし、単三乾電池八本で思い出しましたがニコンのモードラMD-12と同じですね。
x86ですがドスパラでWindowsXP込みで29,800というネットブックを出しましたね。
OLPCみたいなビジョンが発表されて数年でここまで事態が進展するのは、やはり驚きです。
宇宙空間のような過酷な環境でコンピュータの信頼性を確保するのは難しいんですね。回路の周りをシールドするだけでは宇宙線を防ぐことはできないんですかね。
あと冗長系のことで教えていただきたいのですが、宇宙線が回路に影響を与えるのは、ごく限られた範囲なのでしょうか。
なんとなく宇宙船くらいの範囲だと、同時に宇宙線を浴びてしまって、すべての回路に影響がありそうな気がするんです。冗長系が有効になるには宇宙線がピンポイントで回路に影響を与える前提だと感じました。
それと、以前、恒星間鮭の卵計画のコンテンツを興味深く拝見したのですが、ああいう極小の回路だと宇宙線を浴びると全体が焼けてしまいそうですね。
宇宙空間って、想像以上に過酷な環境ですね。
子供の頃、ガンダムとバイファムみたいなアニメを見ながら、大人になったら、宇宙に行ける時代が来ると思っていたんですが、なかなか行けそうもないですねぇ。
Posted by: Technobose | October 17, 2009 09:31 PM
ネットブックも、いよいよ、Windows込みで3万未満の時代ですか?
宇宙線については、拙作「宇宙暮らしのススメ」
http://www.amazon.co.jp/dp/4054041426/
にも書いているんで、よろしければ読んでください。
宇宙線・放射線と言っても色々あるんですが、一般的に電子機器に悪さするのは、高速で飛んでくる原子核です。
α線は、ヘリウム4の原子核で、主に太陽から大量に来ます。大量に来ても、α線は原子核の質量も軽く、エネルギーも低いので、シールドするだけで防ぐ事が可能です。
これよりタチが悪いのが、超新星爆発から出てくる高エネルギーの粒子です。主に鉄などの重い原子の原子核が高速で飛んできます。超新星は滅多に無いのですが、イオン化した原子核が、銀河に満ちている磁界の中でグルグルと、釘に当たったパチンコ玉のようにランダムに飛び交うので、常にやってきます。もちろん、それでも量的にはα線よりはずっと少ないです。
問題は超新星からの粒子の宇宙線はエネルギーが高すぎてシールドでは防げないことです。厚さ70センチくらいの鉛の壁で被えば良いのですが、それじゃ、何トンですまないくらいの質量になります。
高エネルギーの粒子は、もちろん原子核ですから、小さいのですが、イオン化してエネルギーを持っているので、集積回路の中に入ると、トランジスタ(FET)のON/OFFをひっくり返す事くらいは起こします。メモリやCPUの中だと、記憶を1ビット反転させるとか、フラグを反転させるといった事になります。
私が計測した範囲では、粒子が通ると、隣接する4つ程度のトランジスタを反転させるようです。つまり、最大4ビットですね。何メガ、何ギガのメモリの中の4ビットなので、量的には大したことは無いのですが、やはりコンピュータの場合、メモリがエラーしたりフラグが反転すると異常になるので、大問題です。
もう一つ大きな問題があって、プッシュプルトランジスタ(プラス電源とグランドの間に二つトランジスタが入っている。絶対同時にONにならない設計にする)を2つ同時にONにする反転を起こす事があります。この場合、電源電流が大量に流れるので、その熱で回路を焼き切ってしまう事があります。
Technoboseさんの書き込みを見ると、放射線のエネルギーが電子回路を焼くと思われているようですが、実際にそれほど大きなエネルギーを宇宙線は持っていません。回路を焼き切るのは、元々人工衛星が持っている電源電流です。
と言う訳で、放射線の影響は、非常に限られた範囲なので、冗長系で防ぐ事ができるのです。
Posted by: 野田篤司 | October 18, 2009 06:21 PM
こんばんは。
日曜日はITストラテジスト試験を受けてきたのですが、本当に組込システムの問題が出るんですね。私はこの試験の前身である上級シスアドを持っているのですが、戦略系の試験では初めて組込システムの出題を見ました。
国は組込システムのような応用システムに関するスキルの重視を始めたようですね。
>隣接する4つ程度のトランジスタを反転させる
高校に入った頃、「宇宙開発近未来」という新書を読んでました。放射線の影響でメモリのデータが反転する単一事象アップセットという現象が問題である、と書かれていたのを思い出しました。
>もちろん原子核ですから、小さいのですが
宇宙線とか放射線というと、なんか電磁波というイメージがしますね(電磁波って領域に作用する感じがします)。
教えていただき、粒子がぶつかって故障が起きるイメージがはっきりしました。
あ、「宇宙暮らしのススメ」ですが、書店の営業に頼んできました(子供の面倒を見るため、まっすぐ家に帰るので、ここ一年ほどリアル書店に行けません。(; ;))
Posted by: Technobose | October 22, 2009 10:24 PM
Technobose さん、どうも有難うございます。
なんか本を押し付けてみたいになって、申し訳ありません。
> 単一事象アップセット
我々は、シングルイベントアップセットと読んでいます。そのまま英語にしただけですね。
私も子供が小さい時は、書店に行きにくかったです。
そこで、左手だけで子供を抱っこして、右手だけで立ち読みする術を編み出しました。
って、単に左手を鍛えただけですが・・・
Posted by: 野田篤司 | October 23, 2009 08:50 PM