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May 04, 2008

【人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から】 第5章『小惑星開拓宇宙船は 19世紀のテクノロジー』(2/2)

第5章『小惑星開拓宇宙船は 19世紀のテクノロジー』(2/2)
Asteroidb0502(前回からの続き)
さて、話を小惑星開拓宇宙船に戻すが、少なくとも推進システムに関しては、問題点は、ハイテクのエンジンを作ることでは無いことが判ったと思う。問題は、どうやって、小惑星で、ブリキや真鍮の板、銅パイプなどの材料と金鋏や半田ゴテと言った道具を手に入れるかである。これら、ホームセンターで簡単に手に入るような一般的な材料や道具を小惑星の資源から作るかが最大の問題になる。

同じことは、小惑星開拓宇宙船の船体自体にも言える。多くの人は、宇宙船は、飛行機やロケット・人工衛星などのハイテクの素材より、さらにハイテクな材料で作らなければならないと思っているだろう。実際、スペースシャトルなどは、ハイテク構造材料で作った船殻を更にハイテクな断熱材で覆っている。

一般的に構造材料の進歩は、より軽く、より強くと言う方向に向かった。金属材料に限定しても、青銅から鉄、アルミ、マグネシウム、チタンと言う流れは、そのまま、軽く強くの方向性を示す。石材、木材、樹脂、複合材などの非金属の材料も同様だ。
ハイテク構造材料は、特に軽く強くに特化したものだ。これはスペースシャトルなど、地上から打上げられる宇宙船は、打上げ重量に制約があり、その上、急加速・急減速と言った荷重に耐えなければならないためである。

だが、小惑星開拓用宇宙船は、ほとんど重力の無い宇宙でだけ使われる。つまり、打上げによる重量制約も無ければ、急加速・減速の荷重も無い。構造材料が受ける最大の荷重は、内部の気圧に耐えることだろう。
内部に人が乗る以上、内部は大気圧にする必要がある。この内部圧で、破裂しない強度を保つのが、船殻の最大の荷重条件にある。とは言え、スペースシャトルのように打上げ時の重量制約は無いから、強度の低い材料でも、分厚く覆って重量が増えても問題ない。

小惑星開拓用宇宙船が、ローテクの構造材料、例えば、青銅や石材で分厚い船殻を作り、重くなるのは、不様だと思われるかもしれない。

分厚くて重い船殻は無様どころか、放射線を防ぐのに必要不可欠だ。小惑星軌道に限らず、地球から離れた宇宙には放射線が多い。地球の表面から1000キロ以内の高度なら、地球の磁気に守られ、比較的放射線が少ない。国際宇宙ステーションは、この範囲にいるので、比較的薄いハイテク船殻でも、放射線の問題が少なく、半年とか一年の長期滞在が可能だ。

だが、それより高度が高くなると、バンアレン帯が広がり、その外側は、太陽や銀河を起源とする放射線に満ちている。静止軌道だろうが、月だろうが、火星だろうが、小惑星だろうが、放射線に満ちていることには変わりは無い。

この領域の放射線を防ぐには有効な手段は質量しか無い。船殻1平方メートルあたり10トンの質量があれば、地上と同じレベルまで放射線が減ると言われる。

仮に、小惑星開拓用宇宙船を軽いハイテク構造体で作っても、その船殻の外に分厚く重い放射線防御材で包まなければならない。そんな無駄な事をするくらいなら、最初からローテクの構造材料で分厚い船殻を作った方が速い。もちろん、大気圏再突入はあり得ないから、ハイテクな断熱材の必要も無い。

このように、推進システムも船殻もローテク素材で作れることが判った。それも鉄器どころか青銅や石材でも造れるかもしれないとすると、19世紀どころか紀元前の技術レベルだ。

とは言え、燃焼エネルギーが使えず、有効な熱源が太陽光だけとすると、青銅や鉄・銅を、どうやって作り出すかの問題は残る。

ところで、小惑星軌道の温度環境を考えると、船殻の構造材料で「氷」が有望だと思えて来た。太陽光を凹面鏡で集めて、小惑星の凍った水分を融かし、濾過した後、再び凍らすことで船殻を造る。
強度上の不安があれば、ガラス繊維で強化する。ガラス繊維は岩の酸化珪素を融かし、糸状に伸す事で作れる。このガラス繊維で、船殻の形状を編み物のように作る。その後、ガラス繊維の隙間に水を流し込み、凍結させれば良い。つまりFRP=ガラス繊維強化プラスチックならぬガラス繊維強化氷だ。
こうすれば、内部の大気圧にも十分耐えられるだろう。

でも、氷で船殻を作った場合、中は寒そうだ。断熱材は、外側ではなく、中側に必要だね。

小惑星開拓用宇宙船で、他に重要なのは生命維持と電子機器だ。
生命維持に関しては、小惑星には、人類の生存に必要な元素はあると思う(もっとも誰も確認して居ないから調査が必要だ)。
だが、元素があっても、使える状態にあるかどうかは別問題だ。結局、植物を育て、酸素などの呼吸可能な空気と食べ物を得る必要がある。太陽光は少ないとは言え、太陽から届くので、これを使うしかない。
人間が食べ呼吸した後排出された物質を植物を使い、再利用するサイクルを作れれば良いのだが、如何にも大変だ。小惑星上で宇宙船建造と並行して、航海の間に必要な空気と食料をまとめて作る方が良いかもしれない。

もう一つの電子機器は大問題で、こればかりは19世紀以前の技術レベルで作ることは困難だ。LSI等の半導体は小さく軽いものなので、地球で大量生産し、無人機で送った方が良いかもしれない。
もしくは、真空管だ。宇宙空間だから、回りは真空だ。剥き出しのプレート、グリッド、カソード、ヒーターがあれば、真空管になる。ヒーターは電気を使うことは無い。裏側から太陽光を集めて熱すれば良い。
いくら、真空管が作り易くても、真空管でコンピューターを作ると ENIAC 並に大規模になってしまう。やはり、真空管は繋ぎで、本命は半導体だろうか? 最初のうちは地球から送り、いずれは小惑星の一つに大規模なシリコンウエファ・半導体工場を作って、小惑星帯全体に配った方が良いかも。

小惑星開拓用宇宙船の電源だが、小惑星帯に半導体工場ができるまでは、太陽電池ではなく、スターリングエンジンを使った方が、作り易いだろう。

とまあ、小惑星開拓用宇宙船の設計は、ここまでだ。
「えぇっ、これだけ?」とか「面倒臭いから手を抜いたな」とか言われそうだ。
だが、事実は逆である。
私は、こう言った未来的な機械のコンセプト設計が大好きで、生業にもなっているくらいだ。この小惑星開拓用宇宙船の設計も、やり始めたら止らないほど楽しい。詳細を考え出したら、時間を忘れる事もある。

しかし、前回も述べたが、ここで無闇に詳細検討し、時間を潰すことは、むしろマイナスだと判断した。
だから、今回は、最低限のイメージを伝えるアウトラインだけで止めた。このアウトラインだけでも、夢を膨らませる事もできるだろう。

さて、「自己増殖型宇宙船」と大見え切ったが、蓋を開けて見れば、「手先の器用な人が乗って居れば、何とか手作りできるくらいの低い技術レベルの宇宙船」だと言うだけだ。
じゃあ、どの位、手先の器用な人が必要かと言うと、ジャニーズのTOKIOのメンバー位の人かなあって思って居る。
鉄腕DASH観てると、鉄瓶でもガラスでも磁器でも何でも原材料から手作りしてるよねえ。

実際、DASH村を観ながら思い付いたんだよねえ、この小惑星開拓用宇宙船のアイデア。

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Comments

何を作るにせよ最大の課題は”精錬”ではないでしょうか。
小惑星が燃えないゴミの山であったなら、そこから必要な素材をかき集めてローテクな宇宙船を作ることは難しくないと私も思います。
しかし鉱石の状態から材料を精錬するとなると、検討もつかないというのが正直なところです。

ハンドメイドできるぐらい簡単な精錬道具ってのを考えたいですね。

Posted by: まきの | May 05, 2008 at 12:24 AM

『インテグラル・ツリー』の著者はラリー・ニーヴンです。それはさておき、非常に面白い構想だと思います。人間を機械のメンテナンス装置として使うという考え方は、私も模索しているところでした。
 放射線遮蔽に分厚い壁が要るなら、居住区のまわりを畑で包んでしまえばいいでしょう。日照が不足なら集光鏡を使う。汚水や排泄物を畑でリサイクルして米と大豆に転換すれば、日本人なら生きていけます。畑のかわりに溜池にしてもいいです。これで鯉や藻海老に転換できる。
 現実には宇宙船も宇宙服も空気がどんどん漏れていくので、なかなか完全リサイクルとはいきませんけど。
 電子回路は半導体含めて静電インクジェットプリンターで作れそうです。集積密度はずいぶん落ちますが、真空管よりはマシでしょう。
 まきのさんが指摘していましたが、鉱石の製錬はどうなるでしょうか。鉱山学では「鉱石とは、なにが含まれているかではなく、何が含まれていないかが問題である」といいます。しかし少量生産でエネルギーコスト無視ならなんとかなるかも。地上での鉱業とは、評価基準が違いますから。
 未分化の小惑星でも、岩塊をソーラーセールみたいな巨大な反射鏡で炙って溶かし、遠心分離する手があるかもしれません。気化したガスから水分も取りだせるでしょうし。

Posted by: 野尻抱介 | May 05, 2008 at 04:06 AM

まきのさん、野尻さん、コメント有難うございます。
インテグラル・ツリー、著者はニーヴンでした。間違えて、申し訳ありません。本文を修正しておきました。
内容が科学的/技術的に詳細に検討されているので、フォワードと勘違いしていました。ニーヴンにフォワードが助言しているのかと、本棚にあるインテグラル・ツリーを確認しましたが、フォワードの名前は何処にも載っていませんね。

鉱石の製錬が最大の課題であることは間違いないです。
ただ、野尻さんも御指摘のように、少量生産でエネルギーコストおよび時間を無視、その上、製錬レベルが低い(鉄なら鉄の純度が低くても良い)のなら、可能性もあるとは思います。
『言い訳』でも述べたように、私も完全に検討し尽くした訳ではありません。でも、強度や剛性などの材質に対する要求仕様を詰めると共に、鉱石の製錬を専門にされている方の助けを得られれば、解決の方向は得られるかと思います。

Posted by: 野田篤司 | May 05, 2008 at 09:48 AM

電子機器についてですが、電子機器が必要か?と言う点の検討を要するかと考えます。

例えば航法に関しては、機械式時計と六分儀を使用した天測航法で代用可能はないでしょうか?
アポジ点やペリジ点でのキック時以外は予定軌道に沿っているかどうかの定時観測なので、測定間隔も測定精度もそれなりでいいはずです。計算は算盤と計算尺と関数表で。

自動制御に関してはカムとゼンマイで代用できないでしょうか?
機関部の主要な制御は集光鏡の太陽指向とボイラの圧力制御になると思いますが、定常航行時は激しい姿勢変化は無いので太陽指向制御は人力で、ボイラ圧力制御は安全弁にお任せで良いかと。
居住区画の気温、圧力制御もバイメタルやブルドン管とゼンマイを組み合わせてアラームベルを鳴らす程度は可能です。ベルが鳴ったらどうするかは人間が判断し操作する事になりますが。

電子機器が必要と思われるのは無線通信機器ですが、距離を可視範囲に限定すれば反射鏡を使用した発光信号や旗を使用した旗流信号等、代替手段は有ります。

可能な限り電気を使わない方法を考えると面白いかもしれません。
大戦中の潜水艦のようになってしまうかも。

Posted by: 根本 | June 03, 2008 at 09:50 PM

根本さん、どうも有難うございます。
なるほど、完全手動化に近いですね。
これは、蒸気機関車を通り越して、蒸気船のノリです。
確かに航法は天測、蒸気機関の制御も機械式で足りるかも知れません。(大学生時代の制御工学の授業で蒸気機関のフィードバック制御を行うガバナーと言う仕組みを習ったのを思い出しました。蒸気の圧力に応じて回転する重りが遠心力で圧力逃し弁を開閉する機構で、この動きの定式化が制御工学の始祖となったと言うものです)

通信関係は電子機器が不可欠と思ったのですが、光もありかも知れません。
仮に、電波を使うにしても、19世紀のマルコーニのコヒーラなら、複雑な電子部品を必要としませんね。(マルコーニのコヒーラについては大人の科学で付録になったことがあります)

なるほど、電気を使わないというか、使ったとしても19世紀のレベルでなら、小惑星で作るのも楽でしょう。これはとても面白い課題になりそうです。

Posted by: 野田篤司 | June 08, 2008 at 07:07 PM

フォワードの名前は『インテグラル・ツリー』訳者あとがきで小隅黎氏が出してますよ。

Posted by: 通りすがり | December 07, 2009 at 07:53 PM

> フォワードの名前は『インテグラル・ツリー』訳者
> あとがきで小隅黎氏が出してますよ。
おお、今確認しました。
確かに、そうですね。

Posted by: 野田篤司 | December 07, 2009 at 10:22 PM

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