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June 01, 2005

僕の宇宙船 カプセル 大気圏再突入時の操縦

ss0041前回、書き切れなかったので、今回は大気圏再突入時のカプセルの操縦方法を説明しよう。
一般的に、カプセル型宇宙船は操縦しようが無く、一度大気圏に突入したら、後は何処に降りるか運任せ(風任せ?)のイメージがある。だが、実際はカプセル型宇宙船も操縦が可能だ。

大気圏再突入時の姿勢のロール、ピッチ、ヨーは、イラストのように進行方向に対して決めている。

イラストの右下のスペースシャトルを見れば判ると思うが、機軸方向と進行方向が大きく異なる。飛行機の場合、機軸方向と進行方向が、ほぼ一致しており、ロール、ピッチ、ヨーを機軸と進行方向の何れでも同じ。だが、大気圏再突入時は、そうはいかない。

カプセルの場合、重心位置で、ピッチとヨーは決まってしまうので、コントロールできるのはロールだけだ。カプセルは、主にスラスタと言う超小型の姿勢制御用ロケットエンジンで、ロール方向の姿勢をコントロールする。
私は、スラスタを使わなくても重心移動でロールをコントロールできるのでは? と密かに考えている。この場合、サーフィンとかスノーボードとそっくりのコントロールになる。

ロールを右に傾けると右に曲がり、左に傾けると左に曲がる。飛行機や自転車と同じである。右や左に曲がると降下する。これまた飛行機と同じだ。
飛行機の場合もエルロン(補助翼)でロールを傾けただけだと降下する。普通は、ピッチをコントロールするエレベーター(昇降舵)で降下しないようにする。

スペースシャトルのような有翼機の場合は、飛行機と同じように、エルボン(エルロンとエレベーターを合わせたもの)やボディフラップを用いて、ロール、ピッチ、ヨーをコントロールできる(時には、スラスタも併用する)。ロールやヨーの効果は飛行機と同じだが、ピッチは、「より上へ向くと下降」「より下へ向くと上昇」と逆なので、スペースシャトルを操縦する機会が有ったら、注意しよう。

ss0042カプセルのように、ロールしか制御できない場合、どうやって操縦するかを説明したのが、このイラストだ。
ロールを傾ける事なく高いところを飛べば、遠くまで行ける。
ロールを右に傾ければ右に、左に傾ければ左に行くことができる。
連続して左右に傾ければ、スラロームして手前に降りる。この場合、地上でのスラロームのように回る事で距離を稼ぐより、高度を下げて、より濃い大気の抵抗でスピードを落とす効果の方が大きい。
左右にロールしている内は良いが、上下逆の背面飛行になったら大変だ。揚力が逆に働き、濃い大気の中に突っ込むので、異常に発熱し、急減速Gを受け、危険である。普段はジャイロセンサーとコンピュータで、背面飛行にならないように制御する。万一、ジャイロセンサーかコンピュータに不具合が起き、上下が判らなくなったら、ロール方向にをグルグルと回そう。こうすると揚力の効果が消える。減速時の加速度が、ボストークやマーキュリー並の8Gになるが、死ぬよりましだ。多分、荷重に耐えられなくて、気を失うが、生きて帰る事は可能だ。

このように、ロールを傾けたり、傾けなかったりで、降りる場所をコントロールすることができる。前後方向は最大で数千キロもの範囲で降りる場所を選べる。まあ、あまり手前に降りると急降下して濃い大気の中で高Gで減速するので、数百キロくらいに抑えた方が安全だ。一方、左右方向は50キロ程度しか選択範囲は無い。
アンバランスな気がするが、問題は無い。軌道離脱マヌーバーの誤差や気圧の変化の影響が前後方向に出るが、左右方向は、最初の軌道で決まってしまい、その後の影響は、ほとんど無いからだ。
実際、ジェミニでは、降下場所が目標から5キロ程度に降りることができた。これなら、パラフォイル(方向制御可能なパラシュート)と併用することで、ピンポイントの帰還が可能となる。サッカーグラウンド程度の広さがあれば、着陸できるだろう。
スペースシャトルの場合は、揚抗比の効果で、左右方向に千キロを超る範囲に選択できる。しかし、一般的な使い方なら、こんなに広い範囲は不要な筈だ。

裏庭から打ち上げた「僕の宇宙船」は、小学校の校庭か河原に帰ってくるのが相応しい。

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Comments

 Transformational Space( http://64.78.33.215/index.cfm )のCXVは検討されました? 前を向いたまま再突入します。“バドミントンの羽根”型なので自律安定性があり、揚力突入するのでMAX4G程度におさまる。どうやら椅子がハンモックのようになっていて、打ち上げと帰還でリバーシブルに使うようですね。これは一本取られたと思いました。

Posted by: 野尻抱介 | June 02, 2005 at 12:02 AM

宇宙空間で曲芸飛行するよりも、大気圏突入でサーフィンのほうが面白そうだと思っていたら、やっぱり出ましたね。
ぐぐったらずいぶん昔に映画になっていたのですね。
ちょっとでもミスったら焼け死んでしまうところが残念ですが。

Posted by: subrosa | June 02, 2005 at 02:32 AM

ところで打ち上げアボート時の回収って考えてます?シャトルはそこでの使用を考えて回収費用を安く上げるために翼を使用してクロスレンジを稼いでいるのではなかったでしたっけ??(アボート範囲が狭すぎて役にたたんというのもありますが。)松浦さんの本でも無視されてますけど。。。

Posted by: kagawa | June 02, 2005 at 11:21 PM

 CXV、シャトルコックと言うか、逆向きに再突入するソユースですね。しかしほんとにケアフリーなのかなあ?角度を持たせて揚力を発生させている以上、野田さんが書いているように、背面飛行に入ってしまったら困ったことになると思うんだが。
 打上げ時と再突入時で、回転して逆向きになる座席は、マーキュリー計画のごく初期の案にありましたね。

Posted by: ROCKY 江藤 | June 03, 2005 at 02:50 AM

>江藤さん。アポロ型の揚力突入だと(弾道突入に較べて)ピッチダウンさせますよね。そのためには重心を高くする必要がある。シャトルコック型だと腹で風を受けるためにピッチアップさせる。そのためには重心を低くすればいいわけで、つまり自律安定を持ちながら揚力突入ができるのでは――と思うのですが、単純すぎますかね。
 そういえばロシアで構想されている新型有人機も、全体は砲弾型で、腹で風を受ける格好ですが……。

Posted by: 野尻抱介 | June 03, 2005 at 01:39 PM

コメントが遅れて申し訳ありません。

CXVについては、江藤さんの言うとおりです。
ちょっと、判りにくいと思うのでフォローしますと、ああいう弾丸形状は、ピッチ軸回りとヨー軸回りの安定性は抜群で、野尻さんの言う通り、相当重心位置がアバウトでも安定します。
それに対し、ロール軸回りが安定せず、揚力の向く方向が不定になります。これが江藤さんの指摘する問題点です。
飛行機のように、「上半角」で安定できれば良いのですが、そうは簡単に行かないようです。「上半角」は、速度ベクトルの重力加速度による変化を利用しているのだと思います。そのため、速度が重力加速度に対して遅いほど、上半角の効果がでます。逆に、マッハ20前後と言う大気圏再突入時には「上半角」の効果は、ほとんど無くなります。
「上半角」のように全く制御なしでロール安定できるカプセルが作れれば、ものすごく良いのですが、なかなか難しいようです。

アボードについては、カプセル型の場合、脱出ロケットですね。
スペースシャトルのクロスレンジは国防総省の要求で、アボードとは関係ないと思います。その昔、「屁理屈」で、そんな説明があったかも知れませんが、現実的ではありません。

サーフィンについては、私てきには、やってみたいと思います。危険は間違いないでしょうが・・・

Posted by: 野田篤司 | June 12, 2005 at 10:40 AM

 私の知っている話だと、シャトルのクロスレンジ要求は、国防省(空軍)が、ヴァンデンバーグAFBから南回りに打ち上げて、敵性衛星査察とか攻撃とかの任務を1周だけ遂行して、またヴァンデンバーグに帰着すると言うミッションを想定したことから決まったとのことです。つまり軌道1周分だけ西にずれても、戻ってこられるだけのクロスレンジを求めると、あれだけの翼がいると言うことです。

 それから野田さん、アボート(abort)ですんで、そこんとこよろしく。

Posted by: ROCKY 江藤 | June 12, 2005 at 03:55 PM

 こっちも応答が遅くてすみません。まあお互いマイペースでいきましょう。
 CXVはC.G.がオフセットしているために揚力を持つ、とあります。形状は回転体のようですから、重心がオフセットしてるんでしょう。CXVの場合、重心はロール軸より下寄りに来ると思うのですが、野田さんはCXVの重心位置をどこに想定していますか? また、重心が下寄りにあってもロール安定は生じないとお考えでしょうか?

Posted by: 野尻抱介 | June 14, 2005 at 01:52 AM

 ちょっと補足します。後のほうの質問の意図は「重心移動でロール制御ができると思うなら、重心を下げることによるロール安定も成立すると思うのでは?」ということなんですが、これは野田さんが述べているように速度領域によって重みが変わるので、単純じゃないですね。
 再突入が始まった直後は無重量状態だから、そもそも上下の情報がない。重心移動が作用するのは前から来る抗力に対してだからピッチ軸とヨー軸のみが制御できる。ここでの重心位置はロール軸からの距離が問題で、前後方向の重心位置はあまり重要でない。
 CXVの場合、この前後方向の重心が鍵ではないかと思えてきました。
 つまり無重量状態に近いうちは揚力の必要性も小さいから、弾道突入状態でもかまわない。速度が落ちて、重力がはっきりしてきたときにテールヘビーになり、ピッチアップして揚力突入状態に遷移すればいい。ピッチアップしてさえいれば、回転体なんだから外乱でロールしちゃってもいいじゃん――というのがCXVのケアフリー再突入ではないか、と思えてきました。考えすぎかなあ?
 さらに野田さんが重心移動でロール制御ができると(密かに)思うわけを考えてみたんですが、もしかしてカプセルの形状を一部非対称にする、という荒技ですか? たとえばヨー軸を振っていくとそれまでショックコーンの内側に隠れていたタブが効いてきてロール軸に作用する、みたいな……?

Posted by: 野尻抱介 | June 14, 2005 at 05:00 AM

またまた、返事が遅れて申し訳ありません。
私が答えるまでもなく、野尻さんも私と同じ解にたどり着いているようですね。
ただ、「ショックコーンの内側に隠れていたタブが効いてきて」なんて大げさな事をしなくても、ちょっとだけ、下面に前後方向に対して非対称的に曲率をつけるだけで、同じ効果が得られると思います。

Posted by: 野田篤司 | June 22, 2005 at 08:59 PM

>裏庭から打ち上げた「僕の宇宙船」は、小学校の校庭か河原に帰ってくるのが相応しい

間違っても、女子高の中庭のビオトープなんかに着陸しないようにされたほうがよろしいかと...

Posted by: ki | October 26, 2008 at 06:53 AM

ロケガですね?
はは・・

Posted by: 野田篤司 | November 03, 2008 at 06:23 PM

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