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August 30, 2005

僕の宇宙船 惑星間宇宙船 ホーマン軌道 (その1)

ss008今回は、軌道制御の基本中の基本、ホーマン軌道だ。

図は、太陽系を北極星の方向から見たものだ。
地球は、太陽から約 1.5 億キロメートルの距離で、ほぼ円形の軌道を左回りに回って居る。
小惑星は、沢山あって、色々な軌道を回って居るのだが、今回は、目的地を太陽から 3.8 億キロメートルの距離の円軌道で回って居る小惑星に絞る。

ホーマン軌道を使って、地球から小惑星に行き、小惑星に滞在した後、再び、ホーマン軌道を使って帰ってくる行程は、次のようになる。

最初、宇宙船は、地球に居る。北極星の方向から見れば、地球と同じ距離・速度で太陽の回りを回って居る。太陽に対する地球及び宇宙船の軌道速度は、毎秒約 29.8 キロメートルである。
ここで、軌道速度方向に宇宙船を毎秒約 5.9 キロメートル加速し、毎秒約 35.7 キロメートルにする。すると、宇宙船はホーマン軌道(図の緑色の線)に移る。

元々の軌道速度の毎秒約 29.8 キロメートルでは、太陽の引力と遠心力が釣り合っていた。ところが、それより速い毎秒約 35.7 キロメートルでは、遠心力が引力より勝るので徐々に太陽から離れながら、太陽の回りを回る。

厳密に言えば、物理学・力学的には、引力と遠心力の釣り合う/釣り合わないの説明は正確ではない。しかし、直観的な理解がし易いので、あえて、この説明を用いた。

約 423 日後に、図のように、ちょうど太陽の反対側で、目的地である小惑星の軌道に接する。

この時、宇宙船の速度は、毎秒約 14.1 キロメートルだ。一方、小惑星の軌道速度は、毎秒約 18.7 キロメートルで、これで、太陽の引力と遠心力が釣り合っている。
このままでは、宇宙船の速度が足りず、再び太陽に近付き始める。そこで、宇宙船を毎秒約 4.6 キロメートル加速し、小惑星の速度と一致させる。
こうして、小惑星に到着した。

小惑星に到着後、しばらく滞在した後、帰路に就くのだが、好きな時に帰れる訳ではない。宇宙船が地球の軌道に達した時、ちょうど良い場所に地球が居ないと、帰ることができない。
到着から 73 日後に帰路に就くと、タイミングが良い。それを逃すと、559 日後だ。帰るタイミングは、486 日毎にある。

タイミングの合った日に、宇宙船は小惑星を離れ、毎秒約 4.6 キロメートルの減速をする。
宇宙船は、再びホーマン軌道(青色の線)を通り、往路と同じく約 423 日後に地球の軌道に接する。タイミングを合わせてあるので、地球と出合うはずだ。
ここで、秒約 5.9 キロメートル減速すると、地球に帰還できる。

前回説明したように、軌道解析のアウトプットは、
・軌道制御に必要な増速量(ΔV:デルタブイ)
・往路/滞在/帰路の期間
だ。

増速量は、最初の毎秒約 5.9 キロメートルの加速、次の毎秒約 4.6 キロメートルの加速、毎秒約 4.6 キロメートルの減速、毎秒約 5.9 キロメートルの減速の合計だ。
ΔV = 5.9 + 4.6 + 4.6 + 5.9 = 21.0
となり、毎秒約 21.0 キロメートルの増速量が必要であることが分かる。

また、往路/滞在/帰路の期間は、往路 423 日、滞在 73 日(最少)、帰路 423 日の合計 919 日、約2年半である。

と、まあ、ここまでが、基本中の基本、ホーマン軌道による小惑星旅行の概要だ。

多くの人が、疑問に思うかもしれない。
「ホーマン軌道が、基本中の基本だと言うが、えらく遠回りじゃないか!? 真っ直ぐ(図中、赤線)行った方が速いのでは??」と。

確かに、ホーマン軌道は、最も太陽から近付く時に地球の軌道と接し、最も太陽から離れた時に小惑星の軌道と接する楕円軌道で、ホーマン軌道と地球の軌道が接した場所から図のように、太陽を挟んで反対側で小惑星の軌道と接する。
そのため、ホーマン軌道を通る宇宙船は、片道だけでも、直線距離で 5.3 億キロメートル、曲線距離で 7.9 億キロメートルと言う非常に長い距離を旅する必要がある。

それに対し、図中赤線で示した「真っ直ぐ軌道」なら、2.3 億キロメートル、3分の1以下の距離だ。これなら、ずっと速く行けるに違いない。
実際、計算してみると、最も増速量の少ない(燃料の少ない)場合でも、片道 229 日で済む。更に増速量を増やせば(燃料を増やせば)、もっともっと短縮することも可能だ。

しかし、「真っ直ぐ軌道」のためには、最低でも毎秒約 126 キロメートルの増速量(往復分)が必要となる。これは、ホーマン軌道を使った場合の6倍だ。
ホーマン軌道の毎秒約 21.0 キロメートルの増速量でも大きいのに、「真っ直ぐ軌道」の毎秒約 126 キロメートルの増速量は、非現実的としか言いようが無い。

ホーマン軌道を「基本中の基本」と言うのは、最短距離とか最短期間とは関係が無く、「必要な増速量が最少」と言うことである。

「ホーマン軌道の増速量が最少」と言うのには、「太陽以外の引力の影響を無視した場合」と言う但し書きが付く。月や火星の引力を考慮したなら、スイングバイを使って、増速量を更に少なくする方法があることを多くの人が知って居るだろう。また、無視された引力源としては、月や火星だけでなく、地球の引力も含まれる。地球の引力を考慮しただけでも、増速量を減らす事は可能だ。だが、こうしたやり方は「基本中の基本」ではなく、「応用編」として扱われるべきだ。後日、改めて説明したいと思う。

と、今回は、基本中の基本:ホーマン軌道の概要を説明した。
だが、これだけでは、「じゃあ、火星に行く時は? 金星は? 木星は?」と、応用ができない。
次回は、電卓などで、増速量や期間を簡単に計算できる方法を説明するつもりだ。

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Comments

このシリーズは途中で止まっているようですが、「(その2)」以降が書かれる予定はあるのでしょうか? ぜひ読んでみたいのですが……。

Posted by: KK | May 04, 2013 at 03:16 PM

すいません、8年も放っておいて・・
実は、ホーマン軌道の説明をと考えているうちに、もっと良い軌道の方に頭がいってしまって、このページの続きが放置されてしまいました。
断片的には、あちこちに書いているのですが、一度整理したいと思いますが、しばしお待ちをお願いします。

Posted by: 野田篤司 | May 09, 2013 at 08:42 AM

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