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May 04, 2005

僕の宇宙船

e008
私自身が、作ってみたい・乗ってみたいと思って居る夢の宇宙船を紹介しよう。

普段、業務で検討する時は、やれ「皆のための宇宙船」とか、やれ「国民のための宇宙開発」とかに気を配らなければ行けない。だが、抽象的なとか国民を考慮するのは結構肩が凝る。ここは私のプライベートなブログなんだから、もっと気軽に、好き勝手に考えた自分自身のためだけの夢の宇宙船を紹介しよう。

夢の宇宙船だから、宇宙に行けるのは当然だが、単に宇宙に行ければ良いとものではない。私の場合、団体観光旅行の一旅客として、行列の後ろについて行くなんてまっぴらである。

私は自動車も好きだが、大型バスに客として乗って居ても楽しくない。自動車なら、自分で運転する方が何倍も楽しい。
同じように飛行機も好きだが、ジャンボに客として乗って居るのは楽しくない。セスナで良いから操縦する方が楽しい。(時効だろうから白状すると、25年以上前に無免許でセスナの操縦をさせてもらったことがある)

そうやって、考えると、宇宙船も同じで、大型・大人数乗りの宇宙船に客の一人として乗るより、小さな宇宙船で良いから、自分で操縦できた方が楽しいと思う。

自動車とのアナロジーついでに考えると、私の理想とする自動車はロータス/ケータハム・スーパーセブンである。
スーパーセブンが理想の車だと言えば、判る人には判ると思うが、乗り心地や居住性は一切要求しない。その代わり、スポーティさは求めるが、絶対パワーは必要ではなく、求めるのは軽快さとハンドリングの良さだ。

では、スーパーセブンを夢の宇宙船に当てはめたら、どうなるか??
まず、小型軽量だ。一人乗りもしくは二人乗りで、居住性は最低限で良い。それこそ、スーパーセブンとかスマートの大きさだ。居住性の代わりに、操縦性には拘りたい。

ところで、宇宙船にとって、「操縦性の良さ」とは何だろう?
「宇宙船の操縦」とは何かと言えば、「宇宙空間すなわち軌道上における姿勢及び軌道の制御もしくは変更」だ。打上げ時のロケットの飛行経路制御や帰還時の大気圏再突入時や着陸時の制御まで「宇宙船の操縦」に入れようとする人が居るが、違うと思う。打上げ時の制御は、史上どんなロケットだってコンピュータで制御するものだし、帰還時は、カプセルの空力特性やパラシュートの安定性とコンピュータによるナビゲーションに任せた方が安心だ。そもそも、打上げや帰還の時は「宇宙空間すなわち軌道上」の操縦でないとすら言える。

良く「宇宙船の操縦なんてできるのか?」と聞かれるのだが、「宇宙船の操縦」自体は、不可能ではないと思って居る。と言うより、私が宇宙船を造るのなら、私が操縦できるような宇宙船にしてしまうのだ。
自慢じゃないが、私の運動神経は、ごく普通レベルだ。車の運転だって、下手じゃないが、特別上手い訳でもない。トップガンのテストパイロット出身のバリバリの宇宙飛行士と運動神経を比べたら足元にも及ばないし、あんな苛酷な訓練に耐えられる訳もない。
だから、宇宙船の方を、普通免許で普通に乗用車を運転できる程度の運動神経の持ち主でも操縦できるように造ってしまう。

では、どうやって、ごく普通の運動神経の持ち主でも操縦できる宇宙船に造るかと言うと、答えは簡単で、コンピュータの助けを借りるのだ。そもそも、私は人工衛星の姿勢や軌道制御が専門だ(こっちの方は自慢かも)。無人の衛星で自動制御する技術の応用で、自分自身の運動神経を補おうと言う訳だ。

軌道上での姿勢制御は、どっちの方向に向きたいかは、操縦桿のようなスティックでコントロールできるだろう。ただ、軌道上の宇宙船は、一度回り出すと止らない。地上の物体のように一つの回転軸の回りをコマのように単純に回るだけではなく、回転軸そのものが回り、その回転軸を中心に二重に回ると言う奇妙奇天烈な動きをする(ニューテーション運動と言う)。こうなると人間には止められないので、コンピュータの姿勢安定化制御の助けを借りた方が良いだろう。

軌道制御も同じで、航法や燃料最適化の計算はコンピュータの助けを借りた方が良いが、スティックで、行きたい方向をコントロールできる。

これを応用すれば、ランデブーやドッキングだってできる。ランデブーやドッキングは、一般的に、すごく難しいとイメージがある。もちろん、難しいのは間違いないのだが、既に完全無人で自動でランデブーやドッキングが行われた実績がある。一度、無人自動でできたのなら、後はコンピュータ・プログラムを叩いていけば、素人が行えるような補助制御を行うことも可能だ。
さらに、この技術を応用すれば、宙返りや8の字飛行と言ったアクロバットやスラローム飛行、ロボットアームを用いた大型構造物の建築も可能になるだろう。二機以上あれば、パイロンレースや模擬空中戦も可能になる。

このような操縦して楽しい宇宙船を何時でも何処でも手軽に打上げたい。理想的なのは、自宅の裏庭(バックヤード)で宇宙船を組み立てて、打上げてみたいもんだ。もっとも、我が家には、どんなに宇宙船を小さくしても、宇宙船を組み立てるような広さの裏庭など無いのだが。

実際に住宅街の真ん中から宇宙船なんか打上げたら、警察沙汰になるのは間違いないのだが、そこは、あくまで夢の宇宙船なんだから、大目に見てほしい。

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Comments

奥美和と申します。
野田さんの「僕の宇宙船」を読ませていただきました。
その中の

>普段、業務で検討する時は、やれ「皆のための宇宙船」とか、
>やれ「国民のための宇宙開発」とかに気を配らなければ
>行けない。

や、

>私は人工衛星の姿勢や軌道制御が専門だ
>(こっちの方は自慢かも)。

の件から考えて、

http://www.ista.jaxa.jp/aet/space/space-d15.html
のURLの

>日本独自の有人宇宙船構想
>
>先端ミッション研究センター
>野田篤司

の野田篤司様だと思ったのですが、
「野田篤司」本人ということでよろしいでしょうか?

 もし、よろしければ、「日本独自の有人宇宙船」実現の方法として、考えてみてほしいと思ったことがあります。

 それは、Yahoo!の掲示板の宇宙探査のカテゴリで、

>カプセル型有人宇宙船『ふじ』実現へ

のタイトルの書き込みに、

 1.コアモジュールによる自立帰還型宇宙実験機を開発し、
   宇宙実験による新素材開発と共にコアモジュールの
   実証を行う。

 2.ISS補給機にコアモジュールを取り付けてISSの緊急時
   の物資の補給とともにコアモジュールを使用した脱出機
   を供給する。

 3.この脱出機でISSからの有人大気圏突入実験を行う。

 4.以上のステップに成功して初めてH-ⅡAロケットと
   『ふじ』を使用した有人宇宙飛行を行う。

という、4つのステップで『ふじ』を開発していけばよいという書き込みの

>特に、ステップ「1.」は宇宙での実験及び
>実証を行うことを目的とするので、
>民生部品の宇宙実証も兼ねることができるので、
>民間主導によるカプセル型有人宇宙船『ふじ』
>の実現に現実性が帯びるものである

と書かれているのを見つけ、『ふじ』のコアモジュールを使って、宇宙実験による新素材開発を行うことにとても興味を持ちました。

 回収型宇宙実験衛星としては、2003年に打ち上げられ年2004年に回収されたUSEFのUSERESという衛星がありますが、この衛星は宇宙実験のみに絞った衛星なので将来性がないように思えます。
 しかし、『ふじ』ではコアモジュールのみで宇宙実験を行うことができ、しかも回収できるというメリットがあります。
 これは、民生のLSIをはじめとした電子部品等の宇宙実験を行い、海上で回収することで、民生のLSIをはじめとした電子部品等が宇宙での使用に耐えられるかの評価を兼ねて、『ふじ』のコアモジュールの打ち上げから回収までの評価を行うことができるので、将来の日本のロケットや衛星に使用する部品を安価にするのに一役買うのはもちろんのこと、有人宇宙船の開発を決定した場合に開発期間や開発コストを低く押さえることができるので、JAXA理事長に、提案していただきたいと思うのですが、如何なものでしょうか?
 何はともあれ構造が単純で、パラフォイルによるピンポイント着陸といった新機軸を採用している日本独自の有人宇宙船『ふじ』の実現を僕は望みます。

 最後に野田さんが、「野田篤司」本人でないということでしたら、松浦晋也氏の著書『われらの有人宇宙船』という本のご一読をお勧めします。

 それでは乱文乱筆にて失礼します。

Posted by: 奥美和 | May 04, 2005 at 11:01 PM

なるほど!
「僕の宇宙船」には、色んなパターンの反響を予想していましたが、まさか、こう言ったコメントが寄せられるとは思いませんでした・・・

本題の答えに戻しますが、
(1) 何故、松浦晋也のL/D
    http://smatsu.air-nifty.com/ から、
    このブログにリンクが張ってあるか?
(2) 『われらの有人宇宙船』を、お手元に
   お持ちなら、P160を見てください。
   何故、このブログにコメントを書く
   「顔見知り」達の何人かは、P160の
   最後に出てくる人達とダブっているか?
の二点が、私が『野田篤司』本人かどうかの何らかの説明になるでしょうか?

次に
>コアモジュールによる自立帰還型宇宙実験機を開発し、
>宇宙実験による新素材開発と共にコアモジュールの
>実証を行う。
とか、
>ISS補給機にコアモジュールを取り付けてISSの緊急時
>の物資の補給とともにコアモジュールを使用した脱出機
>を供給する。
に似たような(それで居て似ていないような)モノを、「実際に検討されるとすれば、一体何処の誰が業務上検討することになるか?」と言う点と、その「何処の誰」が「業務上の検討」の中で、「現実と理想とのギャップ」に「どんなに悩むか」も推理・推測してみてください。

私が直接的に「YES/NO」の回答を避けたのは、あくまでも、このブログを私個人のプライベートなページとして、自己責任の範囲としたいからです。その上で、「業務の束縛」から離れた本当の「自分の理想」をブログに書いてみようと思ったからです。

(うーん、最大のライバルは「過去の自分自身」だなあ、このネタ、ブログに使えるかも)

Posted by: 野田篤司 | May 05, 2005 at 07:42 AM

>宙返りや8の字飛行と言ったアクロバットやスラローム飛行、
 これ、口でいうほど楽しいものでしょうか?
 なんか表現は故ロック岩崎氏のエアロバティックを連想させますが、実際には宇宙船の運動は、
・激しい運動は姿勢制御用推進剤を消費する。だからスローモーな運動にせざるを得ない。
・宇宙船内からは外部の様子が見えにくいので、宇宙船の姿勢の変化や重心移動を体感しにくい。運動に伴うGもほとんど感じられない。
・安全を考えると、複数の宇宙船の接近運動には慎重にならざるを得ない。
と言ったことからして、航空機の運動とは異なるものとなるように思います。
 最小の時間あるいは最小の推進剤消費でランデヴーを行うと言った、頭脳ゲーム的な面白さは可能でしょうが、体感的スポーツ的な爽快さとは無縁になりそうです。

Posted by: ROCKY 江藤 | May 10, 2005 at 03:30 PM

確かに、推進剤を消費するので、激しい軌道制御は無理でしょう(姿勢制御は、小型の高トルク型ホイールやCMGを使えば、推進剤を無しで制御可能です。電力は食いますが・・)
ですから、「アムロ対シャー」のような高G加速は不可能でしょう。ですから、「運動に伴うGもほとんど感じられない」は、その通りだと思います。
ただ、「宇宙船の姿勢の変化」の方は推進剤を使わなくてもできます。
また、
>・安全を考えると、複数の宇宙船の接近運動には
>慎重にならざるを得ない。
については常識的にはそうですが、本当にそうなのか、もう少し考察する必要があると思います。「常識」と思われて居る事を、再考し、新しい事柄を引き出す、それこそが、マツドサイエンティストのマツドサイエンティストたる所ですから。

どちらにしても、軌道上でのアクロバット飛行が「スローモーな運動」にならざるを得ないのは間違いないでしょう。(姿勢運動だけなら派手にできるかもしれませんが・・)
とは言え「スローモーな運動」が「体感的スポーツ的な爽快さ」となるか/ならないかは、判りません。まだ、誰も試した事がないのですから。
誰もやったことの無い「スローモーな運動がスポーツ的か試す」と言う目的だけでも「僕の宇宙船」の動機づけには十分だと思います。
何と言っても「僕の宇宙船」なんですから

Posted by: 野田篤司 | May 10, 2005 at 07:37 PM

まあ野田さんは、私の指摘することなど十二分に分かった上で言われておられるのでしょうが、ときどきいるんですよ、ほんとに分かって言ってるのかなあと思うような人が。

Posted by: ROCKY 江藤 | May 15, 2005 at 02:33 AM

一般の人が、私の文章を読んで、「アムロ対シャー」のような事ができると誤解することは想定していませんでした。
なるほど、今後、そう言う観点で、文を推敲するようにします。

Posted by: 野田篤司 | May 17, 2005 at 07:51 PM

 Yahoo!の掲示板の宇宙探査のカテゴリで、

>宇宙ステーション補給機(HTV)改造

のタイトルの内容に、HTVの与圧キャリアと電気モジュールと推進モジュールは、『ふじ』の拡張モジュールと推進モジュールに使えるので、『ふじ』はコアモジュールだけ開発すればよいから、短期間低コストで日本独自の有人宇宙船が作れるといったことが書かれていました。

 HTVのパンフレット
http://www.jaxa.jp/jda/brochure/img/01/htv.pdf
と、『ふじ』のモジュール構成
http://www.ista.jaxa.jp/aet/space/space-d24.html
に書かれている図を見比べると、HTVの与圧キャリアを『ふじ』のコアモジュールにすれば、回収することができる上、『ふじ』を有人宇宙船にするにあたっての評価ができるので、政治的な根回しを含めると長くとも10年以内に、日本独自の有人宇宙船が実現できると思います。
 他に、先行開発中のHTVの与圧キャリアを『ふじ』の拡張モジュールに使えば、日本独自の回収型宇宙実験衛星もできそうです。
 しかし、最大のメリットは、HTVは大気圏に再突入して燃え尽きてしまうのでスペースデブリが発生しないということでしょう。

Posted by: 奥美和 | May 29, 2005 at 10:55 AM

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