« June 2005 | Main | August 2005 »

July 08, 2005

僕の宇宙船 遠乗り

ss006「僕の宇宙船」では、最初として地球周回軌道を実現する最小限のシステムを考えた。だから、始めは地球周回の短期間の飛行だけだ。だが、宇宙は、果てしなく広く、地球周回は宇宙の入り口に過ぎない。バイクや自動車で言えば、地球周回は、ちょっと近所を走って居るにようなものだ。近場を走るのに飽きたら、遠乗り、つまりツーリングに出掛けよう。

さて、地球周回の次の目標となると、普通は、宇宙ステーションのように長期滞在をするか、そうでなければ月か火星だろう。だが、目的も無く同じ場所をグルグル回って居るのも面白くない。その上、地球周回には、役に立つ資源も生命維持に必要な空気も食べ物も水も無いから、定期的に地球から運ばなければならない。

月や火星への着陸も、そんなに魅力を感じない。地球外生命でも居るのなら話は別だが、わざわざ、岩だらけの荒れ地に降りる必要は無い。そもそも、苦労して、やっと地球の引力圏を脱出したのに、なぜまた、月や火星の重力の底に降りる必要があるのか? 一度降りたら、また上がって来るのは大変だ。できれば宇宙に浮かんだままの方が、さらに次の場所へ行くのに都合が良い。

では、何処か良いところは無いかというと、木星の衛星、イオ、ガニメデ、エウロパ、カリストや、土星のタイタン辺りだ。そこまで行けば、火山やら水があるくらいだから、何か居そうだし、もっと遠くの彗星の巣(本当に巣があるとは思えないが・・)なども生命の発祥説もあるくらいだから、行って見る価値がありそうだ。それで足りないのなら、いっそ、恒星間を越えたい。

だが、いきなり、そんな遠くへ行くのも難しいので、もう少し近場で良い場所が無いか。地球から比較的近くで、重力の底に降りることも無く、また、地球から物資の補給を受けなくても自給自足できるような、そんな都合の良い場所を探した。

結構、長い間考えて居たら、小惑星があることに気が付いた。

小惑星と言うのは、地球や火星と言った九つの惑星ほど大きくないが、惑星と同じに太陽の回りを回る文字通り「小さな」惑星だ。その大きさは、岩程度のものから、百キロメートル程まで様々だ。場所としては、火星と木星の間の軌道、いわゆる小惑星帯に沢山あるのだが、それ以外の場所にも在る。
小惑星と言うとイメージするとは、ガチガチの岩石とか隕石だろう。実際、地球の近くにある小惑星は、岩石のような状態だ。これでは、金属資源はあるかもしれないが、水や食べ物になりそうなものは期待できない。とてもじゃ無いが、自給自足など無理そうだ。

ところが、元々は、地球でも月でも小惑星でも、太陽系にある惑星や衛星の組成は同じようなものだそうだ。だから、大昔、太陽系ができた当初は、月や火星、小惑星にも、地球と同じ程度の割合で水や炭素があったそうだ。でも、長い間、太陽の強烈な光と熱を受けて、中に含まれた水分は蒸発し、宇宙にと拡散した。炭素も同じように無くなったそうだ。
地球は、強力な引力で、水分や炭素(多くは二酸化炭素と言う形で)をつなぎ止めているが、月や火星では引力も少なく、水分も炭素も無くなった。(月や火星に水分などが残っているか、どうかは常に議論の対象になるが)
月や火星よりも更に引力の小さい小惑星では、当然、水も炭素も無くなっている。

だが、この話、あくまで、「太陽に近く、光や熱を多く受ける」軌道だけの話。太陽から離れ、受ける光や熱が少なくなると、水分は蒸発せずに残っている。例えば、木星の衛星のガニメデやエウロパなどは、火星よりも引力が少ないのに、水が大量に残っている。また、ハレー彗星のように、ほとんどの時間太陽から離れた場所に居て、たまに太陽に近づく彗星の核にも水分が多く残って居ることも良く知られて居る。

計算上、太陽から6億キロメートル以上離れた場所なら、水分が蒸発せずに残るそうだ。ちなみに、地球は太陽から1億5千万キロメートルの距離にあり、火星は2億3千万キロメートルの距離で、それより、ずっと近い。それに対して、木星は7億8千万キロメートルの距離だ。だから、木星の衛星のガニメデやエウロパに水が残って居て当然だ。

肝心の小惑星が、どうだと言うと、ちょうど、太陽から6億キロメートルの距離が小惑星帯だ。だから、小惑星帯には、水分と、ついでに炭素を豊富に含んだ小惑星が山ほどある。
だが、6億キロメートルと言うと、ちょっと遠い。火星より木星に近いくらいだから、行くのは大変だ。
そう思って居たら、水分を含んだ小惑星は、もっと近く、太陽から3億8千万キロメートルあたりから、数は少ないが存在すると、話に聞いた。

先程の「太陽から6億キロメートル以上離れれば、水分が残っている」と言う話と矛盾しそうだが、そうでは無い。こう言った小惑星は、元々は太陽から6億キロメートル以上離れた軌道を回って居た。しかし、地球のような大きな惑星と違い、小惑星の軌道は安定して居ない。木星などの大きな惑星の引力で軌道が落ちて来たらしい。
だから、このような惑星は、いずれは太陽の光と熱で水分は蒸発して無くなってしまうのだが、最近、遠くの軌道から落ちて来たばかりなので、まだ、水分が乾き切って居ないのだ。もちろん、宇宙の話のことだから、「最近」とは言っても、何百年とか何千年、もしかしたら何万年前の事だろうが。
いずれ、水分は蒸発して無くなるとは言え、しばらくの間は大丈夫だ。だから、ここに自給自足できる「宇宙基地」を作ってしまう。

ざっと計算すると、太陽から3億8千万キロメートルに行くのに必要な宇宙船の性能は、火星に行って着陸するのと同じ程度だ。むしろ、火星のように大きな引力に逆らって離着陸する必要が無い分、楽かもしれない。その代り、時間はかかる。流石に遠いので、往復に3年以上必要だ。ちなみに火星なら、2年強だ。

結構、手頃な距離に良い物件(?)がある事に気付いたのだが、逆に気になった。アメリカ等の宇宙大国が、何故、こう言った小惑星を狙わずに、火星着陸を目標にしているのだろうか?
単に、小惑星の方が遠いから、難しいと思って居るだけか、それとも小惑星には私が気付いて居ない致命的な欠陥があるのか?

と、色々、考えて居たら、次のような考えに思い当たった。
「アメリカは、大昔の大航海時代の新大陸発見と同じ事を宇宙に当てはめようとしている」
つまり、アメリカが欲しいのは、「大陸」であって、「島」じゃないのだ。月とか火星の表面積を調べてみると、月はアフリカ大陸より少し大きく、火星は地球の全大陸の合計に匹敵する。だから、月とか火星とかへの着陸は「新大陸発見」に匹敵する。
それに比べて、小惑星の大きさは百キロメートル程度が最大だから、「島」だ。だが、小惑星を単純な球体だとすると、直径90キロメートルの小惑星の表面積は、日本全土の面積に匹敵する。本州だけなら直径76キロメートル、北海道は54キロメートル、九州42キロメートル、四国33キロメートルだ。
島国の日本に生まれ育った私に取って、直径100キロメートルの小惑星で十分だ。むしろ、もう少し小さく、四国や九州程度でも十分なくらいである。
まあ、小惑星の形状が「球体」と言う計算の前提も現実に合わないし、実際に小惑星に住むとなったら、表面に住むのではなく、穴を掘って中に住むことになるだろうから、話半分に聞いてもらいたい。そもそも、「アメリカが、島ではなく大陸を目指す」と言うのは、あくまで私の憶測だから、いい加減な話である。

とにかく、「僕の宇宙船」の、次なる目標は「水のある小惑星」に決めた。次回以降は、どうやって小惑星に行くか、滞在するか、帰って来るかを、何回かに分けて、お話する。

| | Comments (17) | TrackBack (1)

July 01, 2005

僕の宇宙船 安全性

ss0051宇宙に行くのは冒険で、冒険に危険は付き物だが、それでも、やはり安全に越したことは無い。
「僕の宇宙船」の場合、「安全」とは「搭乗者が、無事に生きて地球に帰って来る事」を目指す。
例え、打上げに失敗して、ロケットを指令破壊(自爆と言った方が衝撃的だが、分りやすい)する事態になっても、搭乗者が逃げ出して無事に地球に帰ることができたら善しとする。

こういった考えに対し、「絶対に失敗しない」ように「極度に信頼性を高める」と言ったアプローチもあるが、これはコストがかかってしょうがない。
要は、「信頼性」と「安全性」は、別ものなのだ。極端に言うと「信頼性は低いけど、安全性は高い」と言う作り方も、「信頼性は高いけど、安全性は低い」と言う作り方もできる。
「僕の宇宙船」では、「信頼性は多くを望まないが、できるだけ安全に帰って来れる」をコンセプトにする。

そのためには、飛行中のいかなる段階からでも、地球に戻り、搭乗者が生還する機能が必要になる。

宇宙飛行の場合、大きく分けて、
(1) 打上げ時
(2) 周回軌道上
(3) 帰還時
の3つの段階に別れる。

最初の 「(1) 打上げ時」については、色々と考える項目が多いので、先に (2) と (3) から説明する。

これらの内、(2) の周回軌道上で考えられる緊急事態は
・搭乗者の急病
・電力・温度・空気などの生命維持に必要な機能の喪失
・軌道離脱用の逆噴射マヌーバができない
等がある。
最初のトラブルについては、とにかく即座に逆噴射マヌーバを行って、大気圏再突入する。カプセル式の良いところは、帰還する場所の天候が多少悪くて視界が開けていなくても、問題ないところだ。
次のトラブルに関しては、全ての生命維持機能には、バックアップを用意する。バックアップについては、30分程度の短時間だけ生命維持ができれば良い。その間に、逆噴射マヌーバを行い、帰還する。
最後のトラブルは、この段階のトラブルとしては、最も恐ろしい。逆噴射ができないと、軌道によっては永遠に地球に帰れない。宇宙船に乗せてある酸素や水・食料がなくなったら、おしまいだ。
これを避けるためには、逆噴射マヌーバ用のスラスタのバックアップを用意する。
また、そもそも、大気抵抗の大きな低軌道に投入し、例え逆噴射マヌーバ用のスラスタが壊れても、自然に大気抵抗で、何日か以内には地球に戻って来るようにしておくと言う方法もある。この場合は、帰還までの時間が延びるので酸素や食料を多く持って行く必要がある。

また、(3) 帰還時の場合、考えられる緊急事態は
・揚力飛行中の姿勢制御のトラブル
・カプセル内の圧力漏れ
・パラシュートが開かない
等がある。
最初のトラブルに関しては、ロール軸回りに回転させて、揚力をキャンセルさせる。こうすれば、減速Gが増え、乗り心地は悪くなるが、最悪の事態は避けられる。
次のトラブルに関しては、少なくとも短時間は耐えられる与圧服を着ることで対処する。
最後のトラブルについては、パラシュートを二つ以上用意する。

このように、考えられるトラブルに関しては、一つ一つに対して、それごとに対処法を用意する。多くの場合は、バックアップを用意することで対処するが、余り過剰にバックアップを用意すると、そもそもの宇宙船自体の成立性が危うくなる。だから、バックアップ用の機器は、元々の機器よりも性能的に劣っても良い事にする。
例えば、パラシュートの場合、元々のメインシュートは大きく、方向制御の可能なパラフォイル形式としても、バックアップ用のパラシュートは、小さく方向制御のできないタイプにしておく。こうすると、バックアップ時は、何処へ着陸できるか判らない上、降下速度が大きくて、着陸時の衝撃が大きく、乗り心地が悪くなる。でも、乗り心地が悪くても、生きて帰れる方が大事だ。
また、逆噴射マヌーバ用のスラスタのバックアップについては、元々のスラスタよりも性能的に劣ったものでも、地上に帰還できれば良い。例えば、元々のスラスタなら、着陸地点を精度良く決めることができるが、バックアップ用のスラスタなら、地球の何処に帰れるか判らなくなると言うようになる。そもそも、逆噴射マヌーバ用のスラスタを、性能が半分のスラスタの2機構成とか、1/3のスラスタの3機構成にする方法もある。全てのスラスタが働けば、着陸地点を精度良くできる。もし、トラブルが発生しても2機同時または3機同時に働かないことは確率的に非常に小さくなる。1機でもスラスタが働けば、着陸場所の精度が悪くても、帰って来れるようにする。

さて、いよいよ、後回しにして居た「打上げ時の緊急事態」への対処方法だ。

簡単に言えば、緊急事態の時、脱出装置が働き、パラシュートを開いて降りて来る。
ジェット戦闘機の「射出座席」と同じような考え方だ。だが、「射出座席」自体、意外と危険な物だし、宇宙船の脱出装置としては不十分だ。そもそも、打上げロケットが、既に大気圏を脱した状況で緊急事態が発生したら、射出座席で飛び出したら、座席だけで大気圏再突入することになる。これでは危険極まりない。

だから、座席だけではなく、「カプセルごと脱出」する。たとえ、ロケットが爆発しても、カプセルを切り離す。既に、大気圏から出て居ても大丈夫。そもそも、カプセルは大気圏再突入に耐えられるように作られて居る。だから、大気圏に再突入し、十分減速したら、パラシュートを開いて、地上なり、海上に帰って来れる。
カプセルが、至近距離からのロケットの爆発に耐えられるか、疑問に思う人も居るだろう。
カプセルは、小さく丈夫に作る。同じ材料・同じ構造形式なら、つまり同じテクノロジーレベルなら、物は小さければ小さいほど丈夫に作れる。そう言った意味でも「僕の宇宙船」は、可能な限り小さく、丈夫にする。
また、そもそも、カプセルは大気圏再突入の高熱に耐えられるから、ロケットの爆風の熱にも耐えられる。

このように、打上げの段階で緊急事態が発生しても、カプセルごと脱出すれば、万全だ。
だが、この話、2つの点で、気を付けなければならない。

まず、1つ目は、打上げ直後の十分な高度に達して居ない時点だ。パラシュートが開き、安全に降りてくるには、ある程度の高度が必要だ。だから、その高度に達しない段階で、緊急事態が発生した場合、カプセルごと脱出できても、パラシュートが開き切らず、落下したカプセルが地面に激突・・と言うことに成りかねない。
これを避けるためには「脱出ロケット」が必要だ。「脱出ロケット」は、文字通り脱出専用の超小型ロケットで、高度がゼロでも、カプセルをパラシュートが開く高度まで、持ち上げる物だ。これがあれば、打上げの早い段階でも脱出が可能となる。

ss00522つ目の問題は、逆に高度が高すぎる場合だ。
普通、ロケットは、打上げ後、ほぼ垂直に上昇する。大気が薄くなる高度まで上昇した後、水平飛行に移る。目標高度が 200 キロなら、ほぼ、200 キロの高度で水平飛行をし、軌道周回に必要な速度まで加速する。このような飛行経路を取ることが、燃料の消費量を抑えるためには良い。
ところが、この場合、高度は軌道高度並みだが、速度は低い状態を経る。万一、こう言った「高度は高いが、速度は不十分」の状態の時に、緊急事態が発生すると、大変なことになる。カプセルは、ロケットから離れることができても、浮かんで居る訳には行かないから、落下が始まる。この時、周りは、ほぼ真空だから、カプセルの速度を抑える物はない。カプセルは、下向きの速度を上げて、低い高度へ突入する。前にも書いたが、高度が 65 キロをき切ると、徐々に大気が濃くなる。下向きの速度が大きいため、カプセルは一気に大気の濃い高度に高度まで下がる。
速度が高いまま、大気の濃い領域に突入するから大変だ。カプセルは、大気の壁に衝突するようになり、20 G を超る減速 G を受ける。カプセル自体を、20 G を超る減速 G に耐えられるように丈夫に作ることは不可能ではない。しかし、中の搭乗者は耐えられるものではない。

周回軌道から帰還する場合、カプセルの速度は、ずっと大きい。しかし、速度の方向は、ほぼ水平で、下向きの速度は、少ししかない。ほぼ真空中を落下しても、カプセルの下向きの速度が増えない。何故なら、水平方向の速度が、遠心力を生み、それが地球の引力をキャンセルするからだ。

厳密に言うと「遠心力」は仮想の力で現実には存在しない。しかし、直観的に理解し易い概念なので説明に使った。

こうして、周回軌道から、帰還する時のカプセルは、ずっと浅い角度で、大気圏に突入する。下向きの速度は少ないので、急激に大気の濃い領域に入ることは無いため、減速 G が大きくはならない。

いかなる時点で、緊急事態が発生しても、カプセルで無事に帰還するためには、速度が十分に上がるまで、高い高度を取らないような飛行経路を取ることが必要だ。
打上がったロケットが、ほぼ垂直に上昇するところは同じ。だが、大気がほぼ無くなる 65 キロより少しだけ高い 70 キロ程度の低い高度で水平飛行に移る。ここで、速度を上げ、十分な速度が付いた後、目標高度の 200 キロへ上昇する。
このような飛行経路を取ると、十分な速度が得られない水平飛行中に緊急事態が発生しても、切り離されたカプセルが落下し、大気の薄い部分に突入しても、落下する高さが少ないので、下向きの速度が、あまり大きくならない。従って、いきなり大気の濃い高度まで下がることは無く、減速 G が高くなり過ぎることも無い。
ただ、このような飛行経路だと、燃料を余計に使う。複雑な飛行経路を取る訳だし、その上、高度 70 キロでは、薄いとは言え、大気抵抗が残っている。
このため、目的高度まで一気に上昇する飛行経路を取るより、3 割くらい燃料を余計に要る。

燃料が余分に必要でも、安全を優先すべきだろう。それが有人宇宙飛行と言う物だ。一方、無人の貨物輸送は、脱出のことなど考えずに一気に上昇すべきだ。その方が燃料が少なくて済むし、同じ燃料量なら、多くの荷物が運べる。

このように色々な方法を駆使し、飛行経路を曲げても、搭乗者の生命を守るように、安全性を確保する。

ここまで、何回かに渡って、「僕の宇宙船」の地球からの打上げ、周回軌道、帰還、そして安全について書いて来た。
そろそろ、地球から、せいぜい数百キロの近場の宇宙をウロウロする話も飽きたので、次回からは、もっと、ずっと遠くへ行く話をしたいと思う。

| | Comments (4) | TrackBack (0)

« June 2005 | Main | August 2005 »