« ザウルス分解修理 | Main | オリンパス OM-2 »

April 24, 2006

ジェデルスキー翼を飛す

E047先日のコンテンツのように、ゴム動力機「ビーグル号」用にジェデルスキー翼を作ったのは良いのだが、強度不足の上、風の強い日が続いたためテスト飛行ができずに居た。
待ちに待って、やっと無風に近い日が来たので、テスト飛行を行った。

先日の破損の後、応急的に補修は行って居るもののジェデルスキー翼の強度不足は根本的には直って居ない。今回は強度不足は承知の上で、無風に近い状態でジェデルスキー翼の空力的特性を調べる事をテスト飛行の目的とした。

今まで使っていた翼はスチレンペーパーを「へ」の字に折って居ただけのものだ。これに対して新たに作ったジェデルスキー翼が空力的に有利性が有るのか無いのか、それを調べるのが、今回のテスト飛行の目的である。

そもそも、ビーグル号のように小型で低速の模型飛行機の場合(専門的には「レイノルズ数が小さい」という)、ジェデルスキー翼のように複雑な翼型が、「へ」の字翼のような単純な翼型よりも空力的な優位性があるか、全く判らない。ジェデルスキー翼は、製作も難しいし、強度的にも問題があるので、空力的に優位性が無ければ、価値が無くなってしまう。

ジェデルスキー翼を使うべきかどうかの判断で、「格好良いから」とか「構造的に複雑で興味深い」とか「本物の飛行機に近い」とか「頑張って作ったんだから」とかは、全く合理性を持たない。要は、客観的に「優位性があるか、無いか」だけで決めるべきである。
早い話が、実際に飛ばして、「へ」の字翼よりも飛ぶか調べてみる必要がある。

翼に空力的な優位性があるとしたら、次の3点であろう。
(1)揚力が増す(CL:揚力係数が改善され、値が増える)
(2)抵抗が減る(CD:抵抗係数が改善され、値が減る)
(3)仰角が変化しても、急激に揚力・抵抗が変化しない(失速特性が良くなる)
この3点の内の一つでも、できれば3つとも改善の傾向が見れれば、ジェデルスキー翼は「空力的には意味が有る」と言える。

今回作ったジェデルスキー翼は、従来の「へ」の字と可能な限り条件を合わせるために、形状・面積・上反角・質量を同じにして居る。極力、主観を入れずに、ジェデルスキー翼の空力的特性を見ようと言うのだ。

いつもの江戸川河川敷で、まずは手投げによる滑空試験を行う。
強度に不安はあるものの、何度か手投げし調整した後は、スムーズに滑空するようになった。

いよいよ、ゴムを巻いて飛す。
少しずつ、巻数を増やして行くが、2回目で40秒を超えた。(例によって40秒でデサマが働いて落ちて来た)

明らかに沈下速度が遅い。と言うより滑空時の速度自体が遅い。まるで室内機のような遅さだ。だからと言って失速して居る訳ではない。滑空比のかなり良い安定した滑空だ。

主翼を「へ」の字翼に戻した状態でも飛ばしてみた。今回は比較用のために主翼は2つ共持って来て居たのだ。

両者を比較し、できるだけ客観的に判断すると、次の事が言えると思う。
(1)のCL:揚力係数が改善されているのは、確実である。理由は、滑降時の速度が遅くなっていることだ。遅い速度でも揚力が発生している事は、揚力係数が改善されている証拠である。
(2)のCD:抵抗係数については、不明確だ。滑空比は改善されているから、揚抗比(=CL÷CD)が良くなっているのは確実だ。しかし、揚抗比が良くなっているのは、CLが改善されただけなのか、CDまで改善されたのかは切り分けはできない。CDが悪くなったとは思えないし、むしろ良くなっているとは思いたいのだが、確実な事は言えない。
(3)の失速特性については、全く判らない。少なくとも「へ」の字翼よりも悪くはなっていないと思うが、良くなっているとも言えない。

結局、今回のテスト飛行では、空力特性の3点の内、少なくとも1点については、ジェデルスキー翼の優位性があることが判った。
従って、今後、ジェデルスキー翼を進めても良いと思われる。
現状では、むしろ、揚力がありすぎる傾向があるので、主翼面積を減らすか総重量を増やしすかして翼面荷重を増やす方が良いようだ。
もちろん、強度の問題は残っているので、桁などで補強して重量増をしても強度を上げる方が先決だろう。

ただ、今回判ったのは、「への字翼よりは、ジェデルスキー翼の方が空力的に優位」なだけで、もっと簡単な「曲げただけの翼」の可能性もある。

小型のゴム動力機と言えど、なかなか奥が深い。

|

« ザウルス分解修理 | Main | オリンパス OM-2 »

Comments

ジェデルスキー翼型について
この翼型は空力性能としては一流のようで、F1A級曳航グライダー(スパンが2mを越す、世界選手権規格)でも使われています。
ZAIC年鑑(世界的な模型機の設計図集)の1964-5年版を見ると3~4機が使っています。
ただし、構造的に前半部はバルサの削り出し、後半部はバルサ板になるので、翼が重くなり、それをいかにカバーするかが問題でであったようです。
最近は、スパンがさらに長くなり、カーボン材などを使わないともたないので姿を消しました。
だから、強度面さえ問題なければ、いわゆる普通の「翼型」と充分に対抗できます。
私は、前半部を発砲スチロール(パソコンの梱包材など)の削り出し、後半をスチレンペーパーで作り、小型機には適当な強度と重量でした。
発砲スチロールは、糸鋸型の弓に電熱ニクロム線を張った工具(市販)で容易に加工できます。

ライトプレーンのような片面湾曲翼、あるいは湾曲板翼も、空力性能としてはいわゆる翼型よりも優れている場合があります。ただし、大型機になると強度的にもたないので使いませんが、もし可能ならば使いたいくらいなのです。
現に、1950年代に旧ソ連の選手がF1B級ゴム動力機(スパン1.2m、重量230gの大型機)につけて世界戦手権に出場しています。特殊な構造の2%くらいの厚さの非常に手の込んだ主翼で、製作困難のために追随者はありませんでしたが、性能的には超一流でした。

Posted by: 趣味際人 | April 28, 2006 at 04:50 PM

趣味際人さん、どうも有難うございます。
なるほど、やはり、ジェデルスキー翼型は十分に空力性能があると考えて良いのですね。
実際に飛ばして、少なくとも「へ」の字翼よりは良い結果が出ていたので、それが確認できて嬉しいです。

加えて、片面湾曲翼、あるいは湾曲板翼も可能性ありですか?
色々試してみることがあって楽しいです。

Posted by: 野田篤司 | April 29, 2006 at 08:30 PM

 ジェデルスキー翼のテスト、興味深い結果が出ましたね。しかし青空風洞で期待通りのデータが出ると、むしろ疑い深くなってしまう私です。まあ、嫌な奴だと思ってください(^^;。
 比較している「への字」翼ですが、写真で見た感じだと、キャンバがやや過大な気がします。
 ジェデルスキー翼が「への字」翼に勝るのは、後者において翼前部下面にできる渦を抑制する点にあると言われています。キャンバが小さければ、両者の差は小さくなるでしょう。現状での比較だと、ジェデルスキー翼を過大評価してしまう懸念があります。
 趣味際人さんがおっしゃっている通り、片面湾曲翼も捨てたもんじゃありません。後縁の竹ひごなど、一見抗力を生みそうですが、実はガーニーフラップ(gurney flap)として作用しているのではないかと思ったりします。
 小レイノルズ数の世界に、一見とんでもないけど高性能な未発見の翼型があるんじゃないか、と常々妄想しています。平板の上に角材を並べただけの翼なんてどうでしょうか。

Posted by: 野尻抱介 | April 29, 2006 at 11:39 PM

ライト兄弟は簡単な風洞で翼型の特性を比較して、かのフライヤーの翼型を選択したのですが、この風洞はR数が低かった(大型・高速の実験は出来なかった?)ため、ライトプレーンのような薄い湾曲板が最良という結果が出て、それを採用したという説があります。
それを踏襲したのか、支柱や張線でもたせていた複葉時代は薄翼が多かったようです。
然るに、1930年ころになって、片持ち式単葉化の流れが起こり、それに適した厚い「高性能」翼型がNACAなどから発表されました。実機では支柱や張線がなくなるので、翼型単体としては性能が落ちても、トータル的にはこのような厚翼が有利になります。
これに対し、模型機の場合は、薄翼でも支柱などつけずに使えたので、当時の「高性能」厚翼は不利でした。また、厚い翼は臨界R数が高いので失速が早く、模型機ではさらに不利になります。
ところが、当時は低R数の翼型特性の知識が無かったので、われわれの先輩たちは高名な航空研究所から発表された実機用の「高性能翼型」に飛びついたわけです。
多くは、12%厚以上でしたから、実機のR数の測定結果と、模型機の飛行結果との間に大きな落差があり、権威ある翼型特性への不信感と失望が生じました。
後世の知識で考えてみれば、模型機の翼型の性能は、実機の最新情報によって退化・低下したわけなのです。
ちなみに、私が愛用し、カップやトロフィーを沢山稼いでくれたMVA123翼型は、古い複葉機用の翼型のようです。

Posted by: 趣味際人 | April 30, 2006 at 05:55 AM

野尻さんに乱入を勧められたので初めてのお邪魔です。
ジェデルスキー翼とへの字翼の比較には私のサイト http://www.ll.em-net.ne.jp/~m-m/ に収録した模型翼型集が参考になると思います。一度のぞいてみてください。への字翼と円弧翼の比較は桝岡 秀昭さんの
V-tails: http://www.aa.isas.ne.jp/v-tails/ でRN10,000の領域ですがXFOILを使った比較が載っています。そちらも参考になりそうです。

Posted by: 松本@GPF | May 01, 2006 at 10:21 PM

野尻さん、
確かに野尻さんの言う通りで、まだ、ジェデルスキー翼が良いと決まった訳ではありません。
単に、「青空風洞」つまり、あの日あの時の条件の元で、何回かの飛行で、たまたまジェデルスキーの方が CL が良さそうに見えただけです。本当は、統計処理ができる程の回数を飛ばして、客観的に判断できるように数値的に優位性がある事を証明しないといけないのでしょう。
また、翼型だけではなく、上反角や胴体形状/アスペクト比など色々な条件によって左右される話ですから、総合的に判断するには、もっともっとデータを取る必要があると思います。

なお、への字翼のキャンバは8パーセントです。野尻さんは、6パーセント位が丁度良いと言っていましたから、過大なのかも知れません。

趣味際人さん、
ライト兄弟が模型の風洞実験から、薄い翼型を実機に使ったり、逆に実機が厚い翼型を使うようになって模型も実態に合わないのに厚い翼型を使って居たなど興味深い話を有難うございます。

確かに、野尻さんの言われるように、想像も付かないような模型用の翼型の可能性もあるかもしれませんね。

松本@GPFさん、
はじめまして、よろしくお願いします。
ホームページを拝見させてもらいました。
まだ、詳細に読解してはいませんが、これから参考にさせてもらおうと思います。
今後ともよろしくお願いします。

Posted by: 野田篤司 | May 03, 2006 at 07:27 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/94422/9752158

Listed below are links to weblogs that reference ジェデルスキー翼を飛す:

« ザウルス分解修理 | Main | オリンパス OM-2 »