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May 16, 2005

僕の宇宙船 打上ロケット

ss002
私個人が理想としている「僕の宇宙船」が、ごく小さなカプセル型だと言うことは、前回も書いた。今回は、この小さなカプセル型宇宙船を宇宙に打上げるロケットについて説明しよう。

もちろん、私の場合、「宇宙船」は、宇宙すなわち軌道上を飛ぶ必要がある。先頃、民間初の宇宙旅行で話題になったスペースシップワンのようなサブオービット(弾道飛行)では、僅か数分で地上に落ちてきてしまうので、わたし的には許せない。技術的には何倍も、いや何十倍も難しくなるが、地球を回る周回軌道に乗って、初めて本当に宇宙に行ったと言える。

小さな宇宙船には、小さなロケットが相応しい。イメージ的には、裏庭(バックヤード)から打上られる位に、手軽に打上られるロケットが欲しい。(本当に、住宅街の真ん中から打上げられないことは、前回も書いた通りだが・・)

『手軽に打上られる』と言うと、コストのことが問題になるので、必ず「使い捨て型ロケットより、再使用型の方が経済的では?」と言う議論が出る。だが、私は「使い捨て型ロケットの方が良い」と思って居る。
その理由は、現在、専門家の一致した意見として、
(1) 再使用型打上機が、実用化されるまで、最低20年以上必要。
(2) 実用化できても、100回以上、再使用しないと、効果が無い。
の、2つがあるからだ。
私は、20年も待ちたくは無いし、100回使うまで元が取れないのも嫌だ。(仮に週一回は宇宙に行くとして2年間、一カ月に一回で8年間も必要。だいたい、現状の宇宙飛行士なら、3回も宇宙に行ったら、『超ベテラン』だぞ)

では、使い捨て型ロケットで、『小さい』を追求すると、どうなるか?

意外な事に、コンベンショナルな「液体酸素+ケロシン型エンジン」の方が、高性能な「液体酸素+液体水素型エンジン」よりも小型化に向いていることが判った。

一般的には、高性能な「液体酸素+液体水素型エンジン」の方が、燃料消費量が少なく、その結果、ロケット全体を軽量化することができると思われている。

だが、良く考えて欲しい。
「液体酸素+液体水素型エンジン」は「ロケット全体を軽量化する」とは言ったが、「ロケット全体を小型化する」とは、言って居ない。

実は、「液体酸素+液体水素型エンジン」の燃料となる「液体水素」は「比重が軽すぎる」と言う問題を持つ。液体水素の比重は、0.076しかない。一般的に、相当軽いと思えるバルサの中で特に軽いソフトバルサの比重が、0.11だから、それより軽いと言えば、イメージできるだろうか?(発泡スチロールは、液体水素より、さらに軽い)

「液体酸素+ケロシン型エンジン」の燃料のケロシンは、「灯油」つまり油だから、水よりは軽く0.8の比重だが、液体水素と比べると10倍以上になる。

もちろん、ケロシンも液体水素も、比重が1.14もある液体酸素と燃焼させるのだから、酸素の比重も考慮すると、実質上の比重の差は縮まる。だが、それを考慮しても、約2.7倍になる。
つまり、同じ質量の燃料を入るタンクの容積は、「液体酸素+液体水素」は「液体酸素+ケロシン」の2.7倍も必要なのだ。ここまで、違うとタンク殻の質量も大きく違ってくる。

周回軌道への打上げ用のロケットの場合、総質量の8割から9割は燃料だから、その影響は大きい。

同じ大きさ・重さの宇宙船を、高度200キロ程度の円軌道に投入するロケットを、ざっと計算すると、
・「総質量」は「液体酸素+液体水素型」の方が軽い。
・「寸法」「容量」は「液体酸素+ケロシン型」の方が小さい。
と言う結果になる。

その上、
・「燃料質量」は「液体酸素+液体水素型」の方が軽い。
・「燃料を除いた質量」は「液体酸素+ケロシン型」の方が軽い。
となる。

当たり前だが、「燃料を除いた質量」は、タンクとかエンジンの質量等の合計だ。だから単位質量当たりのコストは、燃料よりも高い。そもそも、「液体酸素+液体水素型エンジン」は技術的にも高度で、コストも「液体酸素+ケロシン型エンジン」より、ずっと高い。
だから、ドライ・ウエイト(燃料の無い状態)で比較するなら、「液体酸素+ケロシン型」の方が、質量的にも寸法的にもコスト的にも、小型軽量・低コストになるのである。

燃料を含めると「液体酸素+ケロシン型」の方が重くなるが、燃料自体は、そんなに高い物ではない。自動車用のガソリンと、そんなに変わらないので、仮に1リッター百円とすると、10トンの燃料なら100万円、100トンなら1000万円になる。

結局、小型で低コストを追求すると、「液体酸素+ケロシン型」の方が向いて居る事になる。

とまあ、こんな検討結果をイメージしたのが、イラストの打上げロケットだ。
可愛く見えるように、タマゴ型のスタイルにしてみた。普通、打上げロケットは、空気抵抗を気にして、できるだけ細くするのだが、そうするとミサイルのようになり、可愛くなくなる。
今回は、玩具っぽく太めにしたら、細くした場合よりも燃料が50%も余計に必要だった(普通、燃料よりも「可愛さ」を優先する奴は居ない)。でも、コロコロして、小さくて可愛くなった。高さ的には、一般的な二階建ての家と同じくらいで、太さは普通乗用車の全長くらいだ。(一般の打上げロケットは、10階~15階のビル並みの高さがある)

こんな可愛いロケットでも宇宙に行ける。少なくとも計算上は問題ない。

ただ、こんなイメージを見せたら、コメントを受けた。
「どうやって、工場から運ぶの? 道路交通法で、幅2.5メートル以上の物は、一般道では運べないよ。」

なるほど、そこまでは、考えてなかった。

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Comments

> 地球を回る周回軌道に乗って、初めて本当に宇宙に行ったと言える

やっぱ第2宇宙速度は出してもらわないと。(ぉぃ)

Posted by: kodama | May 17, 2005 07:36 AM

>(1) 再使用型打上機が、実用化されるまで、最低20年以上必要。
>(2) 実用化できても、100回以上、再使用しないと、効果が無い。

せっかくなので、この辺から検証してみてはどうなんでしょうか。特に2番ですけど、1)が実現するには巨額の開発費用が必要でそれを今の使い捨て型と比較すると100回とか言う数字になるんだと理解しました。もっと要求を低くして10回や5回使って捨てるというものではだめなんでしょうか?100人集めるのは大変でも5人ならなんとかなるじゃんみたいなノリで行きたいです。

でもkodamaさんのご指摘をもっと進めて、鮭の卵はどこに行ったんですか?とも聞きたいです。

Posted by: kagawa | May 17, 2005 10:46 AM

>やっぱ第2宇宙速度は出してもらわないと。(ぉぃ)
もう、二人とも気が早いんだから、困ってしまいますね。
そもそも、「僕の宇宙船」が、何処へ向かうかは、一度も触れていませんよね。この話、いずれ、第2宇宙速度や第3宇宙速度どころか、光速の壁に向かって進んでいく予定です。

再利用型については、開発コストを別にして、製造コストだけでも100回使わないと元が取れない、要求を下げても同じ・・・な筈です。
「僕の宇宙船」としては、こっちの話よりも、「より遠く、より速く」を優先したいので、再利用についての再検証は、その後にしたいと思います。

Posted by: 野田篤司 | May 17, 2005 07:59 PM

スペースシップワンですが、極超音速スカイフックへのシャトルとして使うには性能不足なんでしょうか。
ケロシンと液体酸素の方が小型軽量と書かれていますが、その路線ならアクリルと液体酸素を使う、CAMUIのほうが良いのでは。

Posted by: KK | May 17, 2005 11:26 PM

 大変ご無沙汰しております、椎茸のほだ木はいかが相成りましたでしょうか、実は多少気にしております(^^;
(何なら来年あたり新しいものを(以下略))

 それはさておき
>道路交通法

 海際の工場から船で運んで、洋上の浮き桟橋ないしは臨海型の打ち上げ基地から打ち上げちゃえと言う落ちは駄目なんでしょうか(^^;
 基地の敷地内に荷揚げの港があって、発射エリアまでの運搬手段が障害なく用意できれば問題はない訳ですよね。

 あ、工場に隣接して打ち上げ基地でもいいのか、とはいえ製造と打ち上げのインフラ整備に金がかかっちゃうから手軽さはなくなるのが難点ですね。

 でも、田舎の飛行場程度のエリアで運用できるんならそれはそれでおもしろいのかも。

Posted by: 大井 | May 18, 2005 04:49 PM

椎茸のほだ木ですが・・・
立派な椎茸ができたところまでは良かったのですが、ナメクジにやられた後、嫁に捨てられてしまいました。
その直後、椎茸の専門家から、「これからたくさん椎茸が取れたのに・・・」と言われ、キノコ好きの娘が「ガアーン!」
嫁が反省しても後と祭りと・・・
また手に入るのなら、今度こそは・・と言ってます。

「道路交通法」については、マツドいや松戸から打ち上げるとしたら、海が無いから、陸送しかないかな・・と言うことです。
(松戸から打ち上げるって、市川とか船橋の上空を飛ばすのかよ<<おい)

スカイフックについては、シャトルに頂点での必要な高度や水平方向の速度が判らないので何とも言えませんが、スペースシップワンは頂点での水平方向の速度が、ほとんど無いので難しいのではないかと思います。

ケロシンと液体酸素については、「コンベンショナル」つまり、30年も40年も前から使い古された実績があり普通程度の性能のエンジンで良いとの意味で引き合いに出しました。
ハイブリッドロケットについては、打上げロケット用には、未だ、実用化されていないものと思います。
ですから、開発要素のあるエンジンについては未知数が多すぎて何とも言えません。ネットで検索したところ、比推力が270秒だと言うだけで、解析に必要なパラメータが不足していて、正直、「判らない」としか答えられない状況です。

Posted by: 野田篤司 | May 18, 2005 10:33 PM

すいません。僕の宇宙船には関係無い話しなのですが質問させてください。
今、宇宙に行く手段として、地上からロケットを打ち上げます。
しかし、それでは初速度0から打ち上げるため、今のような巨大になってしまいますが、ある程度初速度をつければ、もう少し楽に打ち上げられると思うのです。
日本の先端技術リニアモーターカーとロケットを組み合わせて打ち上げる事は可能でしょうか?
イメージとしては空母のカタパルトから打ち出す戦闘機のような感じです。
それともちょっと考え方が間違っているかもしれませんが、よろしくおねがいします。

Posted by: 杉小路 | May 20, 2005 01:43 AM

人工衛星に必要な速度は、秒速7.8キロです。これに対し、ロケットの増速量(重力も空気も無いところで、ロケットを噴射した時の加速度の合計)は、大体秒速10キロくらい必要です。秒速2.2キロ程度が、重力と大気抵抗で無駄に消えている計算になります。

これに対しリニアモーターカーの速度が時速500キロとして、秒速約140メートル。ロケットに必要な増速量の1.4パーセントに過ぎません。ですから、98.6パーセントは残っていますので、ほとんど影響なしですね。

むしろ、燃料満載状態のロケットを、新幹線よりも速い速度で走らせる方が、大変でコスト増につながると思います。

Posted by: 野田篤司 | May 23, 2005 12:42 PM

>ほだ木
 今年のはもう植える時期が終わっちゃってるので、来年でしたら、前回のと同じコンディションのものを用意できるかと思います(わはは)
 ちとごにょごにょしてみますね、詳しい話が固まりましたらメール差し上げるかと(^^;

>「松戸から打ち上げたい」
 なるほど、家の裏庭と言わずある程度の広場があればうちあがる・・・ガレージロケット?

 結構楽しい話ですよねえ、医師の診断書さえあればロケットが買えて宇宙に行けるの、んで、診断書がどうしても下りないお金持ちが人のロケットを買い取って>それはハインラインだって(^^;

Posted by: 大井 | May 23, 2005 01:12 PM


野田さんの

>コンベンショナルな「液体酸素+ケロシン型エンジン」の方が、
>高性能な「液体酸素+液体水素型エンジン」よりも
>小型化に向いていることが判った。

という考えは、液体水素の温度が沸点ギリギリの温度の条件の下では正しいと思います。

 Yahoo!の掲示板の宇宙探査のカテゴリで、

>液体水素は沸点ギリギリの温度でロケットに注入されているので、
>液体水素のタンクが大きくなり
>ロケット全体を小型化することができないことがわかります。
>言い換えれば、
>液体水素の温度を絶対零度以下にして密度を高くするか、
>カーボンナノチューブを材料とした軽量の耐圧タンクを作れば、
>ロケット全体を小型化することが可能となります。

>水素原子1個の体積は、炭素原子1個の体積に比べて小さいということである。

と書いていた人がいましたが、この書き込みから、高性能な「液体酸素+液体水素型エンジン」のロケットが小型化できないのは、水素分子の運動が問題だと思うのです。
 つまり、水素分子の運動を鈍らせれば、高性能な「液体酸素+液体水素型エンジン」の方が、コンベンショナルな「液体酸素+ケロシン型エンジン」よりも小型化に向いていると思います。
 現に、スラッシュ水素という水素がシャーベット状になるまで冷却する技術が開発されていますので、シャーベット状になる寸前の温度まで冷却すれば水素分子の運動を鈍らせることができるので、つまりロケット全体を小型化することは可能と思います。
 あと、水素原子同士を金属結合のようなやり方で複数結合のさせて、H5 や H7 のような水素分子を作れば、常温で液体水素ができると思うのですが、無理でしょうか?

Posted by: 奥美和 | May 28, 2005 10:11 AM

 ご無沙汰しております。
 新潟へ帰り、心機一転次の仕事に励んでおります。
 さて本題に入ります。
 野田さんは打上ロケットに「液体酸素+ケロシン型エンジン」を主張しておられますが、私は環境保護の観点から「液体酸素+エタノール型エンジン」をお薦めします。
 理由は、ケロシンだと原料が石油という化石燃料であるため、日本だと輸入に頼らざるを得ない燃料といっても過言ではない上に、二酸化炭素の増大など環境破壊の原因となりますが、エタノールだと昔はエチレンと水を原料にニッケルの触媒を使用して作っていましたが、今では植物を原料に作れるので二酸化炭素を増大させることは無いと思います。
 それに、「液体酸素+エタノール型エンジン」はかつて、V2ロケット(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
http://ja.wikipedia.org/wiki/V2%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88
で実用化されていました。
 最もV2ロケットでは、ノズルの冷却に燃料を使用するため燃料のエタノールを水で薄めていた上に、ターボポンプの駆動に過酸化水素を使っていましたが、現在の技術ではノズルの冷却に液体酸素を使用してガス化した酸素とエタノールの一部でターボポンプを駆動するガスを発生させれば、「液体酸素+ケロシン型エンジン」を作る技術があれば「液体酸素+エタノール型エンジン」の打ち上げロケットを作ることは可能だと思います。
 それにエタノールはケロシンと比べると比重は軽いですが、水素の10倍強の重さがあるので「液体酸素+液体水素型エンジン」に比べたらロケット全体を大幅に小型化できると思います。
 余談になりますが、宇宙科学研究本部の一般公開に行ったら、「二酸化窒素+エタノール型エンジン」の実験用ロケットが展示されていました。
 あと、宇宙科学研究本部の一般公開で開催されたミニミニ宇宙学校の「宙(そら)にものを運ぶプロに聞こう」で、講演された野中聡氏曰く、「液体酸素+液体水素型エンジンこそ最高のロケットエンジン」とのことなので、野田さんと野中氏の対談が催されたら是非見に行きたいです。 ちなみに野尻ボードには「今年のSF大会で野田さんと野中氏の対談を企画してほしい」と書きましたが、SF大会は一般の人の参加が可能かがわからないので、対談はトークライブでしていただけるのが望ましいと思います。
 それでは乱文乱筆にて失礼します。

Posted by: 新潟の田村 | July 26, 2005 09:58 PM

 前の書き込みで
>あと、水素原子同士を金属結合のようなやり方で複数結合のさせて、
>H5 や H7 のような水素分子を作れば、常温で液体水素ができると思う
と書きましたが、後で調べてみたら液体水素に強い圧力をかけて製造した液体金属水素だと「液体酸素+液体水素」型エンジンでロケット全体を小型化することができそうだとわかりました。
 技術的な課題としては軽量で液体金属水素の強い圧力に耐えられるタンクが必要になりますが、これができれば、液体金属水素は圧力が低くなると水素分子に戻る性質があるので、水素用のターボポンプが不要になる上、LE-5Bエンジンと同様に一部の水素でノズルを冷却した後に液体酸素のターボポンプを駆動させることができるので、小型で単純化を追求すると「液体酸素+ケロシン」より「液体酸素+液体金属水素」を推進剤にしたロケットが向いていると考えます。
 液体金属水素については、日経サイエンスのバックナンバー「水素の金属を作る」が参考になると思いますのでURLをリンクしておきます。

Posted by: 奥美和 | August 14, 2005 03:28 PM

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