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May 25, 2008

【人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から】 目次

【人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から】のシリーズを読みに来てくれる人も多いようだ。
だが、どうしてもブログは古い情報が読みにくい。
そこで、このページにシリーズの目次をまとめて読みやすくすることにした。また、このページは常に最新情報に更新するつもりだ。
また、野田篤司ホームページで保存版を見ることもできる。

人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から
 第1章『イントロ 〜言い訳〜』
 第2章『宇宙へ飛び出す』なんて『レトロ・フューチャー』じゃないの? 
 第3章『宇宙に行って、暮らせるの? 幸せなの?』
 第4章『小惑星開拓計画』
 第5章『小惑星開拓宇宙船は 19世紀のテクノロジー』(1/2)
 第5章『小惑星開拓宇宙船は 19世紀のテクノロジー』(2/2)
 第6章『これから、やるべきこと』
 補足:放射線の情報

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May 24, 2008

【人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から】 補足:放射線の情報

小惑星へ行くなど、惑星間航行のときに問題となる放射線について、情報を色々いただいたので、以下にまとめる。

Managing Lunar and Mars Mission Radiation Risks Part I: Cancer Risks, Uncertainties, and Shielding Effectiveness
 題名の通り、月と火星ミッションの放射線被曝の危険性の NASAの論文。
 NASA Technical Reports Serverでサーチすると他にも放射線被曝関係のレポートが沢山ある。

・日経サイエンス2006年6月号、P60-70 「星間旅行者を宇宙線から守る」
 一般的な記事なんで読みやすい。図書館でみつけるか、古本屋で見付けるか
 日経サイエンス バックナンバー 星間旅行者を宇宙線から守るでオンライン販売もある。

Managing Space Radiation Risk in the New Era of Space Exploration
 著者であるCommittee on the Evaluation of Radiation Shielding for Space Explorationがどういう団体なのか、実は知らない・・

要は、深宇宙の放射線の人体への影響は大きく、防ぐのは、重いシールド以外に有効な方法はないらしい。磁気や静電気による防御、薬を作るなどのアイデアもあるが、実現性と効果のほどは疑問だようで・・

小惑星探査に限らず、月・火星などの有人飛行には、放射線対策は必須だ。

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Ubuntu 昇格

一ヶ月近く Ubuntu 8.04 を試していて、使い勝手が良いので、「お試し」から「実用」に使う事にした。言わば「昇格」である。
私のパソコンの 320G HDD は、80Gの4つのパーティションに分けていて、Windows XP、Debian 32bit、Debian 64bit を入れている。残った 80G は更に細かいパーティションに分け、色々な OSを入れて試している。以前 Fedora を入れて、数週間試して消したこともある。この一ヶ月弱、この領域に Ubuntu をインストールしていたが、今日、あまり使っていない 64bit 版の Debian を消した 80G に Ubuntu を入れ直した。

使い勝手の良い Ubuntu だが、唯一気になっていたのは、無線LAN の不安定性だったが、まあ、そのうちパッチもあたるだろうと、「正式採用」に踏み切った。もう一つ YouTube 動画は観れるのに、ニコ動が観れなかった件については、既に Debian の方で最新の Adebe Flash Player をインストールすることで解決済みだったので、何とかなるだろうとインストールスタートである。

前回は、リリース直後で攻略本も出ておらず、自己流でインストールせざるを得なかった Ubuntu 8.04 だが、今回は週刊アスキーのムック「カンタン Ubuntu! 」を見ながらの作業だ。

インストールは、前回と同じく、簡単に終わったのだが、無線LAN を「カンタン Ubuntu! 」の通りに設定すると、何と無線LANは安定したまま接続できるではないか!
もちろん、最新版の Adebe Flash Player を入れたら、ニコ動も問題なく観れる。
結局、無線LANについては、私の設定が間違っていただけかなあ?

と言うわけで、Ubuntu の昇格も無事終了。
さて、今後、Debian 32bit 版と Ubuntu のどちらが使用率が高くなるか?
もちろん、私はプライベートでは、ほとんど Windows は使わない。

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May 15, 2008

関数電卓を買う

長いこと使っていた関数電卓が壊れた。
少し、括弧を多用する計算をすると異常になる。
9×(1+1÷(1+8))=
等と入力すると、二つめの「(」を入力したときにエラーが出る。
こんな壊れ方は聞いたことがない。これまで、電卓が壊れるのは液晶にひびが入ったように、物理的に壊れることだけで、今回のように計算途中でエラーが出るような事は初めてだ。長いこと使っていたので、今までも括弧を多用した計算をしていたはずなので、最初から異常だったはずは無い。また、括弧を2つ以上使わなければ正常に計算できる。とすると、構文解釈で必要となるスタックと言うかメモリー領域が壊れたんだろうか? とは言え、実際はCPUを使ってプログラムを走らせているのだろうから、物理的にメモリーがあるとも思えず、首をひねるばかりである。

とにかく、使えなくなった電卓を後生大事にしていてもしょうがないので、新しい関数電卓を、東京に出たついでに秋葉原で買った。

HP35sが良いと言う人もいたし、ラジオデパートに在庫があることも確認したのだが、普通の日本のメーカーのものにする。
私は、太陽電池式の電卓は使わないので(理由は、電卓で行う軌道解析・制御設計を)、最も安いシンプルなものにしようと見ている内に、ちょっと500円だけ贅沢をして、1980円の電卓を買った。
いや、しばらく、見ないうちに電卓も進歩したものだ。プログラミング機能こそないものの、分数やルート三角関数がそのまま入力でき、その上、微分積分、連立方程式まで解ける。もちろん、微分や積分や方程式の解と言っても数値計算だけで、Mathematicaのような数式処理(私の場合、フリーのMaximaの方が良く使う)ができるわけではないが、それでも十分である。ニュートン方を使って、任意の方程式の近似解まで求まる。いやはや、大したものだ。これで、1980円とは安い。少し、大きくなったのが残念ではあるが。

う〜〜ん、次に買い替える頃(10年くらい先?)には、数式処理もできるようになるかなあ。
それともネットワーク機能が加わるか!?
(だんだん、電卓じゃなくなってくる)

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May 06, 2008

【人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から】 第6章『これから、やるべきこと』

第6章『これから、やるべきこと』
Asteroidb0601このシリーズは、このコンテンツが最終回だ。

最終回だと言っても、何も解決されていない。
それどころか問題は山積みのままだ。
これから何をすれば、『人類は宇宙へ飛び出せる』のか?

計画の詳細化
もちろん、計画の詳細化は必要だ。
第4章で述べた小惑星帯全体に広がる軌道シミュレーションによる解析や第5章の小惑星開拓用宇宙船の設計の詳細化は言うに及ばない。

むしろ、今まであまり触れていなかった生化学とか農業、食物生産、鉱物資源の活用、金属の製錬、ガラスやセラミックの製造方法、それに伴う道具・工具の選択と製作方法も検討しなければならない。金属の製錬など最新の製鉄技術より、むしろ大昔のヒッタイトや「たたら」の情報の方が役に立つかもしれない。陶器や磁器も役に立つ可能性もある。
さらに、今までは全く触れていない項目もある。医療、災害防止、治安維持などなど。結局、小惑星帯に人類が広がった時、どう言った社会構造になるかと言った問題に行き着く。政治、経済活動、さらには心理学的解析、流通、報道、娯楽などなど、考え出したら、切りが無い。私は、軌道解析や宇宙機設計の専門家なので、最初にあげた項目は、どうやればできるか判るのだが、それ以降の項目に関しては、どこから手を付けて良いやら全く判らない。

情報収集
小惑星が、どう言った組成でできているか、第3章では見て来たかのように説明したが、本当のところは誰にも判っていない。最も進んだ小惑星探査機「はやぶさ」にしてもサンプルリターンに未だ成功していないし、仮に成功しても、何万もある小惑星の一つの例に過ぎない。

小惑星に関しては、判らない事は大きく二つあって、一つは、無数にある小惑星の大部分は未発見なことにある。アメリカでは地上もしくは人工衛星から観測で、今後数多くの小惑星を発見・軌道決定する計画がある。が、これはスペースガードすなわち地球に落ちる可能性のある小惑星の早期発見が主目的で、地球に落ちそうもない比較的遠い小惑星の発見は余り望めない。地球から比較的遠い小惑星の方が、水分が残っていて、人類が宇宙に広がるためには役立つのだが・・

判らないことの、もう一つは小惑星の組成だ。生命を維持するために必要な元素は、全てあるのか? どう言った状態で存在するのか? 金属やシリコンなどは工学的な材料になりそうなものは? その他、重水素でもウランでも、レアメタルでも、どう言ったものが、どう言うふうに分布するのか?
これは行ってみないと判らない。やはり無人の探査機を送るのが必須と言えよう。

小惑星開拓用宇宙船を作る
これは、いきなり宇宙空間で作るのではなく、その前に地球上で作ってみると言うこと。
条件の良い地上で作れないようでは、話にならない。
実際に作ってみれば、いろいろと問題点が浮き彫りになり、また、その解決方法が思い浮かぶだろう。

宇宙空間で作る練習
次のステップは、宇宙空間で作る。
フルサイズの小惑星開拓用宇宙船を作るのは困難だろうから、スケールモデルとか一部分から始めるのが筋だろう。
国際宇宙ステーションの例を見ても判ると思うが、現在の技術レベルでは、地上で、ちゃんと確認したモジュールを宇宙で組み立てるのが関の山。原材料の製錬から始める必要のある小惑星開拓用宇宙船には、まだまだである。
従って、原材料から製錬する技術の習得が必要になる。
もちろん、地球周回軌道上で原材料となる小惑星の水分(氷)、鉱石、岩石が存在する訳ではないので、地球から、それを模擬した材料を持って行く。
材料の製錬には、地上の場合、重力や空気等を利用している場合がある。如何に真空で無重量の宇宙空間で材料製錬を行うかが大きな課題となる。

宇宙空間で生物を育てる練習
真空で無重量の宇宙空間で如何に生物を育てるか。課題自体は、材料の製錬と似ているが、生き物を相手にしているだけ難しい。
これも、小惑星を模した土壌(?)をガラスなどのケースに納め太陽光を当て、生物が育つか調べる。最初は微生物から始め、植物、動物と進める。回りの真空や無重力に加え、温度環境や放射線環境に生物が耐えられるかが大きな課題だ。

実地訓練
本当に小惑星に行って、材料の製錬、開拓用宇宙船の建造、生物の生育の実験をする。もちろん、これも、最初からフルスケールで、できるはずもなく、まずはスケールモデルとか部分的な実験から始めるべきだ。
また、最初から有人で行うことも難しいだろうから、まずは無人機で、やれることからスタートする。
まあ、最初は、水分のある小惑星で、微生物とか植物の栽培ができるところから始めるのが良いだろう。

ロボット
今まで触れていなかったが、ロボット技術も大きな課題だ。開拓用宇宙船をロボットが無人で自動生産できるとは思わないが、少なくとも宇宙という苛酷な環境で、人間が行う作業を手伝うという意味では、ロボットがあれば大きな助けになることは、間違いない。
ロボット技術は、上にあげたような計画のステップのかなり早い段階から、入れて進める必要がある。

最初の一隻
最大の問題は、最初に小惑星に行く宇宙船だ。
2世代目以降の「小惑星開拓用宇宙船」がローテクなのは、既に言ったが、ローテクですむ理由は小惑星開拓用宇宙船は、地球から打ち上げられる事も地球へ帰る必要も無いからだ。
それに比べ最初の一隻は、どうしても地球から打上げられ、その上有人なので、ハイテクにならざるを得ない。

ひとたび小惑星に人類が広がれば、地球と小惑星を結ぶ交通手段は、最初の一隻よりも簡単になる。何故ならば、2隻目以降の地球と小惑星を往復する宇宙船は、小惑星側で建造できるからだ。
地球上で建造して打上げられ小惑星を往復するのも、小惑星で建造され地球と往復するのも似たようなものと思われるかもしれない。だが、旅程の大半を占める惑星間航行時に搭乗員が入る居住区を地上から打上げるかどうかが、決定的に大きな違いを生む。居住区は、少なくとも数カ月から数年、搭乗員が住むために、それなりに広く大きく重くなる。その上、その期間の空気・食料・水を搭載するため、更に重くなる。そして、さらに、その期間の放射線を防ぐために厚く重い防御壁が必要だ。
この居住区を地上から打上げ、小惑星へ行く軌道に乗せることは大変だ。ちょっと計算してみたが、想像を絶する打上げロケットのコストが必要になる。
片や、小惑星で建造する場合、居住区は地上に降りることも打上げる必要も無い。地球の往復は、小さくて軽いカプセルだけで良い。カプセルに乗っている期間は短い(数時間から数日程度以内)ので、狭くても我慢ができるだろう。空気や食料・水も少なくて済む。放射線に関しては、短期間なら重い防御壁はいらないし、そもそも地球近傍なら、地球の磁気が放射線を防いでくれる。カプセルだけの打上げ・大気圏再突入なら、大したこと無い。

最初の一隻は、どうしても居住区込みで地上から打上げなければならないので、最大の問題になる。

夢とも妄想とも言えない話をすると、ロボットを打上げて、それが小惑星で無人で宇宙船を作って、地球に送ってくれたら、一番簡単なのにと思う。
ロボットだけなら、狭いも広いも無いし、空気や食料・水も必要ない。放射線にだって、人間より、ずっと強く作ることができる。
そんなロボットが小惑星の資源を使って、何年かかっても良いから、宇宙船を作り、地球に向かって送くる。最初の搭乗員は、小さなカプセルで打上げられ、軌道上でロボットの作った宇宙船に乗り移れば良いのだ。

とは言え、これは夢のまた夢。完全無人の場所で、ロボットが宇宙船を作れるようになるとは、とても思えない。宇宙船まるごとは無理でも、原料となる資源だけでも小惑星から削り取って送ってくれれば、随分助かる。別に小惑星を一つ丸ごと必要な訳ではなく、せいぜい直径10メートルとか20メートルとかあれば十分だ。

それを言えば、滅多に無いとは言え、数十年とか数百年に一度くらい地球に近付く小惑星を利用すると言う手もある。ただし、この場合、太陽光で水分が蒸発しているので、資源としての魅力は半減するが。

まあ、最初は、やはり地道に地球から打上げた宇宙船から始めるのかなあ。
いきなり、水分の残って居る遠い小惑星から始めるのは難しいので、近場の小惑星に行って、資源が使えるのか、調査する事から始めるべきなんだろう。近い小惑星なら、数カ月から半年で往復できる。この位の期間なら、放射線の防御は少なくて済む。小惑星に着いたなら、穴を掘って中に入るか、砕いた小惑星のかけらを宇宙船の周りに貼り付けておけば放射線を防げる。この砕いた小惑星を宇宙船に貼り付けるアイデアは「はやぶさ」チームの人に頂いた。小惑星は、グズグズの軽石状態なので、簡単に砕け、一度、バラバラになった破片が、宇宙船が発生する微小重力で勝手に周りに貼り付くだろうとの事。そんなに上手く行くのか?

近場の小惑星から始めた場合、水は無いので地球から持って行くしか無いが、それ以外の資源はそれなりにあるだろう。ここで、惑星間宇宙船を作って、さらに遠い小惑星に行くという訳。

最初に近場の小惑星に行く宇宙船のコストは見積もった事がある。で、1兆4000億円と出た。もっとも、私の見積もりは甘く、もっとかかるかも知れないとも言われるが。実は、昨年春、某組織の某理事長に、この1兆4000億円の宇宙船を作りたいと持って行ったら、「時期尚早」と断られ・・・・(以下、自粛)

なぜ、月や火星でないのか?
なぜ、月や火星よりも、小惑星から始めた方が良いか。この問に答えて居なかったのは、まず、私の小惑星構想を説明してからでないと、答えができないからだ。
もう、お分かりだと思うが、月や火星では、「ローテク宇宙船」で人類が広がらないのが、その理由だ。また、月や火星の資源の乏しさもある。それにエネルギー源に太陽光を使うなら、太陽から遠かったり、表面積が少ないのが不利だ。小惑星なら、無重力下で巨大な太陽電池なり集光鏡を開くなりすれば良い。核分裂や核融合を使えれば話は別だが、もし、核融合が使えるなら、月や火星より地球の方が良いかもしれない。
何より、火星から始めると、結局、地球の再現にしかならないと思うのだ。先行き行き止まりの今の地球に。
もちろん、反論もあるであろう。
私も、最終結論には達していない。

宇宙に出て、何が良いのか?
さて、最後の最後に、「何故、宇宙に人類が出る必要があるのか?」「宇宙に出たことによって、その人は幸せになれるのか?」と言う哲学的な問いに答えなければならない。

長いこと、30年位の間、考え続けて居るが、一般・普及的な答えは未だ得て居ない。
あらゆる人が喜び勇んで宇宙へ出て行く論理的完全性を持った理由など無いのだろう。

だが、一方で、宇宙へ出て行きたいと切に願う人が居るのも事実だ。私のように。
私は、人類のために宇宙へ出ることが必須だと信じて居る。論理的完全性を持って説明できない以上、それは、論理的ではないかもしれないし、むしろ直観的なのかも知れない。
少なくとも、それに挑戦する努力を惜しむ事はしたくない。


「小惑星など、何も無い寒く暗い所に行って、穴を掘って中に住むなど、生きて居て何の楽しみがあるのか?」とも言われそうだ。

だが、私は、小惑星に行って住むことができたら、やりたいことが山ほどある。手初めに30メートル程の直径の望遠鏡を作って、天体観測をする。
核融合を使った推進システムの研究をする。太陽エネルギーで動く粒子加速器を作って、反物質を作る。作った反物質を使った推進システムの研究をする。時間と空間を歪める研究をする。最後の奴は、理論も方法も何もかも未だ判らないが・・・

これらの事は地球上ではできないし、仮にやったら、他の人に迷惑をかけそうな事ばかりだ。誰も居ない小惑星にこそ相応しい。

「何のために、そんな事を・・・」
決まって居るでしょ。
上にあげた研究は、すべて恒星間飛行に繋がる科学・技術だ。

人類は、必ず、星の世界へ、銀河の彼方に広がる。

なにもかも、みな始まったばかりだ。

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May 05, 2008

12 コア CPU を FPGA に

堅い話題が続いているので、ちょっと休憩。

雑誌の付録の FPGA で遊んで居る。
25万ゲートとは言え、オンチップでメモリーに使えるのは 24k バイトが上限なので、ワンチップ・マイコンとして使うなら、そんなに大規模ではない。小規模な組込み制御用のマイコンとして、適当なCPUコアを入れてリアルタイムOSをインストールできないか、調査し始めた。

調査を進めるうちに、疑問が芽生えて来た。
適当なCPUとリアルタイムOSが見つからなかった訳ではない。

「ワンチップ・マイコンとしてリアルタイムOSを走らすことに、FPGAの使い方として、何のメリットがあるというのか??」と

市販のワンチップ・マイコンに比べて、FPGAにCPUコアを入れることが有利な点は、インターフェース部分を自由に作り替えることは可能な事くらいだ。それ以外は、市販のワンチップ・マイコンの方が遥かに有利だ。数百円も出せば、H8 や SH-Tiny など、FPGA の何倍ものメモリー容量を持つワンチップ・マイコンが買えるし、それらでリアルタイムOSを使って居て、何の不便も無い。
もし、インターフェースを自由に作り替えたいなら、数百円のワンチップ・マイコンに、これまた数百円で買える数千ゲート級の CPLD を付けた方が大容量FPGAを使うより安くて早い。

FPGA でなければ、実現できないような事じゃなきゃ、試しても意味が無い。

そもそも、何故、リアルタイムOSを使うかと言うと、組み込み制御のマイコンの場合、いくつかの処理を組み合わせている場合が多いからだ。プログラミング・テクニックを駆使して、複数の処理を一つのタスク上で時分割に行うよりも、リアルタイムOS上で複数のタスクに各々の処理を任せた方が楽だ。

だが、本当に「複数の処理を行うには、リアルタイムOSでマルチタスクで行う」のがベストなんだろうか?
考えてみれば、大きな前提条件として「複数のCPUを組み合わせるのは難しい」があって始めて「リアルタイムOSがベスト」と言える。

もし、「必要なタスクの数だけCPUがある」のなら、リアルタイムOSは必要ないのかもしれない。

私自身のリアルタイムOSで作ったプログラムをみると、タスクの数は概ね6〜8個迄である。もちろん、大きなプログラムで、もっとタスクの数が必要になった時もあるが、それはむしろ例外的だ。大概の場合、10個程度のタスクが使えれば、それなりに使えそうだ。

市販のマイコン・チップは、当然のことながら、1つのチップで、1つのCPUコアしかもたない。最近では、SH などでもデュアルコアのチップが出始めたが、これは極めて例外的だし、それとて CPU コアの数は2個が上限だ。

今までは 10個のCPUが必要なら、10個のマイコン・チップを接続するしかなかった。これは大変な手間である。こんな手間をするくらいなら、リアルタイムOSの方が、ずっと楽だ。

だが、FPGA だと話は別だ。複数のCPUコアを一つのチップ上に入れることなど、造作もない。実際、25万ゲートのFPGAにZ80コンパチCPUを入れた時、半分も使って居なかったので、少なくとも2つの Z80 CPU をいれることは可能だろう。

もっとシンプルな CPU なら、もっと沢山の CPU が FPGA の中に入るかもしれない。

FPGA 上にマルチコアを入れ、各々のCPUコアに一つずつタスクを割り当てるなら、Z80 よりシンプルな機能の CPU で十分だろう。割り込みも必要ない。そもそもリアルタイムOSは使わないし、また、割り込みが必要なタスクには、それぞれ専用の CPU を割り当てるからだ。

ネットで調べた結果、XILINX が 公開している PicoBlaze と言う CPU が、コンパクトで良さそうだと判った。PicoBlaze は正確にはオープンソースでは無いのだが、無料で使えるので、CPU を何個 FPGA 上に作ってもロイヤリティーの問題は無い。ただ、PicoBlaze は割り込みの機能があるのだが、これは使わなければ良いだけの話だろう。

いろいろ試して、25万ゲートの FPGA に 12個の PicoBlaze CPU を乗せることに成功した。

それぞれの CPU 間は、メッセージ・キューやセマフォにあたる機能をハードウエア的に作って接続し、データの受け渡しや並行処理の同期を行っている。まだ、共有メモりにあたるものは実装していないが、作るのは難しくは無さそうである。

各 CPU は、PCCOMP と言う専用の C コンパイラでプログラミングした。実は、この C コンパイラの癖が強いのが、最も苦労したところだ。もっとも PicoBlaze と言う CPU 自体がプログラムエリアは 2k バイトと、それなりの容量なのに、リード・ライトできるデータエリアが僅か 64 バイトと極端に少ないので、あながちコンパイラの所為とも言い切れない。

とりあえず、12 個の CPU を1つの FPGA に乗せ、何とかデータの受け渡しや処理の同期を試したと言うのが本当のところで、まだまだ、複数 CPU による複数タスクの効果を確認したところまで達して居ない。

次の課題は、少なくともマルチ CPU ・マルチタスクの効果を確認できるような使い方を試す事だと思う。

ちゃんと実用になるためには、もう少しプログラミングしやすい CPU が欲しいところだ。コンパイラとして gcc が使え、メモリーは 2k バイトでも良いから、プログラム領域とデータ領域が共用できて欲しい。MIPS のようにメジャーな CPU のオープンソースの互換コアで、割り込み等は省略しても小さいサイズのものを探すべきなのかも知れない。

もっとも、理想的な CPU が見つかって、多数の CPU を FPGA に乗せることができても、何等かの理由で、リアルタイム OS の方が使い勝手が良いと言う結論になる可能性もある。

それを確かめるためにも、頭の中で考えるだけじゃなくて、実際に試してみなきゃいけないんだよねえ。

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May 04, 2008

【人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から】 第5章『小惑星開拓宇宙船は 19世紀のテクノロジー』(2/2)

第5章『小惑星開拓宇宙船は 19世紀のテクノロジー』(2/2)
Asteroidb0502(前回からの続き)
さて、話を小惑星開拓宇宙船に戻すが、少なくとも推進システムに関しては、問題点は、ハイテクのエンジンを作ることでは無いことが判ったと思う。問題は、どうやって、小惑星で、ブリキや真鍮の板、銅パイプなどの材料と金鋏や半田ゴテと言った道具を手に入れるかである。これら、ホームセンターで簡単に手に入るような一般的な材料や道具を小惑星の資源から作るかが最大の問題になる。

同じことは、小惑星開拓宇宙船の船体自体にも言える。多くの人は、宇宙船は、飛行機やロケット・人工衛星などのハイテクの素材より、さらにハイテクな材料で作らなければならないと思っているだろう。実際、スペースシャトルなどは、ハイテク構造材料で作った船殻を更にハイテクな断熱材で覆っている。

一般的に構造材料の進歩は、より軽く、より強くと言う方向に向かった。金属材料に限定しても、青銅から鉄、アルミ、マグネシウム、チタンと言う流れは、そのまま、軽く強くの方向性を示す。石材、木材、樹脂、複合材などの非金属の材料も同様だ。
ハイテク構造材料は、特に軽く強くに特化したものだ。これはスペースシャトルなど、地上から打上げられる宇宙船は、打上げ重量に制約があり、その上、急加速・急減速と言った荷重に耐えなければならないためである。

だが、小惑星開拓用宇宙船は、ほとんど重力の無い宇宙でだけ使われる。つまり、打上げによる重量制約も無ければ、急加速・減速の荷重も無い。構造材料が受ける最大の荷重は、内部の気圧に耐えることだろう。
内部に人が乗る以上、内部は大気圧にする必要がある。この内部圧で、破裂しない強度を保つのが、船殻の最大の荷重条件にある。とは言え、スペースシャトルのように打上げ時の重量制約は無いから、強度の低い材料でも、分厚く覆って重量が増えても問題ない。

小惑星開拓用宇宙船が、ローテクの構造材料、例えば、青銅や石材で分厚い船殻を作り、重くなるのは、不様だと思われるかもしれない。

分厚くて重い船殻は無様どころか、放射線を防ぐのに必要不可欠だ。小惑星軌道に限らず、地球から離れた宇宙には放射線が多い。地球の表面から1000キロ以内の高度なら、地球の磁気に守られ、比較的放射線が少ない。国際宇宙ステーションは、この範囲にいるので、比較的薄いハイテク船殻でも、放射線の問題が少なく、半年とか一年の長期滞在が可能だ。

だが、それより高度が高くなると、バンアレン帯が広がり、その外側は、太陽や銀河を起源とする放射線に満ちている。静止軌道だろうが、月だろうが、火星だろうが、小惑星だろうが、放射線に満ちていることには変わりは無い。

この領域の放射線を防ぐには有効な手段は質量しか無い。船殻1平方メートルあたり10トンの質量があれば、地上と同じレベルまで放射線が減ると言われる。

仮に、小惑星開拓用宇宙船を軽いハイテク構造体で作っても、その船殻の外に分厚く重い放射線防御材で包まなければならない。そんな無駄な事をするくらいなら、最初からローテクの構造材料で分厚い船殻を作った方が速い。もちろん、大気圏再突入はあり得ないから、ハイテクな断熱材の必要も無い。

このように、推進システムも船殻もローテク素材で作れることが判った。それも鉄器どころか青銅や石材でも造れるかもしれないとすると、19世紀どころか紀元前の技術レベルだ。

とは言え、燃焼エネルギーが使えず、有効な熱源が太陽光だけとすると、青銅や鉄・銅を、どうやって作り出すかの問題は残る。

ところで、小惑星軌道の温度環境を考えると、船殻の構造材料で「氷」が有望だと思えて来た。太陽光を凹面鏡で集めて、小惑星の凍った水分を融かし、濾過した後、再び凍らすことで船殻を造る。
強度上の不安があれば、ガラス繊維で強化する。ガラス繊維は岩の酸化珪素を融かし、糸状に伸す事で作れる。このガラス繊維で、船殻の形状を編み物のように作る。その後、ガラス繊維の隙間に水を流し込み、凍結させれば良い。つまりFRP=ガラス繊維強化プラスチックならぬガラス繊維強化氷だ。
こうすれば、内部の大気圧にも十分耐えられるだろう。

でも、氷で船殻を作った場合、中は寒そうだ。断熱材は、外側ではなく、中側に必要だね。

小惑星開拓用宇宙船で、他に重要なのは生命維持と電子機器だ。
生命維持に関しては、小惑星には、人類の生存に必要な元素はあると思う(もっとも誰も確認して居ないから調査が必要だ)。
だが、元素があっても、使える状態にあるかどうかは別問題だ。結局、植物を育て、酸素などの呼吸可能な空気と食べ物を得る必要がある。太陽光は少ないとは言え、太陽から届くので、これを使うしかない。
人間が食べ呼吸した後排出された物質を植物を使い、再利用するサイクルを作れれば良いのだが、如何にも大変だ。小惑星上で宇宙船建造と並行して、航海の間に必要な空気と食料をまとめて作る方が良いかもしれない。

もう一つの電子機器は大問題で、こればかりは19世紀以前の技術レベルで作ることは困難だ。LSI等の半導体は小さく軽いものなので、地球で大量生産し、無人機で送った方が良いかもしれない。
もしくは、真空管だ。宇宙空間だから、回りは真空だ。剥き出しのプレート、グリッド、カソード、ヒーターがあれば、真空管になる。ヒーターは電気を使うことは無い。裏側から太陽光を集めて熱すれば良い。
いくら、真空管が作り易くても、真空管でコンピューターを作ると ENIAC 並に大規模になってしまう。やはり、真空管は繋ぎで、本命は半導体だろうか? 最初のうちは地球から送り、いずれは小惑星の一つに大規模なシリコンウエファ・半導体工場を作って、小惑星帯全体に配った方が良いかも。

小惑星開拓用宇宙船の電源だが、小惑星帯に半導体工場ができるまでは、太陽電池ではなく、スターリングエンジンを使った方が、作り易いだろう。

とまあ、小惑星開拓用宇宙船の設計は、ここまでだ。
「えぇっ、これだけ?」とか「面倒臭いから手を抜いたな」とか言われそうだ。
だが、事実は逆である。
私は、こう言った未来的な機械のコンセプト設計が大好きで、生業にもなっているくらいだ。この小惑星開拓用宇宙船の設計も、やり始めたら止らないほど楽しい。詳細を考え出したら、時間を忘れる事もある。

しかし、前回も述べたが、ここで無闇に詳細検討し、時間を潰すことは、むしろマイナスだと判断した。
だから、今回は、最低限のイメージを伝えるアウトラインだけで止めた。このアウトラインだけでも、夢を膨らませる事もできるだろう。

さて、「自己増殖型宇宙船」と大見え切ったが、蓋を開けて見れば、「手先の器用な人が乗って居れば、何とか手作りできるくらいの低い技術レベルの宇宙船」だと言うだけだ。
じゃあ、どの位、手先の器用な人が必要かと言うと、ジャニーズのTOKIOのメンバー位の人かなあって思って居る。
鉄腕DASH観てると、鉄瓶でもガラスでも磁器でも何でも原材料から手作りしてるよねえ。

実際、DASH村を観ながら思い付いたんだよねえ、この小惑星開拓用宇宙船のアイデア。

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May 03, 2008

【人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から】 第5章『小惑星開拓宇宙船は 19世紀のテクノロジー』(1/2)

第5章『小惑星開拓宇宙船は 19世紀のテクノロジー』(1/2)
Asteroidb0501いよいよ、お待ちかねの宇宙船の設計だ。
小惑星の開拓するのだから、「惑星間航行宇宙船」だし、もちろん、人が乗るのだから「有人宇宙船」、その上「自己増殖」できるのだから、一体全体どうなっているのだろう・・・って、皆さん期待していらっしゃるかと思う。
だけど、悪いが、期待は裏切らせてもらう。
小惑星の開拓に使う宇宙船は、見るも無残な「ローテク宇宙船」なのである。

「自己増殖」と聞くと、SFならナノマシンとかの怪しげな名前のオーバーテクノロジーで「実現」するのが常套手段だ。だが、難しい技術を、より難しい技術で「実現」するのは、「実現」じゃなくて「誤魔化し」に過ぎない。
本当に実現させたいなら「難しい技術」を「簡単な技術の組合せ」にしないといけない。

そもそも、小惑星開拓宇宙船は有人で搭乗員が乗って居るのだから、無人で完全自動の自己増殖を考える必要は無い。搭乗員に新たな宇宙船を作ってもらえば良いのだ。

簡単に「搭乗員に新たな宇宙船を作ってもらう」と言っても、「『小惑星開拓宇宙船』って『惑星間宇宙船』だろう? そんなもの簡単に作れるのか!?」って思われるだろう。
それは、『惑星間宇宙船』のイメージがそう思わせて居るのではないか?

『惑星間宇宙船』と言うと、映画『2001年宇宙の旅』のディスカバリー号が有名だ。その他にも『惑星間』ではないが、宇宙船のイメージはスターウォーズの巨大宇宙戦艦だったり、スタートレックのエンタープライズだったり、、宇宙戦艦ヤマトだったり、とにかく、巨大でハイテクで真っ白で恐ろしく清潔だってイメージがある。

『ディスカバリー号みたいな惑星間宇宙船』を、搭乗員にだけで作る・・なんて、想像できないよね?
まあ、搭乗員だけじゃなくっても、地球の工業力を使ったって、ディスカバリー号自体を、どうやって作るか見当も付かないが・・・

だいたい、『惑星間宇宙船』と言えば、高性能な推進系、例えば液体酸素・液体水素のロケットエンジンだとかイオンエンジンとか、最低でも2液式のヒドラジン系推進系を使わなきゃならない。かのディスカバリー号に至っては、推進のエネルギー源は原子力だ。
今あげた推進系なりエネルギー源なりは、どれ一つ取っても、搭乗員が簡単に作れるような品物ではない。だから、どう考えても『惑星間宇宙船』を搭乗員がゼロから作るって事は在り得ない。

と、誰もが思う訳だ。
だが、本当にそうだろうか?
本当に『惑星間宇宙船』には「ハイテク」が必須なんだろうか?

ここで、私は大胆にも『小惑星開拓宇宙船は 19世紀のテクノロジー』で作ると言ったら、どうだろう。
少なくとも推進システムは『19世紀のテクノロジー』だと言ったら。

「本当に『19世紀のテクノロジー』で、惑星間航行用の宇宙船なんか作れるの???」と言われそうだ。

だが、逆に問いたい。
「じゃあ、小惑星開拓宇宙船を造るテクノロジーとは一体どの位のレベルなのか?」
言い換えれば「小惑星開拓宇宙船に必要なのは何?」

実は、前回のコンテンツで、軌道シミュレーションの話題を振ったのは、「小惑星帯に人類が広がるための小惑星開拓宇宙船に最低限必要な機能・性能を計算する」ためだったのだ。

前回のコンテンツで書いたように、詳細なシミュレーション検討が済んでないので概算だけだが、「ΔVが 200m/s で、地球重力の 1/100 程度の小惑星から離陸できる小惑星開拓宇宙船が、ホーマン軌道を使うとし航行期間を 4年とすると、480年で小惑星帯全体に人類は広がる」と計算できた。
もちろん、これは最悪の最大値で、これらの数値は、詳細なシミュレーション検討を行うと下方修正される可能性が高い。

とは言え、現時点で言える「小惑星開拓宇宙船に必要な機能・性能の要求諸元」は
・ΔVが最大 200m/s
・最大で地球重力の 1/100 程度の小惑星から離陸
・航行期間が最大4年
である。

この中で、「ΔVが最大 200m/s」と「最大で地球重力の 1/100 程度の小惑星から離陸」が、宇宙船の推進システムが必要な性能を決める。当然の事ながら、この二つの数値が大きい程、推進システムは高性能を要求される。では、先の「200m/s」と「1/100G」が大きいのか、小さいのかで言うと、宇宙の常識から言えば、とっても小さい値なのである。

普通、地球から宇宙に出るだけで、少なくとも 7900m/s のΔVが必要で、惑星間飛行するためには、目的地により異なるが、更に数千から数万m/s のΔVが必要になる。このように大きなΔVが必要な場合、搭載すべき燃料を減らすために、液体酸素・液体水素ロケットエンジンだとかイオンエンジンだとか原子力エネルギーと言った「噴射ガス速度の速い∝比推力の大きい」ハイテク推進が必要になる。

また、離床するときの推進力も、地球からなら、当然の地球の重力に逆らって上昇するだけの力が必要だし、火星からなら地球重力の半分、月からなら6分の1の重力に逆らう推進力が必要だ。

つまり、小惑星開拓に必要な推進システムは、地球から出発する場合に比べて、1桁から2桁小さいΔVに見合った「噴射ガス速度∝比推力」と、同じく1桁から2桁小さい重力に見合った「推力」しか必要ないのである。

これほど、小さい「噴射ガス速度∝比推力」と「推力」への要求だと、推進システムの性能を思い切り下げることができる。

ここで思い付いたのが、19世紀のテクノロジー「蒸気機関」である。

小惑星にある水分をボイラーで熱し、沸騰してできた蒸気の圧力を、噴射して推力を得る。これが、小惑星開拓ロケットの推進システム「蒸気ロケット」だ。
エネルギー源は太陽光だ。大きな凹面鏡で太陽光を集める。

蒸気ロケットのアイデアは、古く、19世紀からある。宇宙での応用もSF小説ラリー・ニーヴン著「インテグラル・ツリー」に出てくるし、その他にも色々な作品で使われて居る。ちょっと違うのは、真空中で使うことと熱源に太陽光を使うことくらいだ。

ざっと計算してみると、1気圧で摂氏200度まで蒸気を温めると、蒸気ロケットの性能は、噴射ガスの速度が 934m/sすなわち比推力 98.3s になる。空気中と違い、圧力を高くしても性能は余り向上せず、むしろ温度を高くした方が性能向上に寄与する傾向にある。まあ、無理に性能向上を目指すより、1気圧で摂氏200度で十分だろう。

この性能だと、ΔV=200m/s を出すのに必要な推薬量は、宇宙船の初期質量の 20パーセントだ。つまり、最初の段階で、宇宙船の総質量が100トンなら、20トンの推薬つまり水が必要だということだ。推薬が、初期質量の 20パーセントと言うとかなり多いような気もするが、そうでもない。一般的な打上げロケットは、初期質量の90パーセント以上が推薬である。

「1気圧で摂氏200度」と言うのは、難しい技術レベルだろうか?
蒸気機関車を作った事のある人なら判ると思うが(蒸気機関車を作った人が、そうそう居るわけないと思われるかもしれないが、少なくとも私には知り合いが居る。人の乗る本格的な蒸気機関車の場合、蒸気圧は10気圧以上、模型のライブスチームでも 3.5 気圧程度だ)、1気圧というのは大した事ない。自動車のタイヤ圧が2気圧以上、ペットボトルの耐圧が7気圧であることを考えると、小惑星開拓宇宙船の推進システム用蒸気ロケットのボイラーの強度は、自動車のタイヤの半分、ペットボトルの耐圧の 1/7 になれば良い。

また、温度の 200度と言えば、テンプラ油の温度より、ちょいと高い程度だ。

スペースシャトルの液体水素・液体酸素ロケットエンジンの燃焼室内の 200気圧、3000度と比べたら、笑っちゃうほど簡単だ。

ホームセンターで、ブリキか真鍮の板を買い、金鋏で切って半田すれば、200度 1気圧に耐えられるボイラーを作るのは簡単だ。これに銅パイプとバルブを介して真鍮などで作ったノズルを付ければ、推進系の完成である。

簡単に作れるように書いたが、くれぐれも本当に作らないこと。理由は二つあって、一つは耐圧検査の方法を知らなかったり安全弁を付けないと危険だし、もう一つは大気圧下では蒸気ロケットはロクな性能が得られないからだ。大気圧と蒸気圧の差圧を1気圧として、蒸気圧を2気圧とすれば同じと思われるだろうが、そうではない。ロケットの性能は、内圧と外圧の差ではなく、比を使っている部分が大きい。真空中での200度 1気圧の蒸気ロケットと同じ性能を大気圧下で出そうと思うと、200度 20気圧が必要となり、これは大変危険な数値となる。
(この章、長くなってので、以下、次回に続く)

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May 01, 2008

【人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から】第4章『小惑星開拓計画』

第4章『小惑星開拓計画』
Asteroidb0401さて、いよいよ、どうやって小惑星に人類が生存圏を広げるかと言う話をする訳だが、たぶん2つの事で皆さんが想像する「小惑星開拓プラン」のイメージに対して期待を裏切ることになると思う。まあ、「期待を裏切る事」自体が「パラダイムシフト」を意味しているのだと理解していただきたい。

期待を裏切る一つ目は「小惑星の開拓は地球を中心に行われる訳ではない事」で、二つ目は「開拓用の宇宙船はハイテクではない事」だ。

小惑星を開拓し、その資源を有効に使うとすれば、地球でハイテクの豪華な宇宙船を打ち上げ、その船で小惑星の資源を掘り、持ち帰ることを想像するだろう。

もし、地球から宇宙船を打上ると、小惑星に着くのは、打ち上げ質量の数パーセントにも満たない。宇宙ステーションのような地球周回軌道上で、宇宙船を組み立てたとしても、小惑星に着くのは20〜40パーセント程度だろう。軌道上で組立る方が効率が良さそうに聞こえるが、組立てに必要な物資を地上から打上るのであれば、元々の打上げ時での質量からの効率に変化はない。

小惑星に到着し、資源を採取して地球に送り返すと、地球に送ることのできる量は、小惑星に到着した時の質量よりも少ない。もし、小惑星で燃料を補給できれば、改善されるが、それでも到着時の質量よりも多のなることは無いだろう。

小惑星から地球へ持って帰る物資の量は、地球から打上げ時の質量よりも、ずっと少ない。
もちろん、ロケットを改良し、高効率の燃料やエンジンを使ったり、大型化したり、イオンエンジン等を使ったり、色々と改善の余地はあるだろうし、改良毎に効率は良くなるかも知れない。だが、どんなに改良しても、小惑星から持って帰る物資の量が打上げ時の質量より多くなることは無いだろう。

どんなに効率が幾ら良くなっても、打上げ時の質量を越えなければ同じである。効率が0.01パーセントであろうと、10パーセントであろうと、極端に言えば、99.99パーセントであろうと、全て同じ結論だ。

最初の打上げから物資が減り続けるなら、いずれは先細りで行き詰まりだ。発展性は全く無い。

小惑星開拓を大航海時代の帆船と同じアナロジーで語れないのは、ここにある。帆船なら本国で建造し、風を受けて何度も航海し、物資を輸送すれば、いずれ、その船以上の物資を、もたらすことができる。
ロケットの場合、地球から打上げて小惑星に送る時に大量の燃料が必要なため、最初の投資以上のリターンが得られないのだ。「ロケットを再利用型にすれば」という意見が聞こえてきそうだが、それも駄目だ。仮に、ロケット自体が何度も使えても、燃料が大量に必要なので、結局は初期投資を越えることは無い。

根本から、考え方を改める必要がある。「地球で組立てて、地球から打上げ、地球に帰る」と言う地球中心的な開拓プラン自体が間違っているのだ。

要は、地球に帰らなければ良い。
小惑星開拓用宇宙船は、小惑星帯で建造され、航行し、小惑星から小惑星へ移り住み、新たな小惑星で、次の世代の小惑星開拓用宇宙船を建造すれば良い。

つまり、「自己増殖型宇宙船」である。

「この話、何処かで聞いたことがある」と思った人も居るだろう。そう、これはノイマン・マシンに、そっくりだ。
コンピュータの始祖とか言われて居るフォン・ノイマンが、火星などの惑星を開拓するなら、単純に開拓用の無人ロボットを送り込むより、自己複製・増殖型のロボットを送り込み、惑星の資源を使って、ロボットが増殖した後、開拓作業を行った方が、結局効率的だと提唱したのが、ノイマン・マシンだ。

私の言う「自己増殖型宇宙船」は、ノイマン・マシンの一つのバリエーションだ。ただ、私は無人の自動機械でノイマン・マシンが作れると思うほど楽観視していない。予想もできないことが起こるかもしれない宇宙で、自分自身を複製するためには、人間の手助けは不可欠であり、従って「自己増殖型宇宙船」は乗組員の居る有人宇宙船だ。

さて、「自己増殖型宇宙船」が、どのような仕組み・構成になっているか、皆さんも知りたいと思うかもしれない。が、それは次回の楽しみに取っておいて、今回は、「自己増殖型宇宙船」が、どのように小惑星全に広がり、人類の生存圏を広げて行くかについて説明しよう。

小惑星にも色々な大きさがあるが、最大の小惑星でも表面での重力は地球の 1/100 程度であり、もっと小さな小惑星なら、重力は更に小さい。
また、自己増殖型宇宙船の軌道マヌーバー能力が、ΔVが 200m/s もあれば、太陽からの軌道半径が6億キロ程度の小惑星帯の中では、1500万キロも軌道半径をは変化させることができる。
小惑星から小惑星に移るまで、ホーマン軌道を取るなら、8年の公転周期の半分である4年が必要だ。新しい小惑星に到着後20年で、次の世代の宇宙船を製造できるなら、24年で2倍になる。このままのペースで増え続けると 240年で1024倍、480年後には 100万倍となり、小惑星の総数を越える。
つまり、小惑星帯全域に宇宙船が広がったことになる。もちろん、全ての小惑星に宇宙船が広がった事が、小惑星帯に人類が広がった事にはならないかもしれないが、それは時間だけの問題になりそうだ。

小惑星全体に行き渡るのに 480 年と言うのは、時間がかかり過ぎると思われるだろうか?
それとも意外と短いと思われるだろうか?

いずれにしろ、480年は、ざっと計算した概算であり、最悪値と考えて良いだろう。実際は、ホーマン軌道よりも時間のかからない軌道を選ぶことも可能だし、小惑星から小惑星への航海一回毎に一隻作るよりも二隻も作る方が効率が良いかもしれない。

何万もある小惑星を、どんな順番で辿って行き、更に一カ所で何隻作るのが最適なのか? それは簡単には分からない。コンピュータでシミュレーションしてみれば、どう言ったやり方が良いのか分るかもしれない。

現状判って居るだけの小惑星の軌道データをコンピュータにインプットしておき、開拓用宇宙船の持つΔV能力をパラメータとして設定し、さらに次の世代の宇宙船を製造するのに必要な期間を想定すれば、小惑星帯全体に広がる最適な経路と期間が計算できる。

最適な経路を求めると簡単に書いたが、実は、そんなに簡単ではない。「巡回セールスマン問題」などを考えた人なら判ると思うが、地球上のように街と街の位置関係が変化しない場合でも、街の数が増えるに従って、経路の組合せは指数関数的に増える。小惑星の場合、太陽の回りを公転して居るので、時々刻々位置関係が変化する。だから、最適解を求めるのは、より難しくなる。数万を越える小惑星を最も短い期間で開拓する経路の厳密な最適解を求めることは不可能で、現実的には、「まあ、これなら妥協できるなあ」位の「準最適解」を求めるしかない。「準最適解」を求めるなら、コンピューターシミュレーションが役に立つ。

航海用の軌道計算のシミュレーションプログラムを作ることは、そんなには難しくない。何処かの天文台で公開されて居るであろう小惑星の軌道データを入手する。現時点では全ての小惑星の軌道データが正確に判って居る訳ではないから、足りない部分はランダムに生成しても良いかも知れない。

これらの小惑星の内の2つを選び出し、ランベルト法などを用いて、それらの小惑星間を航行するのに必要なΔVと航行期間を求める。
こうやって求めて経路を組合せて、「準最適解」を見つければ良い。

シミュレーションプログラムが、そんなに簡単に作れるのなら、さっさと自分で作れば良い。そう言われそうだ。だが、軌道計算のシミュレーションのプログラミング自体は2〜3週間でできるだろうが、その後がとてつもなく時間がかかるのだ。

実際、私は「準最適経路」を求めるコンピューターシミュレーションを作ろうとしていた。そのために、わざわざデュアルコアのパソコンを購入したほどだ。
だが、プログラムの準備をして居るうちに、満足できる解が得られるには2〜3週間どころか、半年・1年以上の時間がかかる事に気が付いた。それは「経路の組合せ」が余にも複雑だからだ。

囲碁や将棋を思い浮かべて欲しい。
碁盤や将棋盤の升目の数や石・駒の数は、小惑星に比べて遥かに少ない。だが、その組合せは事実上無数にあり、両方とも千年を越える歴史を持ちながら、完全解を求めるには、その糸口をすら、見つかって居ない。
では、囲碁や将棋が千年以上の歴史で進歩しなかったかと言うと、そうではない。勝つための方法とか戦略が作られた。つまり「定石」と言うやつである。

先に述べた2〜3週間で作れる軌道計算のシミュレーションとは、囲碁や将棋で言えば、石や駒が何処におけるか、どう動かせるかを判定する言わば碁盤や将棋盤である。

だが、「定石」を見つけるのは、そんな短期間で済むとは思えない。どんなに短くても数カ月から半年、下手をすれば、数年以上かかってしまうかも知れない。
『人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から』シリーズの第一回目でも言ったように、このように長期間時間がかかると予想される解析は、まだ行っていない。

シミュレーションプログラムを作り、定石を探す解析を行っていないのは、単に時間がかかり、これの完了を待っていると「小惑星ネタ」のコンテンツが何時迄経ってもアップできないことが理由であり、決してシミュレーションプログラム作りや解析作業が面倒だからではない。
逆に、私の性格から言って、このようなプログラム作りや解析を一度始めてしまうと、面白くて没頭してしまい、それこそ寝食惜しんで時間の経つのも忘れかねない。

既に述べたように、小惑星の位置関係は、時々刻々と変り続ける。どのタイミングで小惑星から小惑星への航海を始めるのか、どう言ったアルゴリズムを用いることで、効果的に拡大していくか・・と言うだけでも面白い。その上、未知の小惑星が発見された時に効果的に対応できるアルゴリズムも面白い。

前回のコンテンツでは、あたかも太陽系の小惑星は全て同じような成分比率でできているように書いたが、実際は、いろいろな種類の小惑星がある。太陽に近い小惑星が程、水分が少なく、遠いほど水分が多いのは原則的には正しいのだが、長い年月の間に木星などの巨大惑星の引力で混ぜられているため、太陽に近いところに水分の多い小惑星が来たり、遠いところに乾いた小惑星が行ったりする場合もある。

また、遠い昔、より大きな惑星に形成される途中まで成長した小惑星もある。このような小惑星は、一度ぶつかり合って、高温で溶け、地球の核のように中心に重い金属などが集まり、周辺部に軽い元素が取り残される。形成途中の惑星が、再び大きな小惑星などと衝突して、バラバラになった時、中心部分だった場所は、金属が多い小惑星になる。

このように小惑星の種類が多いことを考慮すると、一度に次世代の宇宙船を造るよりも、金属の多い小惑星で船体を造り、水の多い小惑星で燃料や食料を載せるなど、分割した方が良いかもしれない。

全く逆に、幾つかの小惑星に造船所を集中し、宇宙船を大量生産した方が効率的かも知れない。

緊急事態には、どう対処するか?
ある程度の応急治療は、各宇宙船でできるようにするのは当然だが、大きな手術のできる大病院を小惑星帯に、どう配置し、どのように搬送するのが効果的か?

課題はいっぱいある。これらは一朝一夕で答えが得られるほど簡単な問題では無いし、検討するにはコンピュータの助け無しには考えられない。

それこそ、シムシティならぬシムアステロイドでもなりそうな位、楽しそうだ。

「楽しそう」だからこそ、今回は手を付けなかった。
「小惑星全体に広がるのは最大で480年後」と言う概算にとどめた。この「480年後」とは、囲碁の勝敗が決まるのは、升目の交点の数である「361」にマージンをプラスして「おおよそ400手以内だろう」と言っているのに等しい。囲碁を知っている人なら判るだろうが、普通囲碁の勝敗が決まるのは、200手強だ。

同じように、ちゃんとアルゴリズムが見つかれば、480年より大幅に短くなるだろう。それが、半分なのか3分の1なのか、はたまた、ずっと少ないかは、まだ誰も知らないが。

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